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【対談】日本の売上は海外比10倍 ー 戦略家Nreal社ジョシュア氏に聞く「Nreal Air」と開発コミュニティで描く未来

3月に発売された新型ARグラス「Nreal Air」。今回、本社NrealよりVice PresidentのJoshua Yeo氏を招き、弊社MESON COOの小林 佑樹とNreal Airに関しての対談を実施しました。

なお、本ARグラスの発売に際し、6月30日(木曜)にNreal初のオフラインイベント、日本のNreal Air開発者向けミートアップを開催します。本記事のNreal Air開発の内容を会場およびライブ配信枠で直接キャッチアップできる機会ですので、ぜひご参加ください。

※太文字はモデレーター。Joshua Yeo氏は以下ジョシュア、発言箇所では「J」表記。小林 佑樹の発言箇所では「K」表記。

Credit by Nreal

— 「Nreal Air」の発売後の反響を教えてください

最初に、Nreal Air発売おめでとうございます。売れ行きや反響はどうでしょうか。
J:「NrealAir」の市場からの反応はとても良いです。前回リリースした「Nreal Light」と比べても、すごい数が出ました。なかでも日本は世界的に見ても一番反応が良かったです。日本を除き、世界で一番売れてる国と比べても10倍ぐらい売れ行きが良いですね。

日本で販売台数が上がった理由はどんなことが挙げられますか。
J:コミュニティですね。開発者のコミュニティの皆さんの、ARグラスに対する熱量が他の国と比べてもよかったからだと思っています。

日本の開発コミュニティをリードするMESONとして感じることはなんでしょう。
K:発売前からすごい期待してた端末ではありましたね。Nreal Airの登場により、一般ユーザーの人がAR体験を普通の生活で使うためのハードルがすごい下がったと思います。前機NrealLightのような、6DoFの端末は一般層には多機能過ぎるかもな、と。3DoFでこのクオリティの端末が出た点は、ちょうどいいものが出たな、という印象です。

なるほど。ジョシュアさんに質問です。日本でNreal Airこれだけ売れたのは予想通りでしたか。
J:予想通りです。本当に予想通り、99%合っていました。というのも、過去に韓国含め他の国でIT製品を販売した経験がありまして、その経験からある程度売れ行きをシミュレーションしていたんです。市場の状況とユーザーの興味と値段、機能、アプリケーション、コンテンツ、全てを考えて、調査した上で結論付けた計画通りですね。

Nreal Vice PresidentのJoshua Yeo氏

— 日本におけるNreal Air開発環境

次に、世界で最も早くNreal Airをローンチさせるマーケットとしてなぜ日本を選んだのかお聞かせください。
J:日本はVRヘッドセットが販売され始めた時代から、空間コンピューティング関連市場はすでにそれなりの規模がありました。VRコンテンツ開発者が多いので。同様にARコンテンツ開発できる会社も多い印象です。こうした環境を分析して、日本を選びました。

XR開発企業のMESONとして、今の意見どう感じますか。
K:日本のエンジニアの開発力が高いというのもありますが、どちらかというと「熱量が高い」という認識の方が正しいかもしれません。ARとかVRを使うこと、それ自体は手段でしかなくて、それを使ってこういうことが実現したいんだ、と思ってる人がすごい多い印象です。で、その影響を与えたのは、やっぱり日本のアニメとか漫画みたいなもので、いわゆる空想世界を子供のときにインプットした人が、世界観を実現する技術としてAR/VRを見据えて開発をしてるっていうところがあるんじゃないかな、と。

ジョシュアさん、いかがでしょう。
J:そうですね、日本の開発者コミュニティにはすごい活気があります。開発上の問題に対する意見をもらおうと思った時も、すぐに反応が来ます。そのため、新しい機能の開発も日本ではやりやすいです。新しい技術、ITデバイスに本当に興味がある人が多い。Nreal日本支社でも、日本コミュニティに特化してモニタリングしてるチームがあって、毎日反応を見ています。たとえばアプリケーションのアップデートするときはすぐに反応できるような体制にしています。

MESON COOの小林 佑樹

— MESONがNreal Airを開発端末として選んだ理由

MESONはどういう意図でNreal Airを開発機として選んだのでしょうか。
K:やはりNreal Lightと比べて、長時間装着しても身体負荷は少ないし、ほとんどずれ落ちない。このフィット感は一般普及を目指すARグラスにとって大事なところだと思っています。たとえばNreal Airのコンセプト動画にあるように、動画視聴をキラーユースケーとして提示した場合に、動画を10分しかみて限界となったら成り立たない。それが1時間掛けていても負荷にならない。こうしたハードウェアの設計は素晴らしいなと思っています。

掛け心地や、軽量性、デザインで一番こだわったところはありますか。
J:そうですね、Nreal Airを掛けながら外で歩いてもおかしくない、本当に普通のサングラスのようなみたいなデザインを目指しました。日常使いでいつでもかけることができる。そのために軽くて、薄く、見た目のデザインも素晴らしいものを目指しました。

Credit by Nreal

— Nreal Airの開発のきっかけ

ありがとうございます。それでは次にNreal Airの開発はどこから始まったのか、何か逸話があれば。
J:まずNrealLight発売後、ユーザーから意見をもらうところからNreal Airの開発は始まりました。NrealLightを使って、どんなコンテンツを視聴しているのかなどを聞きました。結論、映像視聴が一番回答として多かったですね。キャンプの時など屋外で映像を見るとか、家でソファに座りながら試聴するといったシチュエーションです。

印象的だったユーザーはいましたか。
J:身体の不自由なユーザーの方が、1日7-8時間ぐらいNrealLightを掛けてテレビを観ているといった回答が一番印象的でした。「NrealLightのお陰で、私の人生が楽しみになりました」と感謝の手紙をもらったこともあります。それと家族内でのチャンネル争いが無くなったという面白い話もありました。奥さんがテレビをずっと独占している中で、旦那さんはNrealLightでテレビ番組を視聴することで喧嘩がなくなった、と(笑)

— Nreal Airの期待値

Nreal Airはデバイスとして期待通りの内容でしたか。
K:NrealLightに私たち開発企業が求める進化としては二方向あると思っています。1つは今のNreal Airみたいに、より手軽で掛けやすく、ARコンテンツを体験するまでのハードルが低いもの。もう1つは、周りの空間だったりコンテクストに合わせて、3Dのリッチな体験を見せるもの。たとえば視野角をもう少し広げ機能拡張していく路線。正直この二方向は、今の技術ではトレードオフな関係にあります。今のところ前者が満たされているので期待値通りかな、と。

今後ARアプリがもっと登場するために必要なことはなんでしょう?
J:ARアプリコンテンツが足りないのは課題としてあります。開発用SDKが提供されるため、簡単にARアプリケーションの開発が可能です。そこから挑戦的にいろんな開発者にARコンテンツを作って欲しいと考えています。

なるほど。それでは開発者視点で、どうやったらARアプリは増えると感じます?
K:まず1つにユースケースの発見。やはりARグラスを使ってユーザーが自然とやってるような、ついやってしまうようなユーザー体験とユースケースみたいなものをまず発見しないといけないなとは思っています。そしてもう一つはコンテンツの開発ハードルを下げること。作りやすかったりとか、差し替えやすくする、更新しやすくするような開発ツールの開拓は必要だと考えていますね。

MESON COOの小林 佑樹

— Nreal Airを使った未来のコミュニケーション

ここからは少し話を膨らませて、これからのARを使ったコミュニケーションはどうなっていくと思いますか?
K:それでいうと、アバターコミュニケーションによって、人格が複数持つ人が多く現れるっていうのは絶対あるかなって思ってます。たとえばNreal Airをかけると目の前にアバターが出てきて、本当に対面しているかのようにコミュニケーションが取れる。ただ、そこに表示されてるアバターは必ずしもその人自身ではなく、その人自身の姿身でもない。自分の外見が変わるとやっぱり人の振る舞いも変わってくるっていう統計もあるので、そういう意味では複数の人格を持って、接する人に対して人格もアバターも変えていくコミュニケーションが発生するみたいなことは未来考察としてありそうだな、と。

ありがとうございます。別の領域においてもARらしいコミュニケーション思いつきますか。
K:ARアプリはユーザーが行動してる間もずっと情報が目の前に表示されるので、Googleマップみたいにスマートフォンを出すという明示的なアクションをしなくても自然と情報が目に入ってきます。結果として本来は見逃していたスポットにARグラスを掛けることによって気づくことができて、より観光や街歩きを楽しむことができる体験を作れる、みたいなARならではの体験が挙げられそうですね。
J:その話で言えば、長時間使うことができる、Nreal Airの軽量かつ人間工学に基づいたデザインが重要なポイントで、新しいユースケースを作り出す可能性があると思います。本社の開発者全員が、テスターの人と毎日何時間もテストしながら設計したので、街歩きといったユースケースが新たに生まれていくのは嬉しいです。

Nreal Vice PresidentのJoshua Yeo氏

— ARグラスの未来

ARの未来はどうなっていくと思いますか。
J:技術の進化を見ると、たとえば有線電話は無線電話に、有線イヤホンは無線イヤホンになりました。NrealのARグラスは現状有線なんですが、将来的に無線になっていくでしょう。他のメーカーさんの動きを見るとスタンドアローン型を目指す流れが出来つつあります。より小さく、より軽量なARグラスが大衆化されていくでしょう。また、将来的に、SF映画のように、携帯電話に代わってARグラスで情報を探したり、エンターテインメントを楽しんだり、友人とコミュニケーションを取れたりするような未来を期待しています。

Credit by Nreal

— 最後に

両社が目指すものをお聞かせください。
K:もちろんMESONとして、これからもARは注力領域になってきます。ただ、ARとVRの技術の境はどんどん曖昧になってくる。市場の境目がなくなっていくはずなので、それも見据えながらAR市場にきちんと注力していくってことをやっていきたいなと思います。Nreal Airのメインのユースケースとして映像視聴があると話がありましたが、それを超えるほどのARコンテンツのケースをMESONとして創り出していかなくてはならない。そのためにNrealと一緒に開発ノウハウ、社内の実験を通して得た知見も共有しながら、機能に対するフィードバックもしつつ、市場を盛り上げていきたいと思っています。

ジョシュアさんいかがですか?
J:そうですね。私たちはデバイス開発者ではありますが、コンテンツがないと市場を形成出来ません。流れを起こすことを目指しています。

お忙しい中ありがとうございました!

【再掲】ARグラス「Nreal Air」の発売に際し、6月30日(木曜)にNreal初のオフラインイベント、日本のNreal Air開発者向けミートアップを開催します。本記事のNreal Air開発の内容を会場およびライブ配信枠で直接キャッチアップできる機会ですので、ぜひご参加ください。

執筆:福家 隆、小山 天音
デザイン:堀川 莉子

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