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かぼちゃのチーズ焼きはなぜ美味しいのか

かぼちゃのチーズ焼きは美味しい。

小さなときから特別な日に母がよく作ってくれる一品だ。熱々でホクホクのかぼちゃの上に、こんがり焦げ目がついた多めのチーズがのっかってる。
誕生日、クリスマス、合格祝い、野球合宿や留学から久々に実家に帰ってきた日など、なにか特別なことがある度にかぼちゃのチーズ焼きをお願いして家族みんなで食べた。

かぼちゃとチーズのみのシンプルなレシピだし、特別高級な食材を使ってるわけではないはずだが、なぜか格別に美味しく感じる。

最近、伏木亨教授という方の文章を読んだ。

おいしさは食品とヒトの関係の中にある

本人は「おいしい」と思っても、全く同じものを食べた隣の人は「あまりおいしくない」と感じる場合もある。おいしさが食品や料理の完全な属性であると考えるとこの状況は説明がつかない。むしろ、おいしさはそれを食べる人間の脳の中にあると考える方が自然ではないかと思われる。おいしさは料理とそれを食べる人間の関係の中だけに出現するバーチャルで脆弱な感覚であると思われる。

おいしさの構成要素とメ カニズ ム
伏木 亨
https://www.jstage.jst.go.jp/article/eiyogakuzashi1941/61/1/61_1_1/_pdf

人の「美味しい」という感覚に影響を与える変数を4つに定義し、これらの評価の統合によって、ざっくりしたおいしさが決まるとしている。

  1. 生理的欲求

  2. 砂糖や油脂などの快楽物質への中毒

  3. 文化的な慣れ

  4. 多様な情報の影響

つまり食べ物そのものに「絶対的なおいしさ」が存在するわけではないということ。食を体験する「人」の空腹状態や慣れ、舌や鼻から感じる味覚・触覚・嗅覚からのインプット情報、グラスや器・ライティングなどの視覚的情報、背景にあるストーリーや産地情報など非常に多様な情報を脳が統合的に処理して、最終的に「美味しい!」という認知に至る。

母が作るかぼちゃのチーズ焼きが美味しい理由は、かぼちゃの糖分、チーズの脂肪分を生理的レベルで欲しているから、というだけではなく、わたしの脳内で「家族が集まる幸福な時間」「なにかを成し遂げたときの達成感」といったポジティブな記憶と強く結びついているからなのかもしれない。


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