本屋開業までの道のり④~取次との打ち合わせの内容②~
シリーズ第4弾は取次さんとの打ち合わせの経過について続きを書いてみました。
なお、前回の記事はこちら↓です。
第3回目の打ち合わせで各々の考える理想の書店像を発表すると決まったため、上のnoteで書いたことを中心に発表用の資料をまとめました。
第3回目 2021年8月18日(水)
理想の書店員像、書店像について取次の方3名と現役書店員、元書店員、そして自分自身のものを順番に発表していきました。
理想の書店員像としては本の知識のみならず、指名が付くような接客ができたり、店舗の経営にも目が向いていたり、挑戦心が強いといった要素が挙げられました。
また、理想の書店像としては
・高久書店さん
・ジュンク堂書店さん
・啓文社岡山本店さん
といったところが具体的に名前が挙がりました。
あくまで個人の理想ではありますが、大手チェーン書店から個人経営の書店まで、規模も特色もバラバラです。
このように各々の理想も異なることが予想できたため、理想を考えた上で目指すべき方向性というのは共有しておくべきだろうと打ち合わせの前に考えました。
それが前回のnoteの最後の方に記した箇所です。
じっくり考えた際に自分の店舗だけが上手くいくのではなく、自店舗の取り組みなどが他の本屋さんにも役に立つのが理想かもしれないと感じました。
ページ薬局ですら本の売上を作れていないのに大口を叩くにもほどがあるとは自覚しています。
それでも場を残そうとするなら一店舗が大盛況するよりも、例えば一つの成功事例が別の店舗でも活用できるのが自分の目指したいところで、だからこそ「属人的すぎない」キューブリックさんが理想的だと思えたのだと自分の中で腑に落ちました。
「町の書店経営が成り立つ」
壮大なビジョンに果たして自分にできることが何かあるのか、自信はありませんがあくまでも理想ということでご容赦いただければ幸いです。
一店舗の経営を成り立たすの自体、ハードルが高いのは重々理解しています。
とはいえ仮に今からやろうとする本屋だけが上手くいったとしても、他の町には書店がなくなってしまい兼ねません。
それは結局のところ、本との出会いの場を減らすことを意味しています。
ならばこれから開く本屋が、他の書店経営にとっても役に立ったりするような、ひいてはリアルな場が残るのに役立つような存在になれば言うことなしだと考えました。
ぼんやりとした理念のもと、上で名前の挙がった本屋さんの取り組みや参考になりそうな情報を整理して次回に持ち越すこととなりました。
第4回目 2021年9月22日(水)
地域や町に根付く本屋を行いたいとのイメージはこれまでの打ち合わせを重ねてきて、徐々に浮かび上がってきたように感じています。
そうした計画を練ると共に考えるべきなのが条件面だとの話に移りました。
具体的には開業候補地と数字です。
開業候補地を考えるにあたり、自分でもどの地域が良さそうなのかを考えるため、Googleマップへの新刊書店のプロットを打ち合わせまでに準備しました。
職場も住居も大阪にあるため、その辺りを中心にして新刊書店を調べていき、取次さんとも商圏として狙い目ではないかとの話になったのが赤丸で囲ったエリアです。
場所が想定できたからとはいえ、開業する物件がなければ話も進みません。
しかも好立地でテナントが見つかったとしても、書店経営における固定費、すなわち家賃は相当シビアに考えなければならないと取次さんより釘を刺されました。
具体的には坪単価5000円以下、もしくは売上歩合5%以下。
ピンとこない方は「賃貸 テナント」で検索をかけていただき、駅近くのテナントの賃料を調べてもらえたらと思います。
好立地で視認性の良い坪単価5000円のテナントなんて見かけたことがありません。
しかしながら5000円を切るとは言わずとも、いかにして好立地低賃料の物件情報を入手できるのかが書店経営のキーだとも言われました。
テナント側にとって本屋の誘致が他のテナントの集客やテナント全体のステータスや品格、イメージアップに繋がると理解してもらえれば好条件で契約できるケースも稀にあるみたいです。
厳しい賃料を設定しているのは闇雲に固定費を抑えたいからではありません。
例えば50坪の本屋をこれから開業しようと仮定します。
想定月商が500万円とすると、粗利益はおおよそ110万円です。
返品を抑えたり、出版社との直取引を行えばもう少し改善できるとは思いますが、オーソドックスに取次さんを介しての取引で計算しています。
粗利110万円から家賃と人件費、光熱費などの経費を差っ引いて残った中から、当面は投資した分の返済に充てるイメージとなります。
月商500万円の店舗を正社員の方1名、パートの方2名で運営するとして、社会保険料の会社負担分なども加味すると人件費はざっくり60万、粗利110万から引くと残りは50万円となります。
ちなみに50坪の本屋をやろうと思った場合の初期投資はかなり大まかですが
・内装、什器代 約2000~2500万円
・商品代 約1500~2000万円
・保証金 想定月商の1.5~2ヶ月分
となるみたいです。
返済については自己資金がいくらあるかにも左右されますが、法人登記等の他の費用も含めていくと初期投資は4000万円とし、月々30万円返済すれば10年で3600万円、仮に7年で返済を終えたいのなら自己資金600万に月々40万円の返済が必要になります。
粗利110万円ー人件費60万円ー返済30万円とするなら、自ずと家賃に割けそうな金額もはじき出されてきます。
坪単価5000円でも50坪であれば家賃は25万円と、月に500万円を売り上げても返済を加味すれば厳しくなってしまいます。
個人で本屋を開業する場合に住居兼用であったり自己所有物件を選ぶのも、まさにこのような背景があってのことです。
什器に関しては閉店する店舗から引き取ったり、内装も業者によって差があるみたいなので抑えられる可能性も十分ありますが、まずはベースとなる条件面を整理していきました。
本が売れにくい時代に何もないところから月商500万円を作るのも、これまた至難です。
SNSを用いて認知度を高めたり、客注を逃さないようにしたり、外商という視点だけではなく教育機関などと接点を持ったり、と前回挙げた書店さんの取り組み等も参考にしながら色々を手段もあげましたが、好条件の物件を見つけるのと初期投資をいかにして抑えるかも課題として出てきました。
第4回目の打ち合わせを終えて付き合いの有無に関わらず不動産業者数社に連絡を取り、引き続きテナントは探していますがまだ勝負できそうな物件とは巡り合えていません。
テナントに書店誘致をお考えのオーナー様、業者様がおられましたら是非ご連絡いただければと思います。
またもや意外とボリュームのある記事となったため、取次さんとの打ち合わせ内容の続きは別の記事で書きたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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