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取次に対して今思うこと

書店単体で経営が成り立たないかを考えるようになり、書店員さんに伺うことも情報交換の機会も増えてきました。

長らく続く出版不況の中でどうやったら書店経営が成り立つのかを考えるにあたり、多くの書店員さんが言及されたのが「取次」に関してです。

取次とは出版業界の卸です。


だいぶ前の記事で書きましたがお店を始めたばかりの素人として、Amazonでは早く入荷できるのに取次経由だと倍以上の時間がかかったり、おまけに入ってくるかも不明瞭な点には疑問を感じたこともあります。

正確に言えば今も納得はできていません(笑)


本の目的買いの場合、Amazonでは一目で在庫の有無がわかり、配送料もかからず、かつ手元に届く早さと圧倒的に優れています。

上記、『「本が売れない」というけれど』の中で著者永江朗さんは次のように述べています。

 客の辛抱は3度まで、といういい方がある。本を買いに行って、目的の本がないことが3回続いたら、客はもうその店に足を向けなくなる、というのだ。
*本書108ページより引用

便利なAmazonではなく本屋で買おうと、目的買いの人がせっかく足を運んで注文をもらっても、商品が入荷できずに逃してしまっては台無しです。

出版社や取次の視点では売上が見込める大型書店に配本するほうが利益の面からも大事なのは十分理解できますが、全ての本を大型書店で売り切れるのではないなら、書店間での分譲も踏まえて別のネットワークがあってもいいのではと個人的には感じています。

また他にも書店員さんの話では、委託配本が適切ではないという意見であったり、上で述べたのと同義で取り寄せにかかる時間を問題視する声もありました。

委託配本とは簡単にいうと、書店への仕入れを取次が任せられているイメージをしてもらえたらわかりやすいかと思います。


新しく発刊される本は年間約7万点、1日あたり200点近い新刊が毎日世に出ているわけです。

それらを一点一点吟味して発注できたらいいのかもしれませんが想像に容易く、書店側に莫大な手間がかかることからも取次が選定して配送をしてくれる委託配本は非常に有難くも思えます。

しかしながら委託配本が適切でないというのは
「『A』という本があそこの本屋で爆売れしました!だから今度出る類書の『B』を100冊入れときますね!」
と取次から配慮してもらっても、
「いや、あそこの本屋だから爆売れしたのであって、うちじゃ『A』自体そんなに売れていないのに『B』を100冊なんて考えられないよ!」
と本屋側とでは食い違いが生じてしまう、こんなニュアンスだったり他のケースも含みます。


流通スピード、配本のパターンや冊数が取次に求める改善点になるのでしょうか。

なぜ現状の仕組みになっているのかと色んな方に伺っても、(取次の方に聞くと部分的には変化しているような話でしたが)つまるところ昔から続いていると慣習みたいで、いまいちスッキリはしませんでした。


そして取次を散々悪者かの如く綴ってきましたが、こうした自分の疑問を取次の方にぶつけている途中、この話し合いが果たして建設的なのだろうかと次第に違和感を覚えてきたのです。

一担当者レベルとしてなら書店側の言い分も全く理解できないことはないが、再販・委託の両制度がある限り即効性のある解決策は導きにくいというのが正直なところだとも感じました。

この両制度を末端の一店舗がどうにかしようというのはあまりに無謀です。

では自分に何ができるのかを考えた際に、悪く言うばかりでなく取次の事情も汲み取った上で書店経営のパートナーと考えて意見交換するほうがいいだろう、と結論が浮かんできました。


Amazonでできることを何で取次ができないのか、本当のところ取次の若手社員さんなんかが一番思っているのかもしれません。

「○○社の本は小さい本屋には入りにくい」みたくずっと言われていることも、1年ちょっと業界に携わった薬剤師がおかしいと思うぐらいなら取次の方だってどこかつっかえが残っているのではないでしょうか。


数多くの出版社から毎日山のように発刊される本を取り扱い、支払いをまとめて済ませられるのも取次あってのことです。

それに小売業者が卸を敵対視してもプラスにはならないと思います。


異議を唱えるのを放棄したわけでも、取次への忖度を宣言したいわけでもありません。

冒頭で述べた通り腑に落ち切ってはいないものの、やりたいと夢見ている書店単体で経営が成り立つ店舗や、経営のサポートの仕組みを実現させようとするなら、今の自分がやるべきなのはもっと別なところな気がしています。


考えれば考えるほど、話を聞けば聞くほど書店経営の困難さに悶えそうですが、色んな切り口からまず自分にできることを考えていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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