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スペインU-18代表監督に聞く「スペインサッカー躍進の理由」

みなさん、こんにちは。

ここ最近、スペインサッカーの活躍が目立ちますね。
特に代表レベルで。
欧州選手権の優勝、オリンピックでの金メダル、女子は2023年のW杯で優勝と優れた成績を残しています。

そこで、友人のダビ・テノリオ(レベル3を取得した際、戦術クラスの先生。その後、日本でセミナーやクリニックを共同開催。)に、スペインサッカー躍進の理由を聞いてみました。

何を隠そう、そのダビ自身も、スペインサッカー協会のメソッド部門で働いており、パリ五輪では、チームに帯同し、アナリストとして金メダル獲得に貢献しました。

そして、この夏からはスペインU-18の代表監督を務めることになりました!
(友人として、ほんと誇らしく思います。)

前置きが長くなってしまいましたが、以下、ダビとの会話をまとめたものを書いておきました。

スペイン代表の活躍には、しっかりとした根拠、人々の長年の努力が存在しました。日本サッカーが彼らと対等に渡り合っていくためにも、ダビの言葉がみなさんの知識を刺激し、日々の活動に良い影響を与えることができたら幸いです。

1. 選手と監督の関係:一貫性と信頼の勝利

まず最初に挙げられるのは、選手と監督との間に築かれた強固な信頼関係です。特に、ルイス・デ・ラ・フエンテのような指導者たちは、長年にわたり若手選手たちと密接に関わってきました。彼らはU-17、U-19、U-21、さらにはオリンピック代表といったカテゴリーで一貫して選手を指導し、彼らの成長を見守ってきたのです。このようにして育てられた選手たちは、監督に対する信頼感を持ち、監督の下でプレーすることに対する強い意欲を持っています。

ルイス・デ・ラ・フエンテが指導してきた選手たち、例えばミケル・メリーノやスピメンディ、ニコ・ウィリアムズといった選手たちは、監督と共に成長してきたことから、彼の戦術やフィロソフィーに深く理解していました。このような長期的な関係が、スペイン代表チームの一体感とパフォーマンスの向上に寄与しているのです。

2. プロセスの前倒しとリスクを取ることの重要性

スペインサッカーが近年躍進したもう一つの大きな要因は、若手選手の育成における「プロセスの前倒し」と、「リスクを取ることの重要性」です。通常、若手選手はカテゴリーごとに段階的に成長していくものですが、スペインでは特に才能のある選手たちが、通常のプロセスを飛び越えてトップチームに抜擢されることが増えています。

例えば、ガビがバルセロナでわずか1試合しか出場経験がないにもかかわらず、スペイン代表に招集され、フランスやイタリアとのUEFAネーションズリーグでプレーした例が挙げられます。これは、ルイス・エンリケがガビの才能を信じ、彼を早期に試すことを決断した結果です。このような若手選手への大胆な信頼と起用が、スペインサッカーの革新と成功を支えているのです。

3. 経済危機がもたらした若手選手の台頭

スペインのクラブチーム、特にバルセロナ、バレンシア、セビージャといったクラブは、近年の経済危機によって大きな影響を受けました。これらのクラブは、経済的な制約から高額な外国人選手を獲得する余裕がなくなり、やむを得ず若手選手を起用するようになりました。この結果、国内の若手選手がトップチームでのプレー機会を得ることができ、成長する機会が増えたのです。

バルセロナでは、アンス・ファティやペドリといった若手選手が台頭し、バレンシアやセビージャでも多くの若手選手がトップチームで活躍するようになりました。これらの選手たちがクラブで経験を積み、その経験がスペイン代表チームのパフォーマンス向上に寄与しています。このように、経済危機が逆に若手選手の成長を促し、スペインサッカーの競争力を高める結果となったのです。

4. クラブの哲学と地域性が生み出す競争力

スペインのクラブチームには、それぞれ独自の哲学と地域性があり、それがチームの競争力を高めています。例えば、アスレティック・ビルバオはバスク地方出身の選手のみを起用するという厳格な方針を持ち、この方針がチームの一体感と独自性を高めています。また、レアル・ソシエダはバスク地方出身の選手を中心に、外国人選手を組み合わせることで、強力なチームを構築しています。

これらのクラブの哲学は、地域社会との強い結びつきを生み出し、ファンの支持を集めるだけでなく、選手たちの誇りとモチベーションを高めています。さらに、こうしたクラブの競争力がスペインサッカー全体のレベルアップに寄与し、代表チームの強さを支える要因となっています。

5. 指導者の質と教育:スペインサッカーの強さの基盤

スペインサッカーの成功を語る上で欠かせないのが、指導者の質と教育です。スペインでは、指導者が高度な教育を受け、最新の戦術やトレーニングメソッドを学ぶことが奨励されています。彼らは単に練習を実施するだけでなく、その練習の意図や目的を明確に理解し、選手たちに伝える能力を持っています。

(インタビューでは、特に日本との違いが指摘されました。)スペインの指導者たちは、練習の意図をしっかりと理解し、選手たちに適切なフィードバックを行うことで、個々の選手の成長を促しています。一方、日本では、同様のトレーニングメソッドが導入されているものの、その背景や目的を十分に理解せずに実施されることが多いとの指摘がありました。これが、選手の成長やパフォーマンスにおいて、スペインと日本の間に差が生じる要因の一つとなっているのです。

また、スペインでは、選手の個別の成長が重視されています。選手が自身の弱点を克服し、個々のスキルを磨くことができるよう、コーチたちは綿密な指導を行います。このように、個々の選手の成長を重視する姿勢が、スペインサッカー全体の競争力を高めています。

6. 国際化と外部からの影響:スペインサッカーの進化

スペインサッカーの成功には、国内外の影響をうまく取り入れている点も大きく寄与しています。多くのスペイン人選手が海外でプレーし、その経験を持ち帰ることで、スペイン代表チームの戦術やプレースタイルがさらに進化しています。ダビは特に、スペインの選手たちがプレミアリーグやセリエAといった他国のリーグでプレーし、その経験が代表チームに還元されていることが強調されました。

また、外国人選手やコーチがスペインに流入し、彼らから学ぶことで、スペインサッカーは常に進化を続けています。特に、指導者たちは他国の戦術やトレーニング方法を積極的に取り入れ、スペインのプレースタイルに適応させることで、さらなる競争力を生み出しています。このような国際化の流れが、スペインサッカーをより多様で強力なものにしているのです。

7. 女子サッカーの台頭とその背景

近年、スペイン女子サッカーも世界の舞台で輝きを放つようになりました。これは、10年前にはほとんど存在しなかった女子サッカーが、今では多くの若い女性選手を育て、世界トップレベルに到達するまでに成長したことを示しています。インタビューでは、女子サッカーの台頭が、女子選手に対する投資と指導者の質の向上によって支えられていることが強調されました。

10年前、スペインにはほとんど女子サッカーチームが存在せず、女子選手の数も非常に限られていました。しかし、現在では、多くのクラブチームが女子チームを持ち、数多くの女子選手が育成されています。この変化は、スペイン女子サッカーの競争力を大きく向上させ、世界トップレベルでの成功に繋がっています。

特に、女子選手の育成においても、指導者の質が重要な役割を果たしており、男性サッカーと同様に、長期的な育成と信頼が成功の鍵となっています。これにより、スペイン女子サッカーは世界の舞台でトップクラスの地位を築き上げています。

8. 日本サッカーへの示唆と今後の課題

スペインサッカーの成功から、日本サッカーが学ぶべき点は多くあります。特に、若手選手の育成や指導者の教育に関する課題は、日本が今後さらに発展するために取り組むべき重要な要素です。ダビとの話では、スペインと日本の間に存在するいくつかの違いが浮き彫りになりました。

まず、選手の成長を促進するための「プロセスの前倒し」や、「若手選手に対する信頼と起用」が、スペインサッカーの競争力を高めている点が挙げられます。日本でも、才能ある若手選手を早期にトップレベルで試すことで、彼らの成長を促すことが重要だとダビは考えています。

また、指導者の質の向上も日本にとって大きな課題です。スペインでは、指導者が高度な教育を受け、その知識をもとに選手を育成しています。日本でも、指導者の教育を充実させ、彼らが選手に対して適切な指導を行うことが求められます。

さらに、国際化の進展が、スペインサッカーを進化させている点も重要です。日本でも、海外でプレーする選手の経験を活かし、国内リーグや代表チームの競争力を高めることが求められます。

9. まとめ

ダビとの話を通じて、スペインサッカーの成功の要因が明らかになりました。選手と監督の信頼関係、プロセスの前倒し、経済危機による若手選手の台頭、クラブの哲学と地域性、指導者の質の高さ、国際化の影響、そして女子サッカーの台頭といった要素が、スペインサッカーの競争力を支えています。

これらの要素は、日本サッカーが今後さらに発展するための貴重な示唆を与えてくれます。特に、若手選手の育成と指導者の教育に焦点を当てた取り組みが、今後の日本サッカーの成長に大きく寄与するとダビは考えています。

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