ニセ予言者ども

6枚目 JAGATARA「ニセ予言者ども」(1987年)

 JAGATARAの代表作といえば、暗黒大陸じゃがたら名義のファースト・アルバム「南蛮渡来」を挙げる人が多いのではないでしょうか。しかし、好きな作品は?と聞くと、このアルバムを挙げる人が多いような気がします。

 江戸アケミが精神疾患から復帰し、活動再開したのが85年。87年に「裸の王様」をリリースし、同年2枚目となるスタジオ作品がこのアルバムでした。

 「裸の王様」同様、パンク直系の攻撃的なムードをファンク・ビートに乗せた4曲収録。フェラ・クティのような、リフのループが生み出すグルーヴと緊張感。コンパスポイント的なダブ感覚を持った2本のギターの絡みが、より複雑なリズム感覚を生みだす。そして、シンプルな言葉に込められた強力なメッセージ。初期の作品で聴けた狂気とギリギリの研ぎ澄まされた感覚がなくなったとこの作品を否定する人もいますが、これは成熟という言葉に置き換えられるでしょう。また、江戸アケミの言葉には、非常に煽動的な一面が見られるようになりました。

 珍しく明るいムードを持った「少年少女」。<お前の考え一つでどうにでもなるさ>と、14分にも渡って畳み掛けるように凄いテンションで迫ってくる「みちくさ」。ヘヴィなリフと強力なアジテーションが圧倒的な「ゴーグル、それをしろ」。そして、呪術的と言えるほど、ゆらりゆらりと幽玄な儀式を15分にも渡って繰り広げる「都市生活者の夜」。何度も繰り返される<昨日は事実、今日は存在、明日は希望>という有名なフレーズは、このアルバムを特別なものにしていると言えます。

 因みに、渋さ知らズがコーラスとダンスのメンバーだった南流石をゲストに迎えてこの曲をライヴで演奏していますが、想いがこもった感動的な演奏で、JAGATARAというバンドがいかに特別だったかがこんなところからも読み取れるのです。

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