ダイヤモンズ

24枚目 ダイヤモンズ「ダイヤモンズ」(1990年)

 前回からの鴨下信吾つながりでいきましょう。

 1985年にザ・ブドーカンというバンドで1度メジャーデビューしている鴨下ですが、久しぶりのリーダー作品は、ダイヤモンズというトリオ編成のグループで実現しました。


 ダイヤモンズの名が知れたのはイカ天への出場がきっかけでした。残念ながら1週の勝ち抜きで終わってしまいましたが、審査員からの評価は高く、そのレベルの高さは疑いようがありませんでした。誰の目で見ても、わかりやすくいい曲を書き、上手く、情熱的だったのです。それなのに勝ち抜けなかったのは、その音楽性(もっと言えば歌詞)が少し前時代的だったからでしょう。

 スピード、タイト&ソリッド。このアルバムをわかりやすく表すとそうなるでしょうか。鴨下のギターは正確無比、抜群のスピード感と緩急自在なプレイは、ロックギターの教則といってもいいほどです。かつて、ARBの田中一郎のプレイは"カミソリギター"と言われましたが、それにも負けない鋭いプレイを連発します。単音リフの作り方、メジャー7thや9thをぶち込んでくるコードワーク、コーラス(エフェクター)をうまく使った音作り、そして何よりムスタング使いということから、チャーの影響下にあることが丸見えなのですが、何よりも素晴らしいのは、正確なタイム感を持ちながら、物凄い熱量を持っていて、楽器を響かせることを知っているところでしょう。ヴォーカルも技巧派ではないものの、効果的なフェイクを交えた安定した歌は、その熱さと共に、やはりロック・ヴォーカルの見本といいたくなります。山田聡と上村正樹の二人によるリズム隊の力量もかなりのもので、この時代にこれだけ8ビートをグルーヴさせられるプレイヤーはそうそういなかったと思います。この二人の経歴は知りませんが、ロック以外のジャンルの出身なのではないかという気がします。

 残念なのは、先ほども書いた通り、前時代的な歌詞です。これもやはりロックの典型といってよく、ロックの優等生が少し悪ぶっているようにも見えます。歌詞を別の人が書いていれば、きっと違った評価があったはずです。つまり、鴨下の憧れは70年代的なロックスターなのでしょう。作品のクオリティを考えれば、これがあと10年早かったらと思うと、本当にもったいないのです。

 

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