見出し画像

50枚目 BAD MESSIAH「GOLDEN SEEDS」(1990年)/THE CULTに影響を受けた骨太で硬派なロックンロール

#jrock #80s #バッドメサイア #BADMESSIAH #SA #馬淵大成 #JUNGRAY

50枚目はSAの野音ライヴ成功記念に、バッド・メサイアを。シンガーの馬淵大成が80年代後半から90年代にかけてやっていたヘヴィなロックンロールバンドです。これがひとクセあるバンドで。

バッド・メサイアは、(オリジナル)SAを解散させた馬淵が、佐野昌樹g(元ヴァージン・ロックス)、JUN-GRAYb(元KENZI & THE TRIPS、現横山健バンド)、加藤久基ds(元SHOCK)らと共に88年に結成。全員が名前のあるバンド出身だったということもあってか、インディーズでミニアルバムを2枚リリースするとすぐに頭角を現し、90年にメジャーデビューを果たします。イカ天などの影響もありバンドの青田買いが進んでいた時期とはいえ、結成から2年でのメジャーデビューはなかなか早かったといえるでしょう。

面白いのは、加藤以外のメンバーはパンク出身であるにも関わらず、硬派で骨太なロックンロールという、ハードロック寄りの音楽性にシフトしたということ。長髪に革ジャンというビジュアルも含め、当時はガンズ・アンド・ローゼスの影響は絶大なものがありましたから、彼らにもそういった一面はあったのかもしれません。しかし、彼らにはハードロックシーンとフレンドリーだった印象があまりないのです。その理由をとあるバンドに求めると、答えは簡単に出ます。それは<ザ・カルト>です。

ザ・カルトは、もともとはゴシック系のサウンドから出発しながらも、作品を重ねるごとにハードロック的な要素を増やしていきました。特に80年代後半に大ヒットした「Electric」と「Sonic Temple」の2枚はハードロック色を強めましたが、やはり純粋なハードロックバンドと並べてみるとかなり異質なものが目立ちました。バッド・メサイアにも同じような異質さを感じますし、実際にメンバーの多くがザ・カルトを好きだったようです。

その異質さが何なのかをひとことで言ってしまえば、<匂い>という漠然とした答えになってしまうわけですが、主にそれを作り出していたのが、JUN-GRAYのベースです。ゴリゴリとしたサウンドと下に下にと沈み込んでいくような重いグルーヴは、ヘヴィながらもハードロックとは全く違った印象を与えます。また、リズムアレンジを含む曲作りもユニークで、ギターのリフに合わせて細かいブレイクやキメを多用しているのは珍しいパターンです。それを作り出す佐野のリフメーカーとしての実力はかなりのものでしょう。

もう一つ重要なのが、彼らはハードロック的なところにこだわっていたわけではないということです。その時々の興味で音楽性を変えていくのが彼らのスタンスであり、デビュー当時のインタビューで既にそういった発言をしています。それが証明されたのがメジャー後期の作品で、よりポップさを増し、メンバー全員で白いスーツを着てみたりと、そのイメージはどんどん変わっていきました。特に馬淵はSAというパンクバンド出身ではありますが、「パンクはファッションも大切」だといい、かなりオシャレな感性を持っている人でした(ゴス時代のカジヒデキとバンタンの同級生だったそうです)。そういったことが関係しているのかもしれません。

さて、ここで取り上げるのはメジャーデビューアルバムです。インディーズ時代のミニアルバム2枚もいい出来なんですが、メジャーデビューシングルとなった「Burn To The Sky」や「Steady Dog」(この2曲はインディーズ盤の「Outshine」にライヴヴァージョンで収録されていた)や「Rolling Kingdom」(同じくミニアルバム「Shake My Booty」に収録)、「Feel So Pain」など、インディーズ時代の代表曲が(再録で)まとめて聴けるということでこれを選びました。多くの曲はインディーズ時代からの流れにある硬派なロックンロールなのですが、その中にも「Coyote」の流麗な感じや「The Stormy King」の後ろの方で16を刻むパーカッション(しかもラテン風のグルーヴ)など、後の作品に繋がる要素も既に出始めています。

残念なのは、録音の音ヌケが悪いこと。これはこの頃の(日本録音の)CDにはよくある現象で、CDの音作りへの認識がまだまだ甘かったり、マスタリング技術が発展途上だった時期だったこともあると思うのだが、できればリマスタリングされたものを聴いてみたいです。あと、このジャケ写もないよねぇ・・・。

【収録曲】
1. Misguide' Captain
2. Zien-Zien-Zien
3. Rolling Kingdom
4. Feel So Pain
5. Coyote
6. The Stormy King
7. Hazy Moon
8. Burn To The Sky
9. Steady Dog
10. Golden Age (For You)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?