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21枚目 VIENNA「Overture -序章-」(1988年)

 日本のプログレ・シーンは狭いので、同じプレイヤーたちがあっちでくっついたりこっちでくっついたり、ぐるぐる回っている印象があります。そんな中でもスーパーグループと呼ばれてデビューしたバンドがヴィエナでした。

 元ジェラルドの藤村"茶々丸"幸宏(Vo,G)、元アウター・リミッツの塚本周成(Key)、元ノヴェラの西田竜一(Ds)、西田の推薦で加入したアフレイタスなどのサポートをしていた永井敏己(B)。キーマンはキーボードの塚本で、変態的な変拍子から壮大なファンタジーを感じさせる曲、シンフォニックで深遠な曲など、凡そポップとは離れたところにキャッチーなメロディを乗せて曲を組み立てる術は、なかなか真似できるものではありません。また、リーダーである藤村が書く曲は、ギタリストらしくストレートなシンプルさがあって、ロックのダイナミズムを感じさせます。そこに乗る藤村の艶やかなハイトーン・ヴォーカルも大きな魅力です。壮大な空間を作り出すシンフォニックなキーボード、繊細なギタープレイ、タイトにリズムを刻むドラムスと、複雑なリズムに疾走感を持ち込むベース。それらのバランスも見事です。

 例えば、1曲目の「Follow You」は4分台の曲ですが、8分の7拍子の上でどこがアタマか分からなくなるような複雑なリズムパターンで始まり、キャッチーなのにどこか歪なリフとメロディが乗り、アコギの早弾きソロやキメのパターンなど、実によく考えられています。「歪まされた時間の楽園」はファンタジーをベースにした歌詞と美しいメロディ、9分以上に渡って目眩くようなサウンドが展開する、このアルバムのハイライトといえるでしょう。ラストの「カノン」は、美しいメロディと神聖かつ壮大な世界観が展開する、もう1つのハイライト。とはいえ、どの曲も非常に高度なテクニックをベースに作られたものばかりで、聞き逃せない瞬間が続きます。

 プログレが衰退期にあったタイミングで、高度なテクニックと音楽性、そしてポピュラリティまでを持ち合わせたヴィエナの登場は、シーンから非常に歓迎されました。しかし、スーパーバンドの常か、アルバム2枚でバンドは分解してしまいます。

 解散後、藤村と永井はラウドネスの二井原実とともにデッド・チャップリンを結成(藤村は二井原の大学時代のバンドメイトです)。塚本は現在Gacktの音楽面のブレーン。藤村と西田もGacktのバンドで活動していたことがあります。

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