激突__

14枚目 COLOR「激突 !!」(1988年)

 かつて、70年代には西のファニカン(桑名正博がいたファニー・カンパニー)、東のクリキン(クリスタル・キング)なんて言葉もあったが、80年代も終わろうとする頃、東西対決が再燃する。西のCOLOR、東のX。もっとも、彼らはその派手な出で立ちを比較されていただけであり、音楽性はまるで違った。しかし、その同類感を認めたのか、お互い非常に仲が良かった。

 とまぁ、そういう感じで語られるバンドなんですね、COLORは。そのビジュアルやXとの関係、DYNAMITE TOMMYの過激さなどについて語られることはあっても、その音楽性の面白さに触れられることはあまりありません。

  COLORは、大阪でケンカ無敵のリアルにもの凄い不良だったDYNAMITE TOMMYが、世の中への反逆のために結成。ヴィジュアル系の元祖とも言われるあの派手な色の髪は、社会から嫌がられそうなことをするという発想から始まっているのと同時に、その覚悟を示しているわけです。つまり、昔のヤンキーのリーゼントや変形学生服なんかと同じです。そういった経緯もあって、TOMMYは音楽的な部分には全く関心がなく、しかし、企画力などには秀でたところを見せていたようです。常識破りの活動を展開できたのも、Free Willレーベルを設立して後進を育てたのも、TOMMYの企画力と突破力、そしてカリスマ性があったからでしょう。

  彼らの音楽は、パンクがベースになっています。初音源となったインディーズ時代の1stシングル「Molt Grain」のオープニングには、セックス・ピストルズの「Anarchy In The U.K.」をカセットで聴くところから始まります。ここにバンドの原点が記されているといっていいでしょう。キャッチーなメロディとTOMMYのがなり立てるヴォーカルはパンクそのものですが、歌詞を英詞にしたのは、へたくそな歌を誤魔化すためだったそうです。しかし、これが想像以上の効果で、何を歌っているかはきちんと聞き取れないものの(歌詞はやはり反社会的内容です)、パワフルなダミ声のインパクトはなかなかのものです。

 しかし、それだけでは足りません。楽曲のキャッチーさは超高速のハノイ・ロックスともいえるし、カラッと明るい雰囲気はヴァン・ヘイレン的。ギターのリフはアメリカ西海岸のスラッシュメタルのようであり、しかし、そのギターのトーンはブライトで、メタリックな刻みフレーズを弾いてもヘヴィにはなりません。そこがメタルと一線を画している大きな要素でしょう。これは、音楽面を担当したギターのTATSUYAの功績であり慧眼です。

 TATSUYAはリハーサルスタジオでよく遭遇したことからバンドに誘われたのですが、当時は高校生。しかし、類稀なテクニシャンでした。ギターソロではテクニックをひけらかすようなプレイはせず、いわゆるメタル的な弾きまくりとは違ったポップなフレーズが特徴でした。ジャストなタイム感で、必要以上に感情を込めず、絶対に誤魔化しがきかない明快なフレーズをさらりと弾きこなす、スタイリッシュと言ってもいいほどのセンス。彼が書くパンクとメタルにポップを振りかけたような楽曲は、COLORというバンドの二面性を見事に表現しています。このポップ感には、今なら最近のアイドルポップスに通じるものを見いだせるかもしれません。

 また、ドラムのTOSHIも元マインカンプという経歴を持ち(余談だが、メンバーが流動的だった時期のXにマインカンプのギタリストがいたことがある)、演奏の安定に一役買いました。TOSHI の高速ドラムは、スネアがパンク的なスカスカの音なのに、スラッシュメタルのようにペタペタにミュートした2バスという変わったセッティングで、スラッシュ的なようで、ハードコアのようにも聞こえます。ここにもCOLORのサウンドの二面性が見られます。

 この1stアルバムはまさにそんなCOLORのイメージそのものといっていいでしょう。ポップな「Kill Time」「Dolphin Kicks」。高速ナンバーの「LA LA MIE」「We Must Be A Dead Or Alive」。そして、ライヴでは暴動並みに客席が荒れる(実際にライヴで観客が死亡している)超高速ナンバー「Left Wing」。ピッキングする腕が攣りそうなこのスピードの上で、ギターはしっかりバッキング・リフを作って弾いているところはなかなかすごいです。

 インディーズで最初に出た時はピンク1色のジャケット。CD化された際に、TOMMYの写真のジャケットに変更されました。あと、9・11テロの飛行機がビルに突っ込む写真を使ったジャケがあるというのは本当なんでしょうか?現物を見たことがないのでわかりませんが、TOMMYならやりかねません。

 つまるところ、彼らの音楽はヤンキー・ロックの変形で、それはXも同じです。しかし、保守的な匂いのするXが矢沢永吉の流れにあるとしたら(BOOWYなどもそうです)、左寄りのCOLOR(「Left Wing」なんて曲があるくらいだし)は、アナーキーの系譜にあると見ていいでしょう。彼らの後に続くヴィジュアル系にヤンキー・マインドがあるのは、この出発点の影響が大きいはずですが、多くのヴィジュアル系が右寄りの匂いを発するのはXの影響下にあるせいで、Free Will所属のDir En Grayに独立したアートの匂いを感じるのは、やはりCOLORの影響下にあるということなのかもしれません。

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