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48枚目 The Willard「Good Evening Wonderful Fiend」(1985年)/インディーズ・ブームを牽引したパイレーツ・ロック

#jrock #80s #ウィラード #Willard

というわけで、ラフィンに続いて、インディーズ御三家の一角、ウィラードです。現在まで存在感を持って活動を続けるラフィンノーズや劇団を通して存在感を発揮しつづけた有頂天のケラと違って、ウィラードは解散こそしていないものの、ほぼ行方知れずの状態でした。しかし、ここ最近で3バンドとも活動が活発になりそうな兆しがあります。

ウィラードは82年にシンガーのJunを中心に結成(ちなみにラフィンは81年、有頂天は82年結成です)。Junのゴシックな海賊風メイクやホラーやウエスタンムーヴィーなどの影響を表出させたコンセプチュアルなサウンドとアレンジの上手さは、個性的なバンドが多かったインディーズシーンの中でも、一際目立つ存在でした。

83年頃から活動が活発になり、85年までに6枚ものシングル(ソノシート含む)をインディーズでリリース。その集大成としてリリースしたのが、初のフルアルバムとなる「Good Evening Wonderful Fiend」でした。80年代に一大勢力となったインディーレーベル、キャプテン・レコードからの第1弾リリースであり、運営母体である出版社の宝島社の積極的なプロモーション(レーベル立ち上げに際して行われたフリーイベント「好きよキャプテン」など)と、NHKの番組「インディーズの襲来」などの影響もあり、爆発的な売り上げを記録。まだまともなディストリビューションすらない時代のインディーズとしては驚異的な2万枚(公称)という売り上げを叩き出しました。

その音楽性も個性的で、いわゆるパンクとは異なり、実にしっかりと構成され組み立てられていました。ダムドに影響を受けたと思しきその性急なビートはパンクのそれなのですが、Junが作り出す楽曲は明るく高揚感があるものが多いのが特徴です。例えば、「Jolly Rogers」や「The End」などは、アメリカ西海岸のサーフサウンドのような爽快感や、前述したようにマカロニウエスタン的なドラマティックな展開、そこにキャッチーなメロディ(ポップとは少し違うかも)が踊ります。歌詞の面でも、海賊をモチーフにしたものやオカルティックなものなど、世界観がハッキリしており、歌詞、サウンド、ヴィジュアルが見事にかみ合って"ウィラードの世界観”というものを作り上げていたことが、彼らをシーンの頂点に押し上げたのでしょう。また、Junのヴォーカルの発声や歌い方にはJunというキャラを演じているようなところがあり、それがそのルックスと合わせて強烈なカリスマを作り出していた要因の1つと言えるかも知れません。

ただし、Junのヴォーカルは決して上手いと言えるものではなく、音程はフラットするわ、リズム感は悪いわ、食い気味に入る癖が全体のバランスを崩していくわで、特にライヴでのぐだぐださ加減はひどかった。演奏も同じようなものだったのですが、破綻寸前のままハイテンションで突っ走っていくようなスリリングさは、成熟とは縁がなかったインディーズ時代ならではの魅力でしょう。

また、ウィラードはJunが全ての曲を書くワンマンバンドで(ちなみに、Junはスターリンにギタリストとして在籍していたこともあり、このアルバムでもギターのほとんどはJunが弾いているらしいです)、Junのメンバーに対する扱いは酷かったと言われ、メンバーとの軋轢が絶えませんでした。バンドは現在まで解散することなく継続しており、アルバムも97年まではコンスタントにリリースしていましたが、メンバーの入れ替えが多かったのはそういったことが影響しているのでしょう。

現在の正式メンバーはJun一人だけ。しかし、元Super Bad、ARBなどの内藤幸也、元ローグの西山史晃(文明)、元女的-ガールティック-、AIONの酒井愁らがサポートしており、ウィラードの音と相性が良さそうなメンバーが揃っているだけに、気になるところです。

【収録曲】

Side A
1. Jolly Rogers
2. Borecide Boys
3. Good Evening Wonderful Fiend
4. Nightmare
5. Vanguard
6. Too Much Love Like Hell

Side B
1.The End
2. Born In The Far East End
3. Lay To Rest
4. Bondage Dream
5. Vain For You (Congratulation)
6. C'mon Whips

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