見出し画像

31枚目 坪倉唯子「Always In Love」(1986年)/ベット・ミドラーの影響を通過したヴォーカルの圧倒的な個性(ジャニス・ジョプリン・フォロワーその4)

#jrock #80s #坪倉唯子 #BBQUEENS

ジャニス・ジョプリン・フォロワーの4人目は坪倉唯子さんです。作品の傾向からいえばポップス色が強い人なので、このチョイスは反則気味なんですがw 声はハスキーですが、歌い方にもジャニスからの影響はそれほど感じませんし、何よりも「踊るポンポコリン」のB.B.クイーンズのリードシンガーとして多くの人に認識されているかもしれません。しかし、91年に彼女の誕生日企画として六本木PIT INNで行われた、彼女が好きな曲ばかりをカヴァーしたライヴを収録したアルバム「やさしく歌って」(ちなみに、このアイデアは、レーベルメイトであり、B.B.クイーンズの相方でもある近藤房之助の作品から頂いたものだそう)の選曲を見ると気がつくことがあるでしょう。70年代のヒット曲を中心に選曲された全12曲中、ジャニスのカヴァーは「Move Over」と「Half Moon」の2曲。それ以上にジャニスの生き方をモチーフにベット・ミドラーが演じた映画「ローズ」から「Midnight In Memphis」「Keep On Rockin'」「The Rose」の3曲と、この映画からの影響を強く感じます。このサントラは名作として知られ、タイトル曲の「The Rose」は今も多くの人にカヴァーされ歌い続けられている名曲ですが、この映画やベット・ミドラーが演じたローズ像を通してジャニスに影響を受けたという層が少なからず存在するのです。

坪倉唯子は18歳だった79年にオリジナル曲の「纏いつく想い」でヤマハ・ポプコンの関西大会でグランプリを受賞。81年には同じく全国大会で「Easy Going」で入賞を果たしています(この音源はレコード化されています)。その後、中原めいこや杏里らのバックコーラスの仕事をしながら、85年にソロデビューを果たします。

現在の坪倉は専業歌手のイメージがありますが、もともとはピアノの弾き語りなどもする人で、この1stアルバムからはシンガーソングライターとしての名残のようなものも感じられます。先に書いた「まといつく想い」(「纏いつく想い」から改題)はまさにシンガーソングライター的な怨念系ポップスの名曲です。また、「心花迷路」(ダイハツか何かの車のCMソングだったような気がする)や「GOOD-BYE MR. LUCKY LIPS」などのロックテイストのアレンジは「Midnight In Memphis」あたりに通じるところがあって、ベット・ミドラーを通過してより洗練されたロックを模索した結果と言っていいかもしれません。「STOP! DRUGGIN' MY HEART」のバックはFENCE OF DEFENSE結成前の北島健二g、西村麻聡b、山田亘dsの3人が担当しており、既に完全にFENCE OF DEFENSEの音になっているところも聴き所でしょう(歌に戻ってもギターソロを弾き続ける北島のクセも出ていますw)。このアルバムはポップスの割にはリズムがけっこうガシガシしたロックっぽいノリの曲が多い印象があるのですが、コラムニストの泉麻人が作詞したデビュー曲の「Cry For The Moon」は、後にB-ing入りしてからのフュージョンテイストのアダルトなポップスに近い印象があります(ちなみに、2ndアルバムの「Loving You」はこの1stを遙かに超えた大名盤です)。また、タイトル曲の「Always In Love」は後藤次利が書いたファンクなリズムを持ったシティポップスの名曲で、今ならまた違った評価も与えられそうです。

圧倒的な歌唱力と少し鼻にかかったハスキーな声で情熱的に歌い上げる個性的なスタイルを持ちながら、楽曲によっては歌い方を変える器用さも持ち合わせていて(「踊るポンポコリン」などはその極端な例でしょう)、そのあたりがソロシンガーとして押し切れなかったことに繋がってくるのではないかという気もしますが、コーラスでの仕事でもかなり高い評価が与えられています。デビュー当時からの大ファンである僕としては、もっとソロ作品を聴きたいんですけどね。


【収録曲】
Side-A
1. 心花迷路
2. 一瞬夜伽伴侶〜Give Me Taboo
3. まといつく想い
4. GOOD-BYE MR. LUCKY LIPS
5. STOP! DRUGGIN' MY HEART

Side-B
1. 熱帯夜〜Dancin' In The Middle Of The Night
2. 氷のMADONNA
3. LONELINESS
4. Cry For The Moon
5. Always In Love〜愛さずにはいられない



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?