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34枚目 BO GUMBOS「BO & GUMBO」(1989年)/ ファンキーなグルーヴが体を揺らす、ニューオーリンズ録音のデビューアルバム

#jrock #80s #bogumbos

 前回のエントリーから少し時間が開いてしまいましたが。前回の藤井真由美さんとKyonさんの繋がりからボ・ガンボスです(ちょっとムリヤリだけど)。しかし、この93年頃までという縛りの中で、彼らについて語るのは非常に難しい。なぜなら、ライヴ盤が出ていないからです。

 ローザ・ルクセンブルグのどんとvoと永井利充bは、ローザが解散する前から新バンドのためのセッションを開始します。それに付き合ったのが元ブレイクダウン、スウィンギン・バッパーズの岡地明ds(現:曙裕)。そこに、どんとの大学時代の先輩であるKyon key,gが合流してボ・ガンボスは結成されました。ローザが解散し、ボ・ガンボスは本格的にライヴを開始します。動員はあっという間に膨らみ、1年も経たずに500人ものお客さんが集まるようになり、そのものすごいライヴの噂は業界にも広まっていきます。そして、鳴り物入りでデビューを果たします。ニューオーリンズのサウンドを取り入れたファンキーなサウンドは、玄人筋では高い評価を得ました。しかし、<ロック>な流れの中で彼らのサウンドは、よく分からないと思われていたのが正直なところではないでしょうか。

 デビュー当初の彼らは、シングル、アルバム、ビデオ、ライヴ、それぞれを別物と捉え、別々の方向性で制作していました。デビューシングルと同時にビデオ作品をリリースしたというのも、珍しかったと思います。そういったやり方が、彼らに固定的なイメージを持たせなかった一方、ふわふわと着地点の見えないもどかしさみたいなものを感じた人もいたのではないでしょうか。彼ら自身も目指す場所が分からないのか決めていないだけなのか、ともかく、カテゴライズされることを拒否しているようでもありました。ボ・ディドリーとニューオーリンズのごった煮料理のガンボを組み合わせた名前からは、ルーツに根ざしながらも、何でもありというスタンスを感じ取れます。

 しかし、彼らの名刺代わりとなった、ニューオーリンズで録音されたこのデビューアルバムの頃は、まだまだニューオーリンズ色や分かりやすくファンキーなテイストが見てとれました。例えば、「助けて!フラワーマン」「泥んこ道を二人」「魚ごっこ」というオープニングの3曲は、デビュー前からライヴで幾度も演奏し練り上げられてきた彼らの代表曲と言っていい名曲ですが、前者2曲は曲調はロックながら4つ打ちのビートとファンキーなベースラインが横揺れのグルーヴを作り出しています。ユニークでシュールな歌詞を持った「魚ごっこ」に至っては、ころころと転がるニューオーリンズ的なピアノ・ラグをフィーチャー。プロフェッサー・ロングヘア風のピアノと変形セカンドラインにどんと独特の絶妙に失礼なセンスを発揮した歌詞を乗せた「見返り不美人」などは、彼らのファンキー・サイドを分かりやすく表現したものだと思います。また、「トンネル抜けて」や「夢の中」のようなスロー~ミッドの曲は、どんとのロマンティシズムと共に、どこか清志郎の影が垣間見えたりもします。

 もともと実力者集団なだけに、このアルバムで聴ける彼らの演奏は十分素晴らしいものですが、それでもライヴでの魅力を考えると物足りないところがあります。むしろ、ライヴから切り離されて作られている印象さえあります。バンド解散後にインディーズでリリースされたメジャーデビュー前のライヴ録音を聴くと、彼らの本当の姿が見えてきます。例えば、岡地が叩く狂気の一歩手前と言っていいほど凄まじいドラムの音圧をスタジオ盤から読み取るのは難しいかもしれませんし、永井のベースは弾いていない時ですら音が鳴っていると錯覚してしまうほどのグルーヴと空気がそこにはありました。客をその気にさせることにかけては天才的な才能をもったどんとの存在感を、スタジオ作業の中に落とし込むことは本当に難題だったことでしょう。彼らが2ndアルバム以降、スタジオ録音を敬遠するようになり、新曲すらライヴ録音で発表するようになっていったのは、そういったジレンマがあったからかもしれません。結局、メンバーがそれぞれの音楽性を追求するようになり、バンドは解散してしまうのですが、このデビュー作を超えるオリジナル・アルバムが作れなかったのは、コンセプチュアルな部分にこだわりすぎるなど、バンドの勢いがあるうちにストレートにライヴ感を追及した作品を作ることができなかったからかもしれません。そして、どんとが亡くなってしまった今、その現在進行形を見ることが決してかなわないのはとても悲しいことです。しかし、ファンによる署名活動が行われ、エピック・ソニー時代のアルバムは永久に廃盤にはしないとレコード会社が約束しました。本当にファンから愛されたバンドだったのです。

【収録曲】
1. 助けて!フラワーマン
2. 泥んこ道を二人
3. 魚ごっこ
4. Hey Flower Brother
5. ダイナマイトに火をつけろ
6. 夢の中
7. ずんずん
8. 見返り不美人
9. トンネルぬけて
10. ZOMBIE-ZOMB☆
11. ワクワク
12. 目が覚めた


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