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Salesforceの標準オブジェクトにこだわりながら、SaaSビジネスで活用する方法とメリット

株式会社primeNumberでSalesOpsを担当している新井です。
trocco®という分析基盤を統合支援するSaaSを提供しており、その営業やカスタマーサクセスの領域を中心にSalesforceを活用しています。

セールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)社で顧客に提案していた経験から、Salesforceはそこそこ詳しいという自負はありましたが、つい最近こんなコメントをいただきました。

御社のSalesforceって標準機能をしっかり使っていて美しい構成ですね。

当社のSalesforce活用方法が、同じくSalesforceを活用されている企業、特にSaaSビジネスを展開されている企業のSalesforce管理者の方の一助になるのかもとの思いから、記事を書く衝動にかられました。
標準オブジェクトを使うとこんないいことがある、という点、SaaSビジネスに対応するためにこんなことが必要、という点も含めながらお伝えできたらと思います。

Salesforceの柔軟性とよくある課題

Salesforceの管理者経験のある方であれば、その柔軟性は良く知るところかと思います。
Salesforceが標準的に提供している機能だけでなく、カスタムオブジェクトと呼ばれる各利用企業が独自に管理したい業務のデータや画面を非常に簡単に追加できます。

一方で、その柔軟性の高さゆえ、最初からいくつもカスタムオブジェクトを追加して、結果としてオブジェクト間のデータの整合性を保つための二重管理や追加の入力業務、あるいは追加の設定作業が発生し、運用面、実装面で手間がかかるということもよく聞くお話です。

標準オブジェクトにこだわるとは?

Salesforceはいくつもの標準オブジェクトを提供していますが、カスタムオブジェクトを柔軟に追加できるからこそ、見落とされている機能もあります。現行業務と標準オブジェクトが持つ機能の適合性を把握した上で、できる限り標準オブジェクトに寄せた運用の実現性を追求していくことが、システム管理者の腕の見せ所で、まさに標準オブジェクトへのこだわりと言えます。
標準オブジェクトを活用することで下記のようなメリットが考えられます。

  • Salesforceの年3回のバージョンアップの恩恵を最大限受けられる

  • 画面上の機能やオブジェクト間のデータの整合性を保つ機能などが最初から備わっており、余計な設定や実装が不要で結果として運用上のコスト削減につながる

  • 業務の拡張や変更があっても、標準機能で用意されている設定変更で対応できる可能性があり、拡張性が高い

primeNumberでのSalesforce活用

ここまでは一般的なSalesforceのお話をしてきましたが、primeNumberでの具体的な活用に内容を移していきます。
まずオブジェクト構成の全体像は下図になります。
グレーの箱が標準オブジェクトで、黄色の箱がカスタムオブジェクトです。

利用している標準オブジェクト

標準オブジェクトとその使い方についても紹介します。

  • リード

    • trocco®の資料請求、トライアル申し込みなどの問い合わせのあった方々や、セミナー参加者を管理

  • キャンペーン+キャンペーンメンバー

    • 問い合わせの種別やセミナー、外部イベントなどのマーケティング施策とその履歴を管理

  • 取引先

    • trocco®ビジネスに関わる顧客やパートナー企業を管理

  • 取引先責任者

    • リードから商談化した際の上記取引先に所属される顧客担当者や受領した名刺情報を管理

  • 商談+商談商品

    • trocco®の商談状況を管理

    • trocco®のどのプランでどのオプションを提案しているかは商談商品で管理

  • 見積+見積品目

    • 顧客に提示するtrocco®の見積を管理

  • 商品+価格表

    • trocco®のプランやオプション機能の価格を管理

  • 契約

    • 顧客やパートナー企業との契約を管理(秘密保持契約、業務委託基本契約など)

  • ケース

    • trocco®に関わる機能質問やお問い合わせとその対応状況を管理

このようにSalesCoudで提供されている標準オブジェクトは、ほとんど利用していると言えます。

標準機能を活用することで、例えば、複数セミナーに参加したリードの履歴(キャンペーンメンバー)を、商談化した際にも取引先責任者に自動的に移行して履歴を管理できたり、商談から見積を作成する際に品目情報を引き継いで作成したり、締結が完了した契約情報を画面から更新できないようにロックする、といったことが、何か設定を追加することなく実現できます。

trocco®以外の事業にも適用を拡大

当社では、trocco®以外にデータ活用の環境構築やワークショップなどのソリューション事業も行っており、その管理も下記のようにSalesforce上での実装を進めています。
標準オブジェクトを活用することで、別事業への拡張もスムーズに実現できます。

  • 商談のレコードタイプをtrocco®、ソリューションと分けて管理

  • 商品、価格表にソリューション用の品目を追加

  • 将来的には、注文オブジェクトを受注管理に利用予定

そうはいっても標準オブジェクトだけでは難しい点も

もちろん、標準オブジェクトだけでは対応ができないこともあり、当社でもSaaSビジネスならではの管理をするためにカスタムオブジェクトを追加しています。
また、商談から見積を作成する際にも、実際にはカスタム項目があるため、Salesforceのフローによる自動化機能を追加して対応をしています。

大事なのは、最初からカスタムオブジェクトありきで設計するのではなく、標準オブジェクトでギャップがある点を補うように追加していくのが、結果として運用を効率的にできるポイントになると考えています。

SaaSビジネスでSalesforceを活用するために

私の個人的見解ではありますが、SalesforceはどちらかというとSIのようなプロジェクト型ビジネスの営業支援に向いていて、SaaSビジネスへ適用する場合は、その企業のプロダクト特性や計数管理に合わせた工夫をすることで、さらに活用しやすいものになると感じています。

SaaSビジネスはサブスクリプション型、つまり継続して売上が発生し、アップセルを通じて顧客毎のLTV(顧客生涯価値)を最大化するビジネスです。
となると、年月や四半期といった期間で区切った売上がいくらになるのかという管理が必要になります。

Salesforceでも商談商品に商品スケジュールというオブジェクト、機能がありますが、画面上の自由度や柔軟性の低さから当社の管理には合いませんでした。
そこで当社では、月別売上というカスタムオブジェクトを追加し、どの顧客で、いつ、どの品目の売上がいくらあるのかを管理できるようにし、ある時点でのMRRだけでなく、所定の期間の売上総額がわかるようにしています。

また、SaaSビジネスの契約は1回で終わりではなく、アップセルの契約が複数発生することもあります。そのために、「troccoアカウント」、「有償契約」の2つのカスタムオブジェクトを追加して、trocco®の契約の主体であるアカウントに関する情報と、契約上の新規、アップセルなどの申込の履歴を管理できるようにしています。

これらの管理の詳細については、また別の機会に紹介できればと思います。

おわりに

Salesforceは多くの企業で利用され、営業支援やカスタマーサポートを中心に、幅広い業務領域で活用され効果を上げられているサービスです。
Salesforce管理者の視点では、その機能を最大限に活用し、無駄なく効果的な実装と運用を目指すことが、企業全体の投資対効果の最大化につながります。さらには自身の技術的なスキルを向上させるだけでなく、業務設計やユーザとの調整、折衝といったビジネススキルを向上させることにもつながると考えています。
primeNumberのSalesOpsとして、標準オブジェクトへのこだわりを持ち続けたいと思います。

現在はSalesOpsのポジションは募集していませんが、弊社のような企業で働きたいと思った方は、ぜひカジュアル面談からでもお話ください。

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