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『1964/あらきなおみ』について。

『1964/あらきなおみ』

あらきなおみ、26年ぶりのソロ・アルバムがリリースされる。
自分にとっての音楽家『あらきなおみ』は優れたベーシスト(タイム感は国内有数だと理解しています)でもあるのと同時に、いや、それ以上に素晴らしいシンガー・ソングライターであると思っている。

ニューアルバム『1964/あらきなおみ』に収録された全6曲。
厳選されたであろうそれぞれの楽曲には、確かなる技術を持った演奏家と編曲家によって深度の深い音楽的な達成があり、多彩な音楽の豊かさを味わうことが出来る。が、前提として素晴らしいアレンジや優れた演奏があっても「楽曲自体」の質を変えることはできない。
平凡な旋律(メロディ)はどんな和音を施して演奏をしてみても、その印象を変えることはないのである。

「私にとって曲を作ることは常に最大の喜びであり、止むことのない情熱です。」プレスリリースであらき氏によって書かれたこの言葉は「素晴らしい曲を書くことが出来る、その可能性を信じている」という証明でもある。
世の中には素晴らしい楽曲があること、そして、それを自分の手で生み出す可能性があることを、あらきさんは「知っている」のである。

あらきさんのファーストアルバムがリリースされていた過去、普段はあまり通うことがないライブハウスに通っていた。
あらきなおみさんのライブだけは見逃したくない、と思ったからだ。
当時から演奏される楽曲、すべてが(素晴らしい曲)で、優れた演奏家の手によってそれを目の前で聴けるからだ。
あらきなおみさんが作る楽曲には自分の中に響く「素晴らしい楽曲」の普遍的魅力があったからだ。
そこに妥協も編曲や演奏によって粉飾される曲もない。
ソングライターの情熱によって作られた比類なきメロディと歌詞と歌唱がそこにあった。ライブではそこにあらきさんによるベースプレイ、確かな伴奏者による演奏(ピアニストは当時、鶴来正基氏)が奏でられる。
自分が”聞いていたい音楽”がそこにはあったのである。

「26年ぶりのアルバム発売」最初はその報に驚きながらも、聴いた後には
「あらきさんが情熱を込めて作り続けている曲は、変わらぬ音楽の価値として今も自分の中で響く」それを改めて実感した。            その実感は音楽そのものへの愛情と言い換えることも出来る本質的な感触である。それがなくては「音楽を聴きも、作りもしない」からだ。

ニューアルバムでその本質を久々に実感させてくれたあらきなおみさんに感謝したい。おそらく自分以外の人にとってもその実感は通じるのではないか。必聴のアルバムである。

https://diskunion.net/jp/ct/detail/1008348352?fbclid=IwAR0SAFJDKQrOwdf0w7ZPI6nz87TwOcpEsRDeASCDtnrKyv_B9dsZ7bxROMI

宮崎貴士


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