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『銀の匙』の泉を求めて -中勘助先生の評伝のための基礎作業 (89) 漱石先生の手紙

 一年志願兵に応じた中先生が入営したのは12月1日。入営先は近衛歩兵第四連隊で、第六中隊第二内務班に配属されました。兵営での生活の様子は「兵営」という作品に描かれています。日付入りの日記風の随想記で、『菩提樹の蔭』に収録されました。最初の日付は明治44年2月11日。この日は紀元節でした。最後の日付は同4月9日で、「明後日から東京第一衛戍(えいじゅ)病院に入院するのだ」と記されています。病気になったのでした。入院中の消息は「衛戍病院」という作品になりました。これも『菩提樹の蔭』に収録されています。

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中勘助先生は『銀の匙』の作者として知られる詩人です。「銀の匙」に描かれた幼少時から昭和17年にいたるまでの生涯を克明に描きます。

●中勘助先生の評伝に寄せる 『銀の匙』で知られる中勘助先生の人生と文学は数学における岡潔先生の姿ととてもよく似ています。評伝の執筆が望まれ…

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