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DU(DだいたいUうんこ)薬

平成の頃は,「この抗生剤のMIC(最小発育濃度)はこんなに小さくて良く効くんです。使ってください。」とプロパーさんが貢ぎ物をくれました。セフゾン,メイアクトなどなど,炎症にセフェム内服ばかり処方しました。令和の時代,これは間違いだと言われています。

内服抗生剤の効果は,腸管吸収率(バイオアベイラビリティ)を考えなくてはいけません。吸収が良い内服抗生剤は,98%のクラビット(ニューキノロン),90%のケフレックス(第1世代セフェム),80%のサワシリン(ペニシリン)です。第3世代セフェムのセフゾンは25%,メイアクトは14%しか吸収されずに,便中排泄されます。口の悪い感染症の専門家は,これら経口セフェム薬をDU薬(DだいたいUうんこ薬)と呼んでいます。令和時代の病院では,これら経口内服薬はどんどん削除されています。

先日,市内の内科開業医から扁桃周囲膿瘍が紹介されてきました。7日前にある耳鼻科で2日間のみ第3世代セフェム内服が処方され,扁桃炎が悪化しました。内科の紹介状に「耳鼻科ではまだセフェムを,しかも2日だけ出すのですか。耐性菌作るだけでしょうが。」と書かれていましたので,「すみません」とお返事しました。私ではないですが。

私のお気に入りは,いわゆるオグサワ処方とケフレックスです。これは危ないと思う症例にはクラビット500です。

ここで疑問が残ります。急性中耳炎のガイドラインでは,第1選択にメイアクトが入っています。効果なければ倍量投与が可能です。腸管吸収率を考えると倍量くらい投与しないと効きません。小児科と並診した中耳炎の子供に,つい常用メイアクト処方してしまいました。すぐ小児科から電話が掛かってきました。「なんでメイアクト?」「すみませんガイドラインに入ってるんで」「あれって作成した教授が製菓会社からお金もらったからでしょ」。他科からみると,メイアクトがガイドラインに入っている耳鼻科は恥ずかしいそうです。ピボシキル基を有する経口第3世代セフェムは,重篤な低カルニチン血症を起こし,低血糖や痙攣が生じます。小児科では,今は第一選択しない薬のようです。同門会誌に販売元製薬会社が協賛していたらすみません。

補足:悪いのは第2-3世代の経口セフェムです。点滴セフェムは直接血管にいれるので,耐性菌の問題はありますが,今でも良く効きます。入院患者にはセフェム点滴します。

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