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気管切開のトラブル回避

気管切開をして自宅療養の相談が多いです。気管切開孔に肉芽ができて,カニューレが入りにくい。サイズをどんどん小さいものに交換してしまい,痰が詰まりやすい。近年は,在宅での気管カニューレ管理が多いようで,往診する内科の先生が,長期トラブルの対応に困っておられます。耳鼻科が窓口になって,以下の対応をすすめています。

1)入り口の肉芽は,こまめに10%硝酸銀塗布か電気メス焼灼後,リンデロンVG軟膏を塗って抑えます。

2)カニューレ先端気管内の肉芽は,長さの異なるカニューレを用意,交換日ごとに変更して,同じ場所にカニューレが当たらないようにします。今月は短いカニューレ,来月は長いカニューレ。当たる場所が異なると肉芽は増大しません。

3)気管切開術をする時は,皮膚から浅い位置,喉頭に近い上の方で開窓します。下の方で開けると皮膚から気管までが深く,肉芽が発生しやすいです。耳鼻科医師が手術をする時は,輪状軟骨摘出と皮膚気管縫合による気管皮膚瘻も作れます。

今でも,教科書には「輪状軟骨を損傷しないよう,喉頭から離れた低い位置で気管切開しなさい。」と記載があります。しかし最近になって,これは根拠のない間違いだったと分かりました。高い位置での気管切開,輪状軟骨を摘出しての気管切開の方が安全と訂正されました。

急性疾患や治療途中の気管切開で,すぐに閉鎖するのであれば,どの高さで開けても問題ありません。主治医の先生にお任せします。しかし今後,長期療養が必要になる神経難病,気管に及ぶ疾患の時は,ぜひ耳鼻科医師に依頼してください。数年たってもトラブルのない気管切開を工夫します。

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