耳鼻科のネブライザーは何のため?
毎日やらなくては効果がない
薬液を鼻の隅々まで届けるネブライザー。効果があるのは分かっています。2010年の学会シンポジウムで明らかになったのは、
「やるなら治るまで、毎日やらねばならない」。
効果が続くのは、数時間だからです。現実的ではありません。毎日、混んでいる耳鼻科に通院することは不可能です。しかも、アンケートで18%の患者は、効果を感じていないのに、「次に受診してもネブライザーをするか?」の問いに、42%が「どちらでもよい、医師に任せる」の回答でした。患者さんは、実際には鼻の薬が欲しいだけで。でも、診察を受けないと処方してくれないから、先生のいいなりになっている実態です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/orltokyo/53/Supplement2/53_Supplement2_s59/_pdf
シンポジストの先生の提言は、「ネブライザーは医院が患者に器械を貸し出して、自宅で治療してもらう。医院は毎月、指導管理料を算定すべき」でした。まだ実現していません。
クリニックの売り上げの1.7%
上の論文では、ネブライザーは売り上げの1.7%(薬剤が加わるから数%)で、そんなに売り上げに寄与していません。ネブライザーは1回120円です。しかし、副鼻腔自然口開大処置250点を上乗せして、なんとか370円にします。苦労の割に、先生に入ってくるお金が少ないので困りました。
超音波ネブライザー(オムロンなど喘息治療用)を使えば、240円になります。合計490円まで値上がりしました。これでなんとか採算が取れます。
タイトルの写真で、左の1人でする器械が超音波式です。新しくできた耳鼻科は、皆、これを使っています。初期投資が数万円と安いからです。昔からある古い耳鼻科では、右にある、に3人掛けのネブライザーです。250万円もします。どちらが効くのでしょう? 実は、昔ながらのネブライザーの方が効きます。理由は2つ。
霧の勢いが強い。ポンプで押すから鼻の奥まで届く。しかも、粒子径が、肺に行かない5μm程度(PM5.0程度)で具合が良い。超音波では、粒子径がPM3.0で、肺にまで届いて鼻は素通り。
熱がないので配合変化しない。超音波は、摩擦で温まって去痰剤が白濁しやすい。
分かっていても、安い器械で高く請求できる、超音波ネブライザーを導入する耳鼻科が多いです。
コロナでネブライザーをしなくなった
勤務先の病院は、コロナでネブライザーをやめました。その後も復活させません。理由は、2つ。
月に1度しか受診しない患者が多く、毎日しないと効果がないネブライザーは意味がない。
入院患者が200人以上いる病院では、ネブライザーは0円。専門用語でいうと、算定できないから。
コロナ前は、患者サービスでネブライザーをしていました。大病院で算定できないのは、再診料がクリニックより10円高いから。再診料に含まれると、お国は言います。本当は違います。厚生労働省の本音は、
「ネブライザーをするような軽症患者は、大病院に行かず、クリニックに行け」
お金取れないから、大病院としては、ネブライザー患者は来て欲しくありません。
「毎日、ネブライザーしに来られても、無料だから困ります(実際は再診料700円は払います)。うちは混んでるからねえ。開業医に行ってね。」
コロナの飛沫問題で、ネブライザー中止。前からやめたかったネブライザー。洗浄、準備、看護師さんの手間がかかるネブライザー。でも無料のネブライザー。もう復活できません。
クリニックの本音も外来管理加算520円のほうがいいなあ
開業医では、いろいろ話を聞いてくれて(聞いてくれない先生もいるけど)、治療方針を説明してくれて、薬の処方箋を書いてくれます。意外に手間がかかるので、いろいろ話を聞いた時は、520円の管理料が、再診料690円に上乗せされます。
しかし、この加算は、処置や治療をしない日で、患者さんの訴えをよく聞いて、よく説明して初めて算定できます。処置をすると請求できません。副鼻腔自然口開大処置もして超音波ネブライザーして490円よりも、話だけ聞いた520円の日のほうが儲かるのです。先生は、苦労して処置するより、話だけ聞く方を選びますね。
だから、ネブライザーしても、鼻の治療処置はしないで、520点だけ請求するクリニックも多いです。この場合、ネブライザーは無料として、領収書に記載されていません。
鼻の処置はあえてしないで、ネブライザーだけするのって、医学的にはどうかなあと思います。ネブライザーの効果を最大に引き出すには、両鼻に粘膜収縮剤(ボスミン)を浸したガーゼを詰めて10分待ち、抜いてから鼻汁をよく吸引して、最後にネブライザーします。1人に15分はかかるはずです。実際は、どこのクリニックもそんなに丁寧にネブライザーをしていません。
患者さんのため? パフォーマンス? 効果あるのは分かっていても、正しい治療になっていない、とんでも医療?
この記事は、整形外科で無駄な医療が多いと書いているNoteの他の記事にインスパイアされました。耳鼻科でも無駄な医療が多いです。
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