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同じ診療をして、開業医と大病院ではどちらが安いでしょう? 実は、大病院の方が安いです。

「先生の病院で診てもらう時と、開業医に診てもらう時と、支払う金額が違うのですが、なぜでしょう。」この患者さんは、うちの病院(400床以上の大病院)には3ヶ月に1度だけ受診します。普段は、近くの開業医に通っています。

開業医では、アレルギー性鼻炎の薬をもらいます。大病院では、鼻の通りをよくする手術をしたので、術後の傷を見ています。大病院に来た時は、ついでに開業医と同じ薬を出してあげます。鼻を見て、処方をして、開業医も大病院も、医師がしていることは同じです。でも、支払う金額が違うのです。

診療報酬の点数を見てみましょう

開業医の診療明細を見ると、再診料74点+外来管理加算52点=126点の請求です。
大病院では、再診料74点のみの請求です。

医療保険は1点を10円として換算するので、開業医には1260円、大病院には740円の収入があります。患者さんは健康保険を使って、若い人は3割の金額を窓口で支払います。若い人なら、開業医では378円、大病院には222円になので、開業医では156円余計に払います。これはなぜでしょう。

同じ診療をしても、大病院は外来管理加算を請求できないから、その分だけ安いのです。患者さんからすると、大病院の方がお得です。

外来管理加算と特定疾患指導管理料

まだ耳鼻科は良い方です。内科になると、さらに特定疾患指導管理料225点が加わって、開業医では普通に診察を受けるだけで350点(3500円)も余計にかかります。大病院では、各種手当加算がないので、支払いは再診料の74点(740円)のみです。大病院の方が、お得です。詳しくは、以下のリンクを見てください。

安い大病院は困って、患者さん来ないでください。

患者さんは安くて良いですが、大病院は儲かりません。これは厚生省の思惑なのです。「大病院は、手術や検査の高度医療をして、終わったらすぐ開業医に戻しましょう。」大病院と開業医の役割分担を目指すため、大病院の診察料金を著しく減らしました。実際、740円で薬だけ処方する簡単な患者を診ていたら、大病院は収入が減って大赤字です。重症患者は来てください。軽症患者は来ないでください。反対に、処方だけで3500円も儲かる開業医は、どんどん軽症患者に来てもらいたいです。重症は来ないで、軽症だけ来て。大病院の院長は、「再診だけの患者を診ていたら赤字になるから、どんどん開業医に戻しなさい。救急患者は受け入れなさい。」と言います。こうして、患者は開業医に帰ってゆきます。

医者の本音は、大病院でも患者を診たいけど

自分で治した患者は、自分で診てゆきたいです。しかし「再診患者を減らせ」という病院長からの命令のために、泣く泣く切ります。診療報酬の操作をした国に踊らされています。どのくらいの患者を開業医に戻したのか(逆紹介率)、計算しています。率が低いと、それだけ赤字が増すから、病院長から指導されます。私は悪い制度だと思っているので、指導されても無視しますが、私の給料も上がりません。開業医が儲かるように、後ろで悪い力(医師会)も動いているのでしょう。

診療報酬で手綱を引いている厚生労働省

この料金になったのは、患者の大病院志向のせいです。「開業医より、最新の医療機器と、若くて新しい知識を持った大病院の医師に診てもらいたい。」大病院に患者が集まってしまいました。まず国は、紹介状がないと大病院にかかれなくしました。患者に制約をつけたのです。次に、再診料を安くしました。大病院から、軽症患者を吐き出させたのです。我々、医者も患者も、まんまと国の思惑に乗せられています。さすが東京大学出身の官僚は、賢いなと思います。




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