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カセットテープ

 旦那の実家の掃除の手伝いにやってきた。

 随分前に住む者をなくした古い家屋は廃屋化が進んでおり、このたび取り壊しが決定したため家捜しをする事となったのである。

「何これ…昭和?!」
「ちょっと待って、ヤバイ、窓開けて、窓!」

 人が住まなくなって三年が経過した家の中には、信じられない品が溢れていた。

 賞味期限を30年以上過ぎた缶詰、開けた瞬間に命の終わりを確信した冷蔵庫、明らかにやばそうな薬瓶、手の平サイズに縮小したスイカ、ざんばら頭の日本人形、触った瞬間に崩壊する布団等々…。

「ダメだ…下手に手出しをしたら命が失われる!貴重品を探すに留めて、雑品はすべて廃棄しよう!」

 ホコリと激臭でしぱしぱする目をパチパチしながら旦那に提案する。

「ええー!売れるかもしれないのに?」
「…絶対に売れん!」

 幼少期に過ごした我が家という欲目があるのか、旦那は現実を見ようとしない。リビングに散らかっている物を一つ一つ手に取ってはああだこうだと言いつつゴミ袋に突っ込んでいるが…このスピードで解体業者が入る明後日までに片付くわけがない。

 怒鳴り声の1つでもあげたいところだが、喧嘩をして作業が滞る事があってはならないので、ぐっと堪えて、進言してみる。

「要る物だけ持って行こうよ。欲しい物を先に持ち出さないと、売れそうだと踏んだ売れない物しか持ち出せずに君の宝物はショベルカーに粉砕されるけどイイの!」

「それは困る!よし、二階行こう!俺の部屋!」

 旦那が子供時代に過ごした部屋に向かい、お宝を探しては車に積んでという作業を繰り返す。

 卒業アルバムにファミコンカセット、煤けたぬいぐるみにCD…大方運び出したところで、テープの伸びたカセットテープを発見した。

「何これ!巻き取ったら再生できるかも!」

 旦那はぐちゃぐちゃになっているカセットテープを手に取り、転がっている鉛筆でくるくると巻き始めた。…忙しいのに!

「よーし、巻き終わった!再生するぞ!」

 巻き取ったカセットテープをデッキに入れて再生してみたが、特に何も音声は入っていない。

「何も入ってないじゃない!もう捨てるよ!」
「なんだあ、つまんないの!」

 荷物を車に積み込みに行った旦那を見送り、カセットデッキの再生ボタンを止めようと手を伸ばした時。

『すてちゃだめ』

 …捨てちゃダメと言われたら、このまま古い家屋に置き去りにするしかない。

 怪しいカセットテープは三日後、瓦礫の下に埋もれたのであった。


未使用のカセットテープを200本捨てたことあるよwww
買い溜め、恐ろしいねー!!


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たかさば
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