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料理男子

 ……今日の晩御飯は、ミートソースにしようかな。
 さあ、準備をしますかね。

 僕は、料理男子。

 素早く着替えて手を洗い、エプロンを身につけ、調理器具を定位置にセット完了。

 取り出したる肉の塊。
 これを二本の包丁で、トントントントントントントントン…。
 とことん叩いて粗挽きのひき肉を作る。

 塊肉がだんだん崩れていくのが面白い。
 ただただ無心で、大きな塊肉をトントントントン叩いていく。

 肉の旨味が凝縮するように。
 固い肉が柔らかくなるように。
 ジューシーさを損なわないように。

 丁寧に、丁寧に叩いていく。

 

 ……よし、これぐらいでいいだろう。

 ひき肉を炒めて味付けをし。
 トマトを投入して煮込んで。
 茹でたパスタに絡めて…ハイ出来上がり!!

 僕の料理はめちゃくちゃうまい!!
 今日も大成功だ。

 ごちそうさま!!



 ……今日の晩御飯は、ミルフィーユ鍋にしようかな。
 さあ、準備、準備。

 僕は、料理男子。

 素材を生かして、美味しいご飯を作るぞ!
 裏の畑でとれた白菜がいい感じに育っていたから、それを使ってあっさりとしたお出汁で煮よう。

 取り出したる肉の塊。
 ピカピカに研いだ包丁で薄く削いでと。
 塊肉がペラペラになっていくのが面白い。

 ただただ無心で、大きな塊肉を薄切りにしていく。

 肉の旨味を損なわないように。
 固い肉が柔らかくなるように。
 ジューシーさが失われないように。

 丁寧に、丁寧に切っていく。

 

 ……よし、これぐらいでいいだろう。

 肉と白菜を重ねて鍋に並べる。
 出汁をかけてコトコト煮込む。

 クタッとなったところで出来上がり。

 このシンプルな味がうまいんだ!!
 この繊細な味を出せるのは僕ぐらいだろう。

 今日も大成功だ。

 ごちそうさま!!



 ……今日は、角煮を作ろう。
 さあ、準備、準備。

 僕は、料理男子。

 今日も美味しいご飯を作って、腹いっぱいになるまで食べるぞ!
 昨日はあっさりだったから、今日はこってりと行きたいんだよね。

 取り出したる肉の塊。
 適度な大きさにカットして、ドボンと寸胴に入れて下茹でをする。

 脂がぎらぎらと浮いてグルグル回っているのが面白い。
 ただただ無心で、丁寧に、丁寧にお玉でアクをすくう。
 調味料を入れた圧力鍋に移して、トロトロになるまで煮込む。

 肉の旨味が融合中。
 固い肉が柔らかく変容中。
 ジューシーさが増量中。

 ……よし、これぐらいでいいだろう。

 圧力鍋のピンが引っ込んだら出来上がり。
 濃厚でこってりとした甘さがたまらない。
 文明の利器はすごいなあ、圧力鍋様様だ。

 今日も大成功だ。

 ごちそうさま!!


 

 ……今日は、生姜焼きを作ろうかな。
 そろそろしっかりと味付け香り付けをした方が良いからね。
 さあ、準備だ、準備だ。

 僕は、料理男子。

 今日も美味しく調理して、最後まで食べ切るぞ!

 取り出したる肉の塊。
 少し厚めに薄切りにして、柔らかくなるようにハンマーでよく叩いてと。
 脂を引いたフライパンで裏表を香ばしく焼いて…はは、みるみる肉が縮むのが面白い。

 特製しょうがダレをからめて、千切りキャベツがこんもり盛られた皿にのせる。
 裏のおばあちゃんにもらった大根をすりおろし、タレまみれの肉にちょこんと載せたら完成だ!

 大根おろしは消化を促す。
 しょうがは食欲を増進させる。
 キャベツは胃もたれを解消してくれる。
 バランスの取れたいい晩飯になった!

 今日も大満足だ。

 ごちそうさま!!



 ……今日は何を作ろうか。
 肉が黒くなってきたから、そろそろ食べきってしまわなければいけないな。

 僕は料理男子。

 消費期限ぎりぎりの食材もおいしく調理してやるぞ!

 よし、ハンバーグを作ることにしよう。
 玉ねぎをたっぷり入れれば 匂いも気にならないからね。

 取り出したる肉の塊。
 これを二本の包丁でトントントントントントントントン…。
 とことん叩いてひき肉を作る。

 塊肉がボロボロ崩れていくのが面白い。
 ただただ無心で、大きな塊肉をトントントントン叩いていく。

 成形した時形が崩れないよう、小麦粉を少し多めにした方がいいな。
 塩多めで粘りを出してと。
 ニンニク多め、ナツメグに黒コショウに豆乳…。

 並大抵の人では真似ができない、スペシャルな味。
 トロリとろける、ジューシーでコクのある危険な食感。

 よかった、最後まで美味しく完食することができた。
 さすが料理男子だ、食材を無駄なく使い切るこのテクニック!

 今日も大満足だ。

 ごちそうさま!!



 ……肉がなくなってしまった。
 どこかで調達をしなければいけないな。

 よし、買い物に出かけよう。


「え、マジで!料理男子なの?じゃあ美味しいもの食べさせてよ!!」

 料理男子はモテるんだよね!


「僕のご飯が食べたいの?じゃあおいでよ、美味しい料理、作るから!」

 

 ふくらはぎのあたりがやや発達していて…なかなかそそる。
 手をつないだら…もちもちしていて、思わずにっこり微笑んだ。


「ヤバーイ、食べ過ぎて太っちゃったらどうしよう!!」

 それはちょっと…困るなあ。


 僕は料理男子だからね、お肉の状態には…うるさいんだ。

 小柄でもいいから、きゅっと引き締まった体が好みなんだ。

 ぶよぶよした肉は、噛み応えが無くてつまんないんだよね。


「ね、何が食べたい?何でも作るよ!」

「うーん、じゃあね、ローストビーフ食べたいな!!真っ赤な血の滴るレアな奴!!おいしいワインも用意してぇ~・・・」

 ローストビーフか…いいね!それ、採用!!

 新鮮なお肉を調味料で揉み込んで、表面を焼いてしばらく置いて…極上ダレを作って…。
 前に作った時は本当においしくて、思わず二度も狩りに行くほどハマって…。

 ああ!!思い出すだけで口の中によだれが!!

 濃厚でジューシー、香り高い肉の旨味、甘み、待ったり国のある肉本来のあの味!!

 ぐぐ、ぐぅう~、きゅる、きゅぅ~!!


「やだぁ~♡おなか空いてるの?」


 僕は……新鮮な食材を目の前にして。

 盛大に、腹を鳴らしてしまい。


「うん、僕、もう…おなか、ペコペコ!!」


 ごくりと……つばを、飲み込んだ。


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