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お年玉

「ねえねえ!ゆうちゃんとめいちゃんにお年玉渡そうと思うんだけどさあ!いくら渡したらいいと思う!!どっちのポチ袋がいいかなあ、似顔絵描こうと思うんだけど多分似ないからさあ、お母さん描いて!このソフトクリームのにおいのペンで描いてね!あとプチシールなんかちょうだい!」

 正月早々、娘が何やらはしゃいでいらっしゃる。

 社会人一年目の彼女は、年の離れたいとこたちにお年玉を渡す気満々なのだ!!年の離れた弟にお年玉を渡し、ずいぶん機嫌がよかった元日の朝を思い出す。なんでも、喜ぶ顔をみるのが嬉しくてたまらないんだってさ。

 ……なんていい人なんだ、さすが私の子だ!!ちょっとテンションがあがってきたので、少々力をいれて似顔絵をですね、描かせていただきましてですね!

「額面はまあ、キモチでいいんじゃないの!」
「でもさすがに四年生にさあ、五百円とかマズいでしょ!!」

「いや…そもそももらえるとは思ってないんじゃ?だっていとこ同士だよ、アンタ去年まで一緒になってお年玉貰ってたじゃん、なのにいきなりあげる側になるってなんか変っていうか。いっしょにカードゲームしてあげる券とかでいいじゃん。」
「なにそれ!働いたらおこづかいあげる側に回るべきでしょ!残り少ない学生生活を潤してあげたいし!!せっかくかわいいポチ袋も用意したしさあ、うーん、どうしよう!」

 財布の中身を見ながらうんうん唸っている…ちょっと待て、それは万札!!

「ちょっと!!あんた親よりも高い値段入れないでよ!!なんか私がしょぼく見える!!も~、五百円でいいよ、子供がそんなにはりきらなくてよし!!」
「働いてるし子供じゃないやい!大人じゃん!万札しか持ってないもん、ちょうど二枚あるし!!!」

 娘が太っ腹すぎて怖いんですけど!!!

「崩せばいいじゃん!そんな大金あげたら清君に怒られる!!」

 清君というのは私の弟だ。この人はわりかし金銭について厳しい事を言うタイプの人で…決まったお小遣いを渡さず済ませている我が家とは真反対の位置にいるような人でしてね。一昨年、財布の中に入ってる小銭を全部ポチ袋に入れて姪っ子に渡したところ、常識を考えろと怒られてしまったのですよ。五百円玉が結構入ってたみたいで…姉妹間でいさかいが新年早々起きてしまったらしくてですね。妹の方はお札で折り紙してポチ袋に入れてさあ、遊んでんじゃねえよってこっぴどく…うん、私がはしゃぎ過ぎてたわ。

「じゃあ誰か両替お願いします!」
「あたしゃお年玉貧乏で替える金がないよ…(。>д<)」

 毎年この時期はですね、大概財布の中身がえらく寂しいことにですね。

「じゃあ、あたしがお母さんにお年玉あげるよ!だから千円二枚ちょうだい!お父さんも!」

 一万円札を差し出す娘!

「そんないいよ!も~、じゃあなけなしの四千円あげるから、これでなんとか…。」

 子供からお年玉?!そんなんあかんわ!私が財布の中身を差し出すと。

「お父さんね、みんなにお年玉あげすぎてすっからかんなの、だからお札持ってないよぅ…おかげでおいしいもの食べに行けなくて…ぐすん(。>д<)」
「正月早々かわいそう!じゃあお父さんは千円いいよ!そのままあげる!!」
「僕がおごるから食べに行こうか?」

 ……ちょ!

 正月早々、おおウソついていけしゃあしゃあと被害者面する、恥知らずの常識を微塵も持たない大人がここに!

「ぜんぜんかわいそうじゃない!あげる必要ない!さんざんつきたてのもちを食いまくってご近所で高いおせちつまんで腐りかけのみかんわんさかもらってきたくせになにを言う!あんたはもう食うな!出掛けるな!家でおとなしくしてなよ!」
「わーい♥️お姉ちゃんにお年玉もらった~!!も~、お母さん正月早々怒っちゃダメだよ~、やったー!デコレーションケーキ買ってこよ♥️お寿司も食べたいな!一緒に買い物いく人ー!」
「なにそれ!?さっそく使うの?!いいけど!桃のお酒欲しいし一緒に行く!!そうだ、カクテル福袋かお!」
「生しいたけ買いたい。」

どうやら今年も、エンゲル係数が高いままの家族がですね。

どこかにいるという、お話ですよ……。


今年は五百円玉をポチ袋にみっちり詰めて渡しましたです(*'ω'*)


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