はつしろび
※こちら11月に書かれたものになります※
朝六時、私はウォーキングに行くため、いつものように玄関を出た。
あたりはまだ薄暗く、日が出ていない。
……ずいぶん日が昇るのが遅くなったなあ。
……まだ遅くなるんだよなあ。
……ずいぶん寒くなったなあ。
……そろそろかな?
日差しを浴びていない、夜の冷えた空気を吸い込み、大きく口を開けて、はあと息を、吐く。
……あ、白い。
昨日の朝までは白くなかったから…今日が、はつしろび(初白日)だ。
いつの頃からか、私の中に、秋と冬の切り替わる日として「初白日」なるものが存在している。
朝一番に吐いた息が白くなったら、その日から季節は冬となるのだ。
初白日を確認した日から、私は冬という季節を過ごすようになるのだ。
もう何年も前から繰り返されている、季節の変わり目を決める大切な…恒例行事。初白日を迎えたら、こたつも出すし、電気毛布も用意する。
しまい損ねていた扇風機をようやく収納するのも、このタイミングだ。
忙しさに感けてなあなあになっていた家事を一掃する、非常に重要な儀式になっているのだ。
さて、今年は何から手を付けていこうか……。
ぼちぼち夏の名残の残る秋の生活を、いかに手際よく冬仕様に変えていくべきか。薄暗い道を歩きつつ、試行錯誤、試行錯誤……。
冷蔵庫の中のかき氷のシロップを消費せねばなるまい、冷凍庫の中のかき氷系のアイスも食べておきたい、半そでのTシャツを長袖に変えねば、靴下をもこもこのものに入れ替えないと、ジャージも厚手のものに変えておかないとな、半纏出さなきゃ、ムートンブーツ買いに行かないと、ニット帽出しておこう、そういえばカイロをまだ買っていないな、灯油買いに行かなきゃ、夏用のクールタイプの温泉のもと使い切っておかないと、パジャマ用の着ぐるみまだ着れたっけ、そうだ旦那のダウンジャケット去年破れたんだった、5Lじゃ小さいって言ってたな、どこかで6Lサイズのものを探してこないといけないんだった、そろそろ息子の上着も買い直してあげたいな、娘のセーターワンピの毛玉も取っておかないと、そういや毛玉取り器が壊れていたような、そういえば温かいお茶のティーバッグ買ってないな、そうだコーヒーもなくなっていた、そういえばカルーアが残ってたな、今日全部飲んじゃおう、日本酒もうまい季節になった事だ、よし今日は大きな酒屋に行っていろいろ見繕ってくるか、ぐふふ!!
「おはよう!今日はちょっと寒いね!」
「おはようございます~!寒いよ!今日ね、朝息が白かったもん!」
「ああそうなんだ、気が付かなかったよ!」
夢中になって計画を練っていたら、いつの間にかウォーキングコースになっている大きな公園についていた。ラジオ体操仲間のおばちゃんおじちゃんたちに声をかけられて、あわてて視線を、上にっ!!
……ああ、いつの間にか朝日が昇り始めている。
真上の空にはまだ夜の名残が広がっているけれど、遠くの空は薄ピンク色に染まっている。今日はいい日の出を見ることができそうだ。
……よーし、今日は初白日だし、ちょっといい場所で朝日を拝ませてもらうか!
私は公園で一番きれいな朝陽が望める小高い丘へと、向かったのであった。
皆さんは冬の始まりって気にしたりします?
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