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ホラー【怖いのも怖くないのも】

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ホラーもののお話をまとめています。震えあがるような怖いモノからお笑い系まで幅広く取り揃えております。こちらに置いてあるものはすべて無料記事です。ここにある作品で解説が欲しいなと思… もっと読む
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記事一覧

カツラ

 今の時刻、およそ6:15…、九時間に及ぶ勤務を終えた俺は、朝日に照らされるアスファルトの上をいつもよりいくぶん軽やかな足取りで進み…住んで八年目になるアパートへと向かっていた。  …今日はいい感じに廃棄の弁当がもらえたんだよな。カツカレーに赤飯おにぎりが二つ、ツイストドーナツ3個入り。昨日は硬くなった唐揚げ棒一本だったから、喜びが大きくてね。  上機嫌で人けのない道を歩きながら、時折進行方向に顔を出す太陽の光の眩しさを手のひらで遮る。…ずいぶん日の出が早くなったなあ、つい

スキキライ

彼氏が好き好き、大好き! 優しい声 かっこいい顔 高い背 私をじっと見つめてくれること 頭ポンポンしてくれること 数学を教えてくれること おいしいカップ麺作ってくれること 歌がうまいこと 私をかわいいって言ってくれること いつも手をつないでくれること 彼氏が、大好き! いつも優しい声 いつ見てもかっこいい顔 高すぎる背 私をじっと見つめてくれるもの 頭ポンポンしてくれるもの 難しい数学の問題を解いてくれるんだよね おいしいカップ麺作ってくれるのよね 歌がうますぎてうっと

ドア

 仕事を終え、コンビニでメシを買って帰宅しようとした俺は、おかしなことに気が付いた。  いつも歩き慣れている、歩道のど真ん中に……、ドアがある。  ……なんだ、これは。  アスファルトの上に、ドアだけが立っている。  ……テレビ番組の収録か?  辺りを見回すも…誰もいない。  とりあえず…避けるか。  ドアの横を通り、前に進む。  なんだ、スルーできるんじゃん…と思って、前を向くと。  ……少し離れた場所に、ドアがある。  ちょっと待て、ドアが…移動した?  

ハッピーボックス

 仕事を終え、コンビニでメシを買って帰宅した俺は、おかしなものがあるのを発見した。  ワンルームの、部屋のど真ん中に……、段ボール箱がある。  ……なんだ、これは。  宛名も、メモ書きもない。  ……母ちゃんが来たのか?  来るという話は聞いていないけどな。  とりあえず…開けるか。  ガムテープを剥がして、開けてみる。  ……段ボールが入っている。  壊れ物でも入っているのか?  近頃の梱包は無駄に厳重だからな……。  ガムテープを剥がして、開けてみる。  …

ばけもの

 わんわんはちいさないぬ  赤い月の昇った晩に、世界の狭間に生まれたいぬ  モコモコとした毛皮と、キラキラ光る目を持つ、かわいいいぬ  ちいさないぬは、小さな女の子と出会った  二人はいつも一緒  わんわんは小さな女の子のほっぺをぺろぺろとなめた  小さな女の子はわんわんの頭をぽんぽんした  ワンワンはちょっと大きくなった  小さな女の子より、大きくなった  ぼこぼこした体と、ギラギラ光る目を持つりりしい犬  りりしい犬は、小さな女の子と一緒にいた  二人はいつ

~あらすじ~ この星に暮らすのは、土と、緑と、獣。穏やかにただただ繰り返される、命の定律。しかし、その中に混じることのない、唯一の存在があった。 なぜ存在しているのか、なぜ律から外れているのか、なぜ、なぜ、なぜ…。 好奇心旺盛な土は、孤独な存在に質問をする。 交わされる意思、伝わる意志、そして、遺志。 やがて時は流れ、星の終わりが訪れた。 その時、唯一の存在が思ったこととは。 1,星に暮らすもの  ……広い宇宙の、とある銀河に、ありふれた星があった。  二つの燃える星

……ああ、青い。 ……ああ、青がある。 ……ああ、青でいいのに。 いつの間にか、赤くなった青を見て、ためいきが、こぼれる。 ……ああ、青かったな。 ……ああ、青が良かったな。 まだら色の空間を見上げて、青い空を思い出す。 ……ああ、青が遠い。 歪む光景を見て、自分のいた星を思い出す。 ……ああ、青は、どんな色だったかな。 ……ああ、青は、たしか。 海の色と、空の色。 ……ああ、青がいい。 ……ああ、青はいい。 海は青いもの。 空は青いもの。 空気は透明。 土

看板

 ……毎日通る道に、おかしな看板がある。  片側一車線のやや混みあう道路の、自転車専用車線横に並ぶ歩道に面した…美容院とキャバクラビルの間にある、少々錆の目立つ、看板。  建物の前にはやや広めの駐車場があり、敷地の境目として同じ大きさの看板が二枚、背中合わせで立てられている。駐車場に面した壁になっているのでどちらもよく目立ち、駅に向かう人も駅に到着して家に帰る人も必ず一度は見るであろう看板だ。  目につく位置に大きく店名が書かれており、宣伝効果は非常に高いと思われる。キ

出番

 ……私の出番が、いつまで経ってもやって来ない。  子供の頃は「みなこはさわっちゃだめ!アンタはこれ!」と我儘な姉に支配され。  学生時代は「生徒のくせに生意気を言うな!」と先生から咎められ。  思春期は「ザコなんだから大人しくしてなよ」とスクールカーストのトップに嘲笑され。  ナウでヤングな若者があふれる街に繰り出せば「ガキのくせにしゃしゃり出てくんなよ」と追い払われ。  社会に出てみれば「まだまだ若いな、常識が足りん!出直せ!」と相手にされず。  子どもを産んでみれば「

断水騒動

「水が出ない!!どうなっとるんだ!!!」 「…え?」  金曜の朝、自宅の家事を済ませて親の住むマンションに行くと、ドアを開けた瞬間に怒鳴り声が飛び掛かってきた。いきなり浴びせられた攻撃的な声に若干ひるみながら、とりあえず気の抜けた返事をしたのだが。 「何やっとるんだ!こんなんじゃ便所もいけんし手も洗えんわ!!」  神経質な母親は、予定外・予想外の出来事を嫌う。どう考えても、水が止まったのは私のせいではないのだが、突然のハプニングに怒りが収まらないらしく…私に当たり散ら

おふだ

 …どす黒い夕焼け空が、広がっている。  不気味で、何か良くない事が起きそうな…予感がする。  ああ…この手の予感は、よく当たるんだ。  …普段通りに錆サビだらけの階段を上り、自室ドアの前に立つ。  築35年、木造2階建て、5件並んだワンルームの…真ん中の部屋。  ああ…なにも、起きませんように。  …レトロなカギを差し込み、年季の入ったドアノブを回す。  木製の古ぼけたドアが、いつものように…ギィと音を鳴らす。  ああ…この部屋独特の、すえたニオイがする。  …

缶コーヒー

 加糖、微糖、ミルク入り、ブラック、オリジナルブレンド、スペシャルブレンド、プレミアム、赤いの、黒いの、金色に水色、虹色、小さいの、大きいの、細いの、太いの、その他もろもろ……。  甘いのにしようか、ブラックにしようか、まろやかなやつもいいな、たくさん飲みたいからでかいのにするか、蓋付きのやつにしておけば飲みきれなくても後で飲めるぞ、……いやまて、鮮度が落ちて味が落ちるくらいなら、小さいのを飲み切った方が良いのではあるまいか。  バラエティ豊かな缶コーヒーのラインナップに

優しい神さま

 ……神様というのは、本当にいるもんだなあとしみじみ思う。  俺は今までずっと、願いを叶えてもらってきた。  母ちゃんに怒られませんように。  先生に当てられませんように。  腹痛が収まりますように。  ごまかせますように。  バレませんように。  何度も……助かってきた。  めちゃめちゃ、やさしいなあと思う。  神様は、ほんの少し思い浮かべた願いを叶えてくれたのだ。  見られてませんように!  誰にも気づかれませんように!  このまま無事に終わりますように!

おばあちゃんが教えてくれた108の怪談…

私が小さいころお隣に住んでいたおばあちゃんは、いつも不思議なお話をしてくれました。童話でも昔話でもない、身近だけど聞いたことの無いお話で、子供だった私の中にじんわり浸透しました。 今でも私はおばあちゃんが教えてくれた事を時々思い出しながら、平凡に…生きています。 すべてを覚えているうちに文字にしておこうと思い、物語として公開する事にしました。全109話になります。 小説版はこちらにございます。 https://ncode.syosetu.com/n2027ig/ #女