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他人とのコミュニケーションのお話

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他人とかかわるお話をまとめています。有料記事は文末に作者による解説を付けています。解説部分は有料にしていますが、お話は最後まで無料で読めますのでご安心ください。
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記事一覧

美味いワイン

「すごく良いワインが手に入ったんだ。飲みに来ない?」  週末、ツレに誘われたオレは、冷蔵庫の中で干からびかけていたカマンベールチーズを持ちこんで飲み会に参加することにした。 「おっ、来た来た」 「うわ、シャレたもんツマミに持ってきててウケる!」 「来て早々だけど、亮くんってさあ、ちょっと良いワイン…開けたこと、ある?」  差し出されたのは、イタリアンファミレスで1000円で売っているような瓶ワイン。フタの部分がオシャレに針金だか金属だか木工用ボンドだかでガッツリ封をされ

寒い部屋

 ミユキのお父さんは暑がりです。  エアコンの温度はいつも16℃、お父さんと同じ部屋にいると寒くてたまりません。  そのせいで、ミユキは真夏なのにもこもこのパーカーの着用がかかせないのです。  凍えるほど寒い部屋の中で、お父さんは涼しい顔をしています。  少しくらいエアコンの温度をあげてもいいだろうと思って、ほんの2℃設定を変えただけで…、すぐに暑い暑いと騒ぎ出し、あっという間に部屋の中は凍える寒さに元通りになります。  お父さんがリビングのソファを占拠しているので、

花びん係

 あや子は、毎日がゆううつでたまりません。  なぜなら、花びん係になってしまったからです。  花びん係というのは、先生のつくえの上にある花びんの水を替える係の事です。  花びん係は、一番人気のない係でした。あや子は掲示板係がよかったのに、じゃんけんで負けてしまったのです。  あや子は、朝の会のはじまる前に、花びんを手洗い場に持って行って水の入れ替えをしなくてはいけません。火曜から金曜まで毎日です。それがいやでたまらないのです。  4年2組では、月曜日に担任のみやぎ先生が

なかなおり

ちいちゃんとけんかした だって、ちいちゃん…わたしのきいろいクレヨン、おったもん たいせつにしてたのに、いちばんはじめにつかったもん もういっしょにあそばないっていった いいもん、まあちゃんとあそぶから いいもん、こまちゃんとあそぶから いいもん、しんくんとあそぶから もうちいちゃんには、こえかけてあげないってきめた ひとりであそんでても、しーらない ひとりでないてても、しーらない えみちゃんとけんかした だって、えみちゃん…わたしのスケッチブック、よごしたもん

老人玉

街を飛び交う、危険な玉 どこからともなく飛んでくる、神出鬼没の恐ろしい玉    …ヒュンッ ―――アアア、むしゃくしゃするぅウウウウ!!!    …ヒュンッ ―――誰だ!!こんなごみの捨て方をしたやつは!!! 突然襲いかかる流れ弾を…華麗に避ける    …ヒュンッ ―――はあ?!何だって!!!    …ヒュンッ ―――どこ見とるんだ!! 勢い任せの乱暴な玉を、薄皮1枚でかわす    …ヒュンッ ―――おい!!店員はいないのか!!    …ヒュンッ

運を明け渡したかもしれない話

 ・・・俺の趣味は、小旅行。  勤めている会社が三連勤二連休と六連勤二連休の繰り返しになっているため、休日一日目は気分転換もかねてドライブに出かけるようにしている。単調作業の多い仕事のストレスを発散するのに…ぴったりなのだ。  地元の名産品を賞味したり絶景を眺める事は俺の中でルーティン化されたもので、欠かせない恒例行事のようなものになっている。安全運転を心がけつつのんびりとハンドルを握るのはわりと性に合っていて、下道を使って近隣の道の駅めぐりをしたり、高速道路に乗って遠く

魔王会

 ・・・ひんよよ、ひんよよ、ひんよよ・・・ぺぽっ!! 「ちーす!」 「どうも、どうもどうも」 「あ、こんにちはー!」 「・・・うす」 「……。」 「こんちは!!」 「失礼しマ~ス!」 「(頭下げて入室)」 「へいへい、失礼、失礼…」 「は、はじめまして、ええとー?! なんかいきなり、急にここに来ることになって、その、ええとー!!」 「あ、新人さんです? ようこそ魔王会へ!! この会は現代日本から異世界転移または異世界転生して魔王になった皆さんで集まって、不定期に開催され

スポンジ

 くしゅくしゅのふわふわ  もこもこのざりざり  むくむくのふにふに  新しいスポンジだしちゃった!  ピンクとオレンジの二層のスポンジ  ピンクはやわらかくてオレンジはゴワゴワ  くしゅくしゅのふわふわ  もこもこのざりざり  むくむくのふにふに  新しいスポンジでお皿を洗おう!  お水を出してスポンジに含ませて  オレンジのにおいの洗剤をのせて  くしゅくしゅのふわふわ  もこもこのざりざり  むくむくのふにふに  真っ白な泡が出てきた!  ピンクとオレン

恐ろしい隣人

 春、隣の部屋に住人が引っ越してきた。  挨拶は…ない。  一昔前は引っ越しの挨拶でミニタオルを配る人がぼちぼちいたが、最近はとんと見ない。  随分人間関係が希薄になったものだ。何かあった時…有事の際に慌てる事にならなければいいのだがと、いらぬ心配をしてしまう。  正直なところ…おかしなやつが越してきていないか、気になっている。  この世には、他人を思いやることのできない愚かな人間が少なくないのだ。  近隣住民で協力し合おうとしないマイペースな奴、騒音を撒き散らして

俺のゴールデンウィークが充実しすぎた…

 ゴールデンウィーク♪  ゴールデンウィーク♪  ヤッホーヤッホー!  今年もゴールデンウィークがやってきた!  俺にはいろいろ…やりたいことがある!!  のんびりするぞ!  楽しむぞ!  出かけるぞ!  食べるぞ!  歌うぞ!  踊るぞ!  泳ぐぞ!  まずは初日!  コンビニに行って腹ごしらえでもするか!  食料が無ければ体力が尽きてしまうからな!  とりあえず飯だ、メシメシ!!  目につくうまそうなもんを片っ端から買い込んで家に戻り、腹いっぱい食べたら…眠

私は運がいい

 …私には、昔から、微妙に助かる癖がある。  初めて『助かった』と、しみじみ思ったのは…高校を卒業した年の、秋。  そこそこ仲の良かった友人から化粧の仕方を教えてあげるよと言われて、喜んでお宅にお邪魔した時の事。  初めて訪ねた古くて大きなおうちには、バリバリに化粧をしたお姉さんと友人がいた。 「初めてのお化粧、不安でしょう?!今日はバッチリ学ぼうね!!」  化粧の経験のない私は、ばっちりメイクを施されてさんざんお世辞を言われ…すこぶる気分がよろしくなかった。  

ものもらい

 ……旦那の『ものもらい』がなおらない。  初めて…違和感に気が付いて以来、もう…何年だ?  いつまでたってもブクブク…じゃないぶよぶよ…でもない、ふとましい身体を揺らしながら、明らかにぷっくりと膨らんだ……。  ポケット!!! 『ものもらい』といえば、一般的には瞼が腫れるやつを思い浮かべることが多いと思われる。  いわゆる、『めばちこ』とか『めんぼ』とか呼ばれてるやつだ。  だがしかし!!  うちの旦那の場合、目元はわりかしシャープな感じに引き締まっているくせに、

ナツミカン

「ねーねー!!いーもんもらったー!!!」 「またもらってくる!!!」  花粉が猛威を振るい始めたとある日の夕方…、やけにつやつやとした顔で旦那が帰ってきたぞ!!  今日は新年度町内会役員の顔合わせと引継ぎだとかで、朝もはよからぱつんぱつんのスーツを着込んで出て行ったのだが…ムム、社会の窓が全開している、いや全壊してるじゃん!!くそう、ついにはじけたか……!!! 「なんかね、ナツミカンだってー!!去年の会計監査のリュウアン先生がね、庭に生えてたのをもいだから持ってってって

えびせんべいはとまらない

「お友達におみやげで頂いたんだけどね、ほら、アタシ歯がないもんだから!」 「いいんですか!!ありがとう!!」  思いがけず、ご近所さんからいい物を頂いた。  先日粗大ゴミを出す時にお手伝いをしたお礼だそうで……、めんどくさそうだしスルーしようと思ったけど、思い切って声かけてよかったー!!  ニッコリと手渡された紙袋を、のぞき込んでみる……。  透明な袋にみっちりと詰まっているのは…えびせん詰め合わせ!!  私、えびせん大好物なんだよね!!俄然テンションが上がる!!ヒャッ