マガジンのカバー画像

孤独もの

68
孤独な人が出てくるお話をまとめています。こちらに置いてあるものはすべて無料記事です。ここにある作品で解説が欲しいなと思われた方はリクエストしてください。1000文字程度の解説を付… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

知識欲の行方

知っていること 知らないこと 知りたいこと 知りたくないこと 知らされたこと 知らされたくなかったこと 知るべきこと 知らなくていいこと 知らせること 知らせてはいけないこと 知ってしまったこと 知ってはならないこと 知りたい欲と知りたくない欲 知りたい心が生まれる 知りたい気持ちがあふれる 知りたい衝動が抑えられない 知りたいのだと叫ぶ 知りたくない心が生まれる 知りたくない気持ちが胸の中で広がる 知りたくない拒絶でいっぱいになる 知りたくないのだと叫ぶ 知りた

ばけもの

 わんわんはちいさないぬ  赤い月の昇った晩に、世界の狭間に生まれたいぬ  モコモコとした毛皮と、キラキラ光る目を持つ、かわいいいぬ  ちいさないぬは、小さな女の子と出会った  二人はいつも一緒  わんわんは小さな女の子のほっぺをぺろぺろとなめた  小さな女の子はわんわんの頭をぽんぽんした  ワンワンはちょっと大きくなった  小さな女の子より、大きくなった  ぼこぼこした体と、ギラギラ光る目を持つりりしい犬  りりしい犬は、小さな女の子と一緒にいた  二人はいつ

~あらすじ~ この星に暮らすのは、土と、緑と、獣。穏やかにただただ繰り返される、命の定律。しかし、その中に混じることのない、唯一の存在があった。 なぜ存在しているのか、なぜ律から外れているのか、なぜ、なぜ、なぜ…。 好奇心旺盛な土は、孤独な存在に質問をする。 交わされる意思、伝わる意志、そして、遺志。 やがて時は流れ、星の終わりが訪れた。 その時、唯一の存在が思ったこととは。 1,星に暮らすもの  ……広い宇宙の、とある銀河に、ありふれた星があった。  二つの燃える星

……ああ、青い。 ……ああ、青がある。 ……ああ、青でいいのに。 いつの間にか、赤くなった青を見て、ためいきが、こぼれる。 ……ああ、青かったな。 ……ああ、青が良かったな。 まだら色の空間を見上げて、青い空を思い出す。 ……ああ、青が遠い。 歪む光景を見て、自分のいた星を思い出す。 ……ああ、青は、どんな色だったかな。 ……ああ、青は、たしか。 海の色と、空の色。 ……ああ、青がいい。 ……ああ、青はいい。 海は青いもの。 空は青いもの。 空気は透明。 土

出番

 ……私の出番が、いつまで経ってもやって来ない。  子供の頃は「みなこはさわっちゃだめ!アンタはこれ!」と我儘な姉に支配され。  学生時代は「生徒のくせに生意気を言うな!」と先生から咎められ。  思春期は「ザコなんだから大人しくしてなよ」とスクールカーストのトップに嘲笑され。  ナウでヤングな若者があふれる街に繰り出せば「ガキのくせにしゃしゃり出てくんなよ」と追い払われ。  社会に出てみれば「まだまだ若いな、常識が足りん!出直せ!」と相手にされず。  子どもを産んでみれば「

他人

 ……私の中に、他人が押し寄せる。  ―――食べたくないの、あまりおいしくなさそうだから。 「……でも、みんな美味しいって言っているよ?」  食べるのは私なのに、他人の嗜好が押し付けられる。  私がいらないと言っているのに、他人が絶賛しているからとねじ込んでくる。  ……私の中に、他人が介入する。  ―――これでいいの、私はこう書きたいの。 「……でも、こんなこと書いたらみんなに笑われるよ?」  これを書くと決めたのは私なのに、他人の感想が前提になる。  私がこ

おうち美術館

 ……殺風景な私の部屋に、大自然の息吹を感じる。  広い空の下で力強さを誇る、大木の勇姿。  目に鮮やかな、一枚一枚魂のこもった葉っぱ。  爽やかな風を感じさせる、一枚の油絵。  ……ああ、実に、いい。  実に素敵な絵だ。  椅子に座り、淹れたてのコーヒーを飲みながら…しみじみと鑑賞する。  ……思い切って借りて、良かった。  私が住む街の図書館には、絵画の貸し出しサービスがある。  市内に住む画家の直筆作品もあれば、有名な作品の複写品もあり、立派な書、大きな写

知らなかった、風景

 長く使っていた、座卓タイプのパソコンデスクを買い替える事にした。  弟が使っていたものをもらい受け、自分が使うようになって…かれこれ三年。  もともとかなり年季のはいったものだったこともあり、スライダーはぎこちなく稼働し、デスク面が湾曲している。  使おうと思えばまだ使えるのだが、このところ胡坐をかいてパソコン作業をしていると股関節のあたりが痛むようになってきたので、思い切ってチェアタイプのデスクを買う事に決めたのである。  デスクとチェアを組み立て、パソコンや周辺

笑顔

……私は、笑う くす、くす…… 穏やかに、ほんのりと ……わたしは、笑う ふふ、うふふ…… 嬉しそうに、優しげに ……ワタシは、笑う はは、あはは…… 朗らかに、気持ちよく ……あたしは、笑う キャハハ、ギャハハ…… 元気よく、大袈裟に みんなが笑う、楽しい空間 色んな人が、笑い合う場所 ……さて、ここでは、どの自分が最適かな? 秒で悩んで、秒で決断して 「あはは、おもしろ~い!フフ、キャハハ……!」 ……どうやら、選択を誤ったらしい 呆れ

おわらない、しごと

おわった、おわった しごとがおわった おわった、おわった、むつかしいしごとがおわった さあ、ひとやすみしよう さあ、ぼんやりしよう さあ、のんびりしよう ごろごろしてみる ごろ、ごろ、ごろ てんじょうがまわーる かべがまわーる めがまわーる ぼーっとしてみる ぼー てんじょうをみつめーる かべをみつめーる めがかわーく なにもしないでいてみーる なにもかんがえーず なにもおもわーず なにもせーず すぎてゆく、すぎてゆく おだやかなじかんがすぎてゆく

きらわれもの

「うわ…これマズいんだよね、すてちゃお!!」 「…そう?おいしくはないけど、食べられるよ?」 「こんなマズいもん食べるの?キモっ!!」 「あたしはおいしいモノしか食べたくないの!」 「まずい食べ物なんて大っ嫌い!」 「まずいものが存在しているのが間違ってる!」 「食べものってホントバカ、美味しく生まれて来いっての!」  食べ物を投げ捨てている子の前に、神様が現れたよ! 「これ、この食べ物を捨てたのは誰ですか」 「この食べ物を、食べられなくしたのは誰ですか」  食べ

ホエールウォッチング

 私の趣味は、ホエールウオッチング  豪快なクジラさんを見るとわくわくする  今日も私は、クジラを求めて大海へ出る  さあて、今日はどんなクジラさんに会えるかな? 「なんだ、これは!!!」  誰かの大きな声がする。  大物の予感に、心がざわめく 「お前は甕裡醯鶏という言葉を知らんのか!!」 「年寄りを馬鹿にするな!!」 「客は神様だろうが!!」  力がないくせに暴走する大きな目くじら  時代に合わない古い言い回しで攻撃している  年齢こそが最大級の自分の武器だと

変わらない世界が変わるとき

ぐう、ぐう、ぐう いびきをかく音が聞こえる 今、私は……夢の中 もうじき世界が変わる ぐう、ぐう、ぐう お腹の鳴る音がする 今、私は……電車の中 もうじき世界が変わる ぐう、ぐう、ぐう 口を噤む音がする 今、私は……混沌の中 もうじき世界が変わる 何も考えずにただただ眠って 何も考えずにいびきをかいて 何も考えられずに学校に行って 何も考えずにカロリーを取り込んで 何も考える事ができないまま罵声を浴びて 何も考えずに頭を下げて 変わらない世

※飼い犬が死んでしまう話注意※ 犬の具合がよろしくない。 17歳ということもあり、このところめっきり体力が落ちて足元はおぼつかず、食欲もないようだ。 病院に連れて行き、点滴を受け、家に帰ってきたところで女性に声をかけられた。 「あの、チョコちゃんのお母さん。病院いかがでしたか。」 「あまり状況は良くないですね。」 近所に住むというこの女性は、最近毎日のように家を訪ねてきている。 「私、チョコちゃんのことがかわいそうでかわいそうで。」 この女性は、先月飼っていた愛犬