見出し画像

やったことのないことをやってみる

昔から、安定したものを好む子供だった。
三角より、四角。満点より、及第点。シーソーよりも、砂場遊び。ジャングルジム遊びも、飛び降りても足がジ~~~~ンと来る程度のところまでしか行かない。ファミレスでは目玉焼きの乗ったハンバーグを頼んでいた。

失敗を恐れていた

良いものを見つけると、ずっとそれを選び続ける。その分そのものが好きっていうのもあるんだろうけれど、もう一つ。失敗を極度に恐れる特性もあったと思う。

授業中、先生に訊かれて答えた内容が違っていて、みんながザワつく瞬間。
目的地へ向かっている時、道を間違えて引き返す瞬間。
そういうのがひどく苦手で、失敗をしないようにするあまり、必要以上に保身に走るようになってしまった。

失敗が怖いのって、どうして?

どうしてわたしはこんなに失敗を恐れるんだろう、と考えたことがある。
答えは簡単で、自分に自信がなかったからだ。

自信がなかったから、常に周りの目を気にしていて、他者から高く評価されるにはどう行動すればいいのかばかり考えていた。親や先生、大人たちはもちろん、クラスメイトに対しても、できる部分しか見せられなかった。

人から低く評価されたら、自分は無価値同然になると考えていた。

子どもの頃、父と交わした約束を守れなかったことがある。
守ろうとすれば守れたレベルのものだし、我ながらなんであんなことしちゃったんだろうと思う。そしてその時、父も同じ受け取り方をしていた。

夜、父からメールが届いた。
「あなたの信頼はゼロになりました。」
それだけ。たった一行だけのメール。

すぐに謝って、これからは繰り返さないようにしますと伝えて、なんとか父の機嫌は戻り、普通に会話するようになったけれど。
もともと臆病でリスクを恐れるわたしの性格に拍車がかかったのは、その頃からだと思う。

失敗してもいい環境に身を置いてみる

社会人になって、経験のないことに挑戦する機会をいただけるようになって。リスクヘッジも大切だけれど、「まずはやってみる」「その結果を見て改善していく」というやり方も良いなぁと思うようになった。

でも依然としてわたしは失敗が怖くて。
どうしたものかと考えていた時、ふと「周りの人がいなければ、わたしも失敗を気にしないのでは?」と思いついて、誰もいないところに行ってみることにした。正確に言うと、わたしが評価を気にするのは「その後も関係が続く可能性のある人」、知人や友人、同僚たちだったので、そういう知り合いが誰もいない場所に行った。

人生初の一人旅は、実に身軽で、楽で、楽しかった。
アタリかどうか分からないお店にえいやっと入ってみる。バスで行ったほうが早いし確実だけど、地図を頼りに歩いてみる。なんとなく行きがけに見かけた地元の博物館に入ってみる。「え、どんな味なの、それ?」と首を傾げるような味で売られているソフトクリームを買ってみる。旅行だからと気負わずに早めに旅館に行って、コンビニで買ったアイスとお酒を嗜む。女将さんにおすすめを聞いて、二日目のコースを練りながら眠りにつく。一番遅い時間に設定した朝食を摂りながらちょっぴり観光して、夕方より少し早めの新幹線で帰る。

興味の湧いたものがあったらすぐに飛び込めるのは、ちょっぴりリスキーで、ドキドキするけど、そのぶん達成感も大きくて。「え、そんなのもったいないよ」とか「せっかく旅行に来てるんだから」とか言われそうで、普段の自分ならまずしないであろうことをするのは心地よかった。
なにより、自分がひとつ殻を破れたようで嬉しかった。

日常から、失敗してもいい時間を作ってみる

一人旅中はそうでも、日常に戻ってくれば、わたしはやっぱり臆病で、リスクを恐れる。変わったのは、そういう自分を否定的に捉えていたのが、肯定的に捉えられるようになったこと。
好き勝手に行動するのは心地よかったけれど、やっぱり地図だけを頼りに歩いていると迷いそうになるし、ソフトクリームは不思議な味だった。自分一人だけなら「あっちゃー」で済むけど、周りの人も巻き込む事態だったら、わたしはリスクの少ないほうを選ぶだろう。そっちのほうが、良いと思った。

でもたまに、あの旅の日を思い出す。
さすがにそう頻繁に一人旅に出るのは難しいけれど、日常の中に「失敗してもいい時間」は作れないだろうか。

やり方は簡単。
自分の興味が湧くものを見つけたら、やってみるだけ。
周りの目とか、立場とか、気にせずに。ただ、気の向くままに。

そういう時間は、あっていい。

あとがき

最近、一日に一回、やったことのないことをするようにしている。
昨日は、雨の日の銭湯。

今日は、ベランダで作業してみた。

変化とも呼べないほどの些細な出来事かもしれないけれど、こういう日々が、わたしたちをつくっている。

TOP画像は、初めて川遊びしている愛犬。
最初は恐る恐るという感じだったけれど、すぐに慣れて、水の中を平気で進んでいた。一歩踏み出してみたら、意外と簡単にいけちゃうのかもしれない。

感想、コメント、リクエストなどいただけたら嬉しいです。「たかれんのこんな記事読みたい!」があったらDMにどうぞ!