見出し画像

【たから語り】KAJIYANO まだ見たことのない景色へ

山口 貴士さん
クリエイティブ・ディレクター/株式会社OFFICE KAJIYANO代表。総合広告会社を経て、2014年、結婚を機に神河町へ移住。2015年起業。2016年、オフィス兼コワーキングスペース「kajiyano」開設。人の力をつなぎ、地域企業のブランディングに従事。2020年法人化。ヤギ1頭と2児の父。

山口 奈央さん
くらしと食の研究家/株式会社OFFICE KAJIYANO取締役。2012年、空き家になっていた兵庫県神河町の祖母宅にてリラクゼーションサロン(谷間の家さんきら)開業。野生の植物や花、地域にあるものを生かすパーマカルチャーの思想を取り入れながら、現在はヤギを飼い自然豊かな環境ならではの子育てを模索中。

めえちゃんと山口さん夫妻(2018年)

神河移住で変わったこと

岡崎ゼミの2回生チーム(SIMARI)²は2024年5月12日、神河町のOFFICE KAJIYANOで山口さん夫妻にインタビュー取材しました。
KAJIYANOでは代表の山口貴士さんが様々なクライアントの方々からの悩みなどについて話し合い、課題解決に向けてのプロジェクトの企画や提案・実施をされています。そんな山口さん夫婦のライフスタイルとや神河町の魅力についてお話を聞きました。

――神河町での活動を通して心境の変化とかありましたか?

貴士さん「僕の場合は、変わりすぎて言語化するのが難しいんですけど、淡々と地道にやることを大事にするようになったかな。もっとショートカットがあると思ってたんですよ。パッと手に入るものとか、いち早く成功できる道がないかとかそういう感覚が若い時はどこかにあったんだけど、そうではなくなっているのが気持ちの変化じゃないかなと思いますね」

「ここに来る前、都会で暮らしていたときは、今思うと自分のやりたいこととか自分中心の考えが強かったかもしれないです。でもここに来てからは、僕たちが日々暮らせているのは先人も含め地域の方々が色んな形で尽力してくださっているからだと気づかされて。普段歩いてる道路なども地域の方や官民のいろんな人の力が合わさって綺麗に保たれている。そんな風に、視野が広くなったというのかまわりのことをより考えるようになりましたね」

めえちゃんと山口貴士さん(2024年)

今では、旅先で手入れされた景色を見ると、その裏で誰かが努力していることに感謝の気持ちがわいてくるそうです。

貴士さん「いい景色やねって言ってるとき、これって、誰かの努力を無料で楽しませてもらってるんだなって思うんです。誰かがその木の剪定をしているから木が良い形をしていたり、アスファルトの雑草を誰かが管理してくれているからこんなに気持ちよく歩けるようになっているんだとか、自然とそういう視点になりますね」
 
神河町での生活を通じて、山口さん夫妻は淡々と地道にやることの重要性を認識したと語ります。かつてはすぐに結果を求めていたけれども、今では地道に努力を続けることの価値を理解し、それを実践するようになった。山口さんの言葉からは、地域との関わりを通じて育まれた感謝の気持ちも伝わってきました。

OFFICE KAJIYANO

まだ見たことのない景色が待っている

――忙しい中で、何があるから走り続けられるんですか?

奈央さん「まだ見たことのない景色が待っていると思っていますね。走り切ったらいつもなにかに繋がっていくから、ここも走り切ったら次何が見えるのかなみたいな」

貴士さん「先のことは分からないけど、ちゃんとやっていれば、その先は良いことが待っているんじゃないかと思ってますね」
奈央さん「何かを目指してやっているわけではないですけど、山を越えて見えてくる次の世界はきっと悪いものではないだろうって」

貴士さん「全然違うレベルの例えになるけど、あぁ今日草刈りせなあかんなと思ったとして。しんどいけど、草刈りしたあとの景色が想像できるじゃないですか。スッキリして、風通しも良くなって。じゃあ、庭いじりもやってみようかとかに派生したりもするわけですけど。頑張ったら、頑張った分よくなっているだろうみたいな」

また、お金のためだけには仕事をしていないということも山口さん夫妻は強調します。

貴士さん「お金からは出発してないですね。」

奈央さん「お金のためっていうのは多分ないなぁ。効率良くはやってないから(笑)」

貴士さん「お金のためってなるともっとしんどくなると思いますし、別の仕事した方がいいと思います。非効率だから。でも、自分にとって充実感を持てるものを直感的には選んできているつもりなので、壁に当たっても何もやる気しないですっていうのはあまりないです」

山口さん夫妻は、お金のために仕事をこなしているのではなく、その先にある〈新しい景色〉を楽しみにしながら、非効率でも一つ一つ日々の仕事に取り組んでおられることが伝わってきました。

KAJIYANOでの取材(2024年5月12日)

面白い人を惹きつけるキャンバスのような環境

――お二人が「たからもの」として大切にしているのは何でしょうか。

奈央さん「やっぱりこの自然のおおらかさとか、環境ですかね。子育てしていて特に思うんですけど、やっぱりマンションで子育てしてたら 子どもたちが家の中にじっとしていられないじゃないですか。外に出て、公園とか児童館に行きたい!とかになると思うんですけど、ここにいたら家の中も広くてその中だけでも遊べるし、外に出れば、水や生き物、土、石とか遊べるものがたくさんあるんですよね。それだけでも親として心のゆとりが生まれるというか、焦りが減るっていうのを子育て中にすごく実感していますね」

「神河の中でも人口が少ない地域ということもあると思うんですけど、静けさっていうのを私はすごく大事にしていて、本当に何の人工物の音も流れない静かな時間があることが私にとっての『たからもの』ですね」

貴士さん「あるがままの自然と、現代的な生活を両方ミックスして楽しめるこの環境がすごくいいなと思っていて。交通アクセスも比較的恵まれていますし、ゆとりがあって、マイペースに過ごせる。そういうおおらかさがいいなと思っていています。そうした環境だから、魅力的に感じたり面白いと思ってくれて、面白い人たちが集まるのかもしれないですね。アーティストさんとか絵を描く人だったり、踊る人だったり。オーガニック系の農業がしたい人のコミュニティも面白いですね。面白い人たちを惹きつける"キャンバス"みたいになっているのがすごくいいなと思います」 

豊かな自然と現代的な生活が融合する環境の魅力について語る貴士さん。交通アクセスが良く、適度なプライバシーを保ちながらマイペースに過ごせる点も気に入っておられるようです。

今回の取材で心に残ったのは、山口さん夫妻が、何事にも地道にコツコツと毎日の積み重ねが大切だと話されていたことです。夢や憧れに向かって、つい上ばかり見てしまうものですが、焦らずいまやるべき現状を見据えて日々の課題に取り組むことこそが目標に近づく一番の方法なのだということを今回の取材で学んだように思います。
  
             記事担当(SIMARI)² 清水咲太郎・渡邊琉我

取材後の記念撮影

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?