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【たからうたストーリー】元気を届ける、ふるさとの人

神戸学院大学現代社会学部の岡崎ゼミでは、地域のたからもの、その出会い、想いを音楽にする〈たからうたプロジェクト〉に取り組んでいる。ここでは、チーム「NON Rabit」による「フルサトノヒト」の楽曲制作プロセスを紹介しよう。

曲づくりは難航

太田雅己さん、通称まさやんは、2013年頃に役場を早期退社し、音楽療法士の資格を取得するための講座を受講。2015年から試行錯誤しながら、ひとりひとりに寄り添った音楽療法に取り組んでいる。

私たちが太田さんにインタビューをしたとき、初めに感じたことは「元気いっぱいで明るい人」というイメージだ。高齢者の方に話す機会が多いからだろうか、私たち学生の質問に対しても、ハキハキと聞き取りやすい声で話された。ときおり見せる太陽のようなピュアな笑顔に私たちも元気をもらった。この第一印象から私たちがつくる「たからうた」はピュアで元気な楽曲にしたいと考えた。

私たちは、インタビュー後に録音を聞き直し、楽曲制作を担当するミュージシャンの山田明義さん、アヤヲさんと、特に印象に残った言葉や取材後の感想を話し合った。

私たちは、音楽療法士としてのまさやんに焦点をあてた楽曲にしたいと考えた。そして、できれば音楽療法のときに患者さんと一緒に歌ってもらえる楽曲にしたいと考えた。けれども難しい課題がある。音楽療法はヒーリングの場だ。だから音楽療法に焦点を当てると、音楽は元気良さよりも優しさが表現されることになるのだ。実際、山田さん、アヤヲさんが最初に作曲した音楽はカントリー調の、ふんわりと優しい楽曲だった。

良い曲だと思う。けれども、まさやんの第一印象である「元気いっぱいで明るい人」というイメージとは異なる気もした。そこで、私たちは、山田さん、アヤヲさんともう一度話し合って「元気」「明るさ」に焦点を当てた楽曲をつくれないかと検討した。

今は私が元気あげるよ

アヤヲさんは、音楽療法士としてのまさやんではなく、まさやんから元気を受け取った人に焦点をあてて新しい歌詞を書くことにした。のんさんをはじめ、まさやんの運営する音楽の場で、まさやんから元気をもらった人たちがたくさんいる。音楽療法の患者さんたちも、まさやんの歌からエネルギーをもらっているはずだ。まさやんから元気を受け取った人の視点に立つと、元気いっぱいで明るいまさやんを表現できるのではないか。

アヤヲさんは大学からの帰りの電車で一気に歌詞を書き上げたという。歌詞を受け取った山田さんは、歌詞を編集しつつ、シンプルなロックナンバーを作曲した。翌日には二人でデモ音源を仕上げてしまった。山田さんは「明るい曲にしつつも、トリッキーな曲調ではなく、音楽療法でも使えるような、キャッチーな曲になるように制作した」と語る。

タイトルは「フルサトノヒト」。この曲が表現しているのは、まさやんにもらった元気だけではない。まさやんから元気を受け取った人は今度は自分たちがまさやんに元気をお返ししたいと感じているだろう。歌詞の後半に「今は私が元気あげるよ」というフレーズが登場するのはそのためだ。

  迷わないこと 教えてくれた ふるさとの人
  今は私が元気あげるよ ふるさとの人

新しい曲のデモ音源を聴くと、自分たちが最初にイメージをしたまさやんの明るさやピュアさが表現されていると感じた。話し合いながらミュージシャンとともに曲をづくりをしているという実感が湧いてきた。

教室で歌のレコーディング①

自分たちの歌とドラム演奏を録音

メインボーカルは歌手のアヤヲさんが歌っているが、私たち学生も歌・コーラスで参加することにした。山田さんが持ち込んだ機材を使って、教室でレコーディングをする。初めての経験だ。野田舞香さんはアヤヲさんとダブルボーカルになるように全パートを録音した。他のメンバーは、サビのパートをユニゾンで歌った。うまく歌えたかはわからないが、みんなで歌った方が元気良さが表現できたように思う。

教室で歌のレコーディング②

加えて、私・田添和がドラムをレコーディングすることになった。さすがに教室ではドラムを録音できない。アヤヲさんの紹介で、幸運にも神戸のライブハウス「チキンジョージ」を貸し切りにしてレコーディングできることになった。録音は正木毅さんに担当していただいた。プロの方にライブ録音していただくなんて、本当に貴重な経験である。まさやんのまっすぐなところを表現するためにメリハリをつけた演奏を心掛けた。

ドラム録音@チキンジョージ

元気を届ける曲、エネルギーを循環させる曲、ピュアな気持ちになれる曲。それが「フルサノヒト」である。

                    記事担当:NON Rabit 田添和

「フルサトノヒト」ミュージックビデオ


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