見出し画像

はじめに −−いま僕が「医療」を変える理由

僕は医者ではない。 

だが、この本では医者になり代わって、いまの日本で「むだ死に」せずに生きていくための知恵を伝えたいと思う。 

僕にはやりたいことがたくさんある。
だから、そう簡単に死にたくはない。おそらくみなさんだってそうだろう。 
しかし、自分以外に自分の体や健康のことを真面目に心配してくれる人なんて、まずいない。いたとしても、家族かごく近しい人間くらいのものだ。それなのに、何の関係もない僕が、他人の健康を心配して語るのだ。このおせっかいには、よほどの理由があるのだと思って真面目にきいてほしい。

ここ数年、僕は自分の関心の赴くままに、医療や健康のあり方ついて取材するなかで疑問を感じた。医療業界には、最先端の科学が集結している一方、専門領域を越えて情報共有がなされない、医療関係者と患者の間に情報格差がありすぎる、ネットと連携していない……など、未開の部分が多い。もっと他業界と同じように効率化、合理化されるべきことが放置されている事実に危機感を持った。 

僕自身、これまで情報、働き方、時間、ライフスタイル……あらゆる面でむだを省き、「最適化」して生きてきた。その観点からも、医療や健康には最適化できるはずのことがまだまだあるのに、誰も改善しようとしない。しかも医療の場合、ときにその「むだ」が人の生死を左右する。 

この「むだ」を解消するために、何か医療関係者と僕らの間をつなげる事業ができないだろうか、次第にそう考えるに至った。 

2015年10月、「予防医療普及委員会」を立ち上げた(現・一般社団法人予防医療普及協会)。 
医師たちに話をきいていくと、日本は平均寿命が長くなった一方で、病気を事前に予防するという意識が、諸外国に比べて極端に薄いということがわかった。 

現場の医師たちによれば、たとえばがんの「予防」に関するセミナーを開催したとしても、集まるのはすでに健康に問題がある60〜70代の高齢者ばかりだ。がんはもっと若い、30〜40代のうちに予防できていれば死ななくてすむ病気なのに、検診受診率も先進国で格段に低い。「知識さえあれば、この人は死ななくてすんだのではないか」と思わざるをえない事例が後を絶たないという。

望めば世界中の情報が手元で入手できる時代にもかかわらず、知らなかったばかりに助かる病気で死ぬなんて、アホらしい。知識がなければ、「むだ死に」する現実をもっと広く知らせるべきだと僕は思った。 

そこで、僕たちはこれからの時代、病気は治療よりも「予防」に力を注いでいくべきだという「予防医療」の考え方を、世間に知らせるための活動をはじめることにした。 
最初のプロジェクトの目標は、「胃がん撲滅」。胃がんのおもな原因である「ピロリ菌」にちなんで〝「ピ」プロジェクト〟と名付けた。

いまだにあまり知られていないかもしれないが、胃がんは99%がピロリ菌による感染症が原因だ。ピロリ菌の有無を検査して、早めに対策をとれば、胃がんで死ぬ人は格段に減る。 
僕たちは、まずは胃がんの原因がピロリ菌であることを啓発するコンテンツを作り、ピロリ菌を郵送検査で調べる簡易検査キットなどを販売した。
これを、ネットで支援者に予算を募る「クラウドファンディング」の形式で実施した。すると、当初の目標金額を上回る成果が得られた(詳細は「予防医療普及協会とは」を参照してほしい)。

はじめは、「ホリエモンがぜんぶお金を出してやればいいじゃん」という声もあった。しかし、他人に金を渡されて「予防は大事だ」「検診に行こう」と諭されたとしても、結局、「そうですよね」で終わりだ。自分が情報にアクセスし、興味を持ってアクションを起こす。検査をして、実際に結果を手にする。そして「俺は陰性だった」と雑談のネタにしたり、「陽性だったけどどうしたらいい?」と次の情報を探しにいく。そうやってはじめて、病気の予防が「自分ごと」に思えてくるというものだ。 

もちろん、このプロジェクトもがん予防の目的も、助かる命を「むだ死に」させないことだ。同時に、予防すればかからなくていい病気にかかって医療費を「むだ使い」するのを止め、限られた医療資源を有効に使う目的もある。

専門的な話になるが、病気の予防には3段階があるといわれている。
●一次予防(生活習慣の改善や予防接種などで、病気を未然に防ぐ)
●二次予防(定期検査や検診を受け、病気を早期発見・早期治療をする)
●三次予防(病気を適切に治療し、悪化や再発を防止する)

予防医療普及協会の活動は、まだ一歩を踏み出したばかりだ。ピロリ菌検査プロジェクトは、おもに一次〜二次予防までを促す取り組みだ。この本も、予防医療普及活動のいわば、イントロダクションである。

序章では、日本の医療の現状について、1章では、予防医療普及協会がおこなった〝「ピ」プロジェクト〟を通して得た胃がんに関する知見、2章では、胃がんのほかにも予防が可能ながん(おもに感染症由来のがん)があるということ、3章では検診の重要性に触れたい。
4章と5章では、予防しておけば人生のQOLを格段に高めることができる歯周病、視力矯正技術など、僕がすすめたい予防について紹介する。終章では、予防医療普及協会の今後の計画について。

この本に載せたことは、すべて、実際僕が医師や専門家たちに取材したなかで、知っていたほうがいいとリアルに感じたことばかりだ。みなさんにも、とくに若い人たちにこそ、後々すべてが自分の身に跳ね返ってくる問題だと考えてほしい。

僕らの人生は限られている。 
この先何が起こるかは、誰も正確に予測できない。 
だからこそ、未来を恐れず思いのままに行動するべきだ。 
この瞬間を全力で生きて、働いて、突っ走るべきだ。 
それには、健康であるのに越したことはない。
「健康」は人生の目的ではない。 
しかし、第一の条件なのだ。

医療はいま、最もイノベーティブな領域だ。ここ数年でスマートフォンが、僕らの生活や行動を変えたように、最新の科学による医療の知見は、やがて僕たちの人生観にもイノベーションを起こしていくだろう。 

世界の医療は、いま確実に病気の「治療」から「予防」の時代へシフトしている。僕は、社会や人間を本質的に変えていくのは、政治でもなくメディアでもなく、テクノロジーだと考えている。予防医療普及協会も、これから継続した取り組みを続けていく。 

そして、最終的にはこの国の三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)を撲滅したいとさえ思っている。

2016年9月 堀江貴文


予防医療普及協会とは

知ることで、行動することで、防げる病気があります。
もちろん全ての病気が防げるわけではありませんし、100パーセント防ぐ方法はありません。

それでも、少しでも健康で長生きすることを含め、いろいろな生き方があると思います。私たちは、「予防医療」を通じて、一人一人が自分の人生に向き合うお手伝いをしたい。

予防医療に何ができるのか、どういったものが「有効な」予防医療アプローチといえるのか、その効果は何か――。予防医療は、まだまだ未開拓の概念で、答えがない問いが数多くあります。

私たちは予防医療に関して単に情報発信するだけではなく、社会全体で冷静に議論する場を醸成していきたいと考えます。

*一般社団法人予防医療普及協会 ホームページ http://yobolife.jp
*「ピ」プロジェクト ホームページ http://www.p-project.jp


ⓒ2016 Takafumi Horie, Japan Preventive Medicine Foundation,
Magazine House, Printed in Japan

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
11
どーもー!