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とあるclusterイベンターの苦悩、半年の軌跡

clusterに来たきっかけは失職

僕がClusterを始めたきっかけは、3月末にコロナの影響で失職したからだった。それによってやることがなくなり、「これから僕はどうしよう?」と考えていたときに、現れたのがclusterだった。

当時僕は、リアルで国際交流イベントをやっていた。内容としては、カフェに集まって、1テーブル4人で、英会話をするというもの。参加比率で言うと、日本人が4分の3、残りの4分の1が海外の人という感じ。

けれど、コロナの影響でそれもできなくなった。一度開催はしてみたけど、結局参加者は一人しか来ず、現実でのイベントは無理だなあと思ってた。

「リアルは無理だけど、ネットでならイベントできるなあ」なんて考えていたときに、出会ったのがclusterだった。

そもそも、なんで国際交流イベントなんてやっていたのか?僕は、新しい人と会い、仲良くなり、色んなことを話すのが好きな人。なので、国際交流イベントで、色んな人と話ができるのが好きだった。

そして何より、僕は話すことが好き。そして、人前で話したりして、人を喜ばせるのが好き。

VR上でなら、自分の好きな題材で、好きなイベントができる。しかも、密なんてくそくらえ!という感じでできる。最高じゃん、って思ったのが始めたきっかけだった。

4月:初めて行ったイベント

ワンチャンニャンちゃん

最初にやったのは、『わんちゃんにゃんちゃん理解王選手権!』というクイズ番組。○×形式のクイズ。正直、ちょっと怖かったのを覚えている。そもそも、人なんて来るんだろうか?って感じだった。ただの素人イベントに、人は喜んでくるんだろうか?

当時はcluster内で知り合いがゼロだったので、clusterのコミュニティがどんな感じかもわからず、どんな人がいるのかも全然知らなかった。

まあでも、とりあえずやってみよう、という感じだった。人が集まらなくても、それはそれでしょうがない!とか思っていた。正直、僕は物事を深く考えないタイプなので、不安に飲み込まれることはなかった。それは救いだったと思う。

イベントの用意も、初めてのVR上でのことだったので大変だった。イベント用ページのイラストを考えて作ったり、音楽も用意したり、そしてクイズや話す内容を用意して練習したりと、なかなかハードだった。

実際にイベントが始まって

当日、人なんて来るんかなー?と思いながら、イベントは開始。誰も来なかったら、一人しか来なかったら、イベントにならんなあとか考えていた。そうしたら、ポツポツ人が来始めた。

「おーっ!人が来た、やった!」と思った。しかも、合計で10人くらいの人が来て、クイズ大会をするには十分な人数になった。

「これなら、ちゃんと選手権になる、よっしゃ!」と小さくガッツボーズを、PC前でしていた。

そこから慣れない操作で苦しみつつも、1時間のイベントを始めた。クイズ大会のルール説明をし、そしてクイズを開始した。

盛り上げるために、なんか色々と話しまくっていたのを覚えている。もう観客の反応とか見るキャパシティがなかった。イベントの進行に必死だった。

進行をして、盛り上げて、音楽や効果音を出し、スライドを切り替えて、などなど。マルチタスクが大の苦手な僕は、半分頭がショートしながらイベントを続けた。

全てのクイズが終わり、順位発表に行った。1,2,3位の発表をし、それぞれにゲスト権限を与えて、ステージに上がってもらった。そして、それぞれに「〜賞」というのを与えた。

無事に賞を与え、イベントが終わった。1時間、やりきった。なんだったら、1時間ちょっと超えて「やべっ!」とかなっていた。

ちなみにその時の一位が「てつじん賞」で、それが僕の今のアバター「てつじん」の元ネタとなっている。

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初めてのイベントが終わってから

初めてのイベントは、頭がめちゃくちゃ疲れた。けれど、皆楽しんでくれたようだし、何よりコメント欄で褒めてもらえたのも嬉しかった。

当時は理解していなかったけれど、イベント最後にVコインを投げてくれた人もいた。ハートマークが飛んできて、「お?なにこれ?わからんけどありがとう!」みたいな風に思っていた。

後々になって、それがお金を払って送るものだと知って「うわあ、なんてこった!感謝するべきことだったのか!ありがてぇ!」って驚いていた。

それから、イベントは毎週行っていた。自分の可愛いペット自慢大会だとか、まだトリガーギミックも実装されてないのにサバゲー大会『FPS Light』とか、デスゲーム『Death Penalty』とか。

あとは、後々になって『clusterフォト大喜利』というのをやったり、クリエイターの人たちが自分のワールドとその仕組みを紹介し合う『VCreators』とか。

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余談だが、デスゲーム『Death Penalty』の会場は、回答を間違えると、参加者がいる床がパカっと開いて落ちて死ぬ(リスポーンする)という仕組みになっていた。トリガーギミックが実装されていない時代だったので、色々と工夫してなんとか作り上げた。だが、開場5分でワールド崩壊してしまったのを覚えている。

Unity上では上手くいっていたのだけれど、clusterでは上手く動かず。シリアスな雰囲気でやろうとしていたのに、参加者が床に乗った瞬間、地面がぶっ壊れた。跳ね上がるわ傾いたままだわで、シリアスのへったくれもなかった。ただただ僕が慌てまくるコメディー劇場になってしまった。あれはもうどうしようもなかった。

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ただ、あれはあれで楽しんでくれた人が結構いたようなので良しとする。

6月:イベントをするのが辛くなる

4月から週1で行っていたイベントを、7月半ばを最後に中断することにした。引っ越しと職探しというのも理由にあるが、根本原因は「燃え尽きた」からだ。

あの頃、僕の中でのイベントは「やりたいこと」よりも「やるべきもの」になってしまっていた。当時無職だった僕は、生活でやっていたのは『clusterでのイベント』しかなかった。元々人間関係が現実で希薄だった僕は、cluster以外の世界で生きていなかった。

そして僕のclusterにおいての価値とは「イベントをすること」だった。イベントをしなければ、僕はclusterにおいて存在価値がないと思っていた。面白いイベントをしなければ、僕はclusterにおいて無意味であり、人は僕のことを忘れ、無価値になると思いこんでいた。

そう、僕は途中から「皆から好かれるために」「皆の注目を自分に集めるために」やっていた。なので「どんなイベントなら、cluster民は来るだろうか?」「どうすれば、来たくなるだろうか?」とか思うようになっていた。

実はその頃に生まれたイベントが、clusterフォト大喜利であり、VCreatorsだった。

『clusterフォト大喜利』が生まれた経緯

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当時の僕の中にあった葛藤は、「面白いワールドを作ろうとしても、知識、技術、作成スピードで他の人に勝てない」ということだった。仕事でも、人と話すことばかり業務にしてきたので、設計などは苦手分野だったのだ。

ワールド作りで勝てないなら、どうすれば良いだろう?そう悩んでいた僕には一つ好きなことがあった。それは面白い写真を撮って、twitterで大喜利をすることだった。そこで思いついた。

「待てよ。自分以外にも、面白い写真を撮るのが好きな人、笑わせることが好きな人がいるはずだ。」「そして、オーディエンス参加型のイベントなら、人も来たくなるだろう。」

そう考えてできたのが、『clusterフォト大喜利』だった。

イベントに話題性を作るために、とみねさんやスワンマンさん、こんぱいるさんに審査員をお願いした(あの時は本当にありがとうございました!)。正直、あれは卑怯な手を使ったなあと思っている。恐らく、今だったら絶対できない。

その後、ふじけんさんとりおもろさんが審査員&MCにもなってくれ、イベントも第三回まで続いた。二人がMCに入ってくれたおかげで、イベント自体も面白くなったし、トークをするのも楽しくなった。その節は、本当にありがとうございました。

VCreatorsが生まれた経緯

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イベント『VCreators』は、「今、cluster民が面白いと思うことはなんだろう?知りたいと思うことはなんだろう」と、うんうん悩んでいる時にできたもの。

6月頃(?)にトリガーギミックが実装されてから、今までとは一風変わったワールドが出てきた。どうやったらそんなギミックができるの?どんな考えでそんなワールドができるの?っていうものが増えた。

でも、そういう知識や考えがcluster内で共有されていなくて、もったいないなあと思っていた。

そこで思った。「あれ、僕と同じように考えてる人って、結構いるんじゃね?これはイケるかも。」

そんな考えでできたのが『VCreators』だった。結果として、たくさんの人が来てくれた。「そんな風にワールド作ってたの!?すごい!」と思わせる話を登壇者の方もしてくれて、個人的にはやってよかったイベントだと思っている。

登壇してくれた8さん、Muacaさん、みゃおんさん、ガルペノさん、のほほさん、本当にありがとうございました。

7月半ば:そして燃え尽きる

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イベントが成功するのは嬉しくもあったが、この頃には毎週のイベント開催に疲れてしまっていた。イベントの成功に一喜一憂し、成功するかどうかを心配していた。自分がイベントをやりたいというより「自分のclusterにおいての存在意義」のためだけにイベントをやっていた。

「なんか、イベントをやりたいからやってるんじゃなくて、評価されたいからやるようになってしまっている。これはおかしい。」そう気づくようになった。

そして、僕はclusterから一度離れることにした。自分の心に向き合うようにした。そして、「評価されるからやる」のではなく、自分の心が今やりたいことをするようにした。

それは別に、崇高なことをするわけではなかった。漫画を読みたいなあと思ったら読みまくったり、ゲーム実況を見たかったら見まくったり、ドラマを見たければ一日中見たり。ブーメランを投げたかったら公園に行って投げたり、ウインドウショッピングに行きたかったら出かけたり、散歩したかったら散歩したり、本を読みたければ本を読んだり、ダラダラしたければそうする。

別に何を生産するでもない、そんな毎日を送るようになった。

10月頭: 心を整理して、再度clusterに

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それから2か月半経った10月頃、自分はclusterに再度顔を出した。

新居での生活も落ち着いて、仕事も決まった。時間もあったので、久しぶりに顔でも出そうと思って、いちこんカフェに行った。

そしたらカフェにいる人達に、凄く温かく「お久しぶりです!」って声をかけられ、歓迎された。

嬉しかった。「僕は別に、過去の人間になったわけではなかったんだなあ。」そう思いました。

今は、積極的にイベントを行うことを止めました。それは、VRで自分がしたいことをすると決めたから。そして、誰かに認められるためにVRをするのはもう止めよう、と思ったから。

認められるための渇望が原動力になって、clusterフォト大喜利などのイベントが生まれたこと自体は良かったと思います。でも、それって全然健全じゃない。

「もっと、もっと認められなきゃ!そのために、もっと面白いことをしなきゃ!」という、一種の飢えで行動していると、絶対に心が破綻します。

なぜ、僕は認められようとしてしまったのか?

僕がなんでこんなことになったのかは、理由はあとになってわかりました。

一つは、僕の生きるコミュニティがclusterのみになっていたということ。そこで認められなければ、僕はどこにも居場所がなくなってしまう。そんな焦りがありました。

もう一つは、僕はイベント以外で他のユーザーとの接点が少なかったこと。特に僕の場合、皆がログインする夜の時間帯にログインしなかったので、フレンドとワールドで会うということができませんでした。

そして、clusterでは知らない人と会っても友達になりにくかった。ゲームワールドで会っても、そこで遊んで終了、という感じだったので。

そういった理由で、僕は他のユーザーとの純粋な「人間関係」を持つことができなかった。というより、それを感じることができなかった。どうしても、「イベンター⇔オーディエンス」という関係を超えられていなかった。

なので、フレンドになった人たちと仲良くなり、自分に興味を持ってもらい、関係性を持続させるためには、「面白いイベントをやる」しかなくなっていました。

そうするしか、clusterでの存在意義を見いだせなかった。それが失敗すれば、clusterのコミュニティにしか属していない自分は、自分の存在価値すら失う。だからこそ、当時は「皆に、もっと認めてもらわなければ!」という呪縛に絡めとられていたのだと思います。

今は、そういう気持ちが大分なくなりました。理由は三つあると思います。

一つ目は、英会話講師という職場で、新たな存在意義ができたこと。もう一つは、VRは自分がやりたいことを楽しむものだ、と思えるようになったこと。三つ目は、VR内で僕は人間関係を作れていたのだ、とわかったこと。

呪縛から逃れられた理由1: 複数のコミュニティ

自分が一つのコミュニティにしか属していないというのは、結構怖い。そこで生きられなければ、価値があると思われなければ、存在意義を失うから。なので、複数のコミュニティに属するのは必要だと思います。

それは、別にVR内で複数のコミュニティに属するでも良いでしょう。clusterは一つのコミュニティではあるけれど、そこからいくつかのグループに分かれていると思うので。例えば、いちたろうさんのコミュニティー(?)だったり、えんきすさんのコミュニティだったり、普通にワールドを一緒に楽しむ友達コミュニティだったり。もしくは、VRCとか。

そういった複数のコミュニティに属しておくと、心はもっと安定すると思います。

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呪縛から逃れられた理由2: 楽しむものという意識

二つ目の理由は、「VRは、自分がやりたいことを楽しむものだ」という考えを持てたことです。

僕は今まで、誰かに認められようと頑張ってしまうタイプでした。承認欲求が強いのです。そしてそれに気づかずに、突っ走ってしまってしまうタイプなんですよね(笑)。

ですが、「あれ、そもそもやりたいことをやるためにVR始めたんだよね?」と気づけたから、考えを直すことができました。初心に帰るというやつですね。

初心に帰ったことで、「いや、別に自分は評価されるために人生生きているわけじゃない。他人に認められるために生きているわけじゃない。なら、自分のやりたいことをやろう」と思えるようになりました。

とはいっても、気を抜くと他人に評価されようとして行動してしまいますけどね(笑)。どうしても他人と比べて「あの人と比べて、自分は…」なんて思うことがあります。そうなると、心がざわつくのを感じます。

なので、今は自分の心を観察する時間を設けています。「あれ、これって他人に評価されようとしてない?」って気づけると、心が落ち着きますので。

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clusterで僕みたいになってた人いたら、気をつけてくださいね〜。心が荒んでしまって楽しくなくなるので。自分の心にかまってあげて、大事にしてあげてください。

呪縛から逃れられた理由3: 人間関係を作れていた

10月頃にclusterに戻ってきたときに、思ったこと。それは「あっ、僕ってこんなに慕われてたの?」っていうこと。

いちこんカフェに行ったら、「おーっ!てつじんさん、久しぶり!」ってみんなから声かけられるし。

ツイッターで大喜利写真アップしたら、「おっ、またやるんですか?」と声かけられるし(結局まだやってないですね!(笑))。

本を紹介し合うイベント『ビブリオ・トーク!』の時に、8さんとガルペノさんに登壇のお願いしたら、快く引き受けてくれるし。

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イベント中には「このゆるゆるな雰囲気が好き」とコメントをもらったり、いつもイベントで見る顔ぶれがあったりするし。

ガルペノさんのイベントに、サブMCとして参加させてもらったし。

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そういうことの積み重ねで、気づくことがありました。僕は、『イベンター⇔オーディエンス』以上の人間関係を作れていたんだと。それに気づけていなかっただけなのだと。そして、僕自身がみんなとの関係を、『イベンター⇔オーディエンス』として見ていただけなんだと。

思い込みというのは恐ろしい。ヨルシカも『レプリカント』という曲で、「この世の全部は主観なんだから」なんて歌っていますが、まさにその通りだなと。

もし読んでいるあなたが、何か苦しんでいることがあるなら。もしかしたら、それは思い込みかもしれません。自分の世界を疑ってあげてください。

最後に

今回僕がこの記事を書いた理由。それは、僕以外にも同じような形で苦しんでいる人が、もしかしたらいるのではないか?そう思ったからです。

clusterの中で、VRの世界で、もっと他の人に認められなきゃ。もっとみんなに評価されなきゃ…。そうやって自分を追い込むのは、とても苦しいです。他人と比べると焦りが生まれます。何より楽しくありません。

もし心当たりがあるとしたら、気づいてください。それは自分の心が作った呪縛だと。認められてないと思っても、すでにみんなに認められてるし、慕われてるんだと。

そして呪縛から解かれた心で、clusterでもっと楽しく、自由に遊んでいきましょう!

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