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『全館空調』はやったことありません②

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


前回の続きです。https://note.com/takaoshima/n/n2243371196e4

『全館空調』という用語はよく使われている。
けれどもシンデレラのガラスの靴のように「まさにピッタリなるほど明快」という定義がよくわからない。
そこで、全館空調を構成しているであろう要素を抽出した。
以下がそれ。

全館空調要素分解と各空調方式

「住宅の省エネ性」は一次エネルギー消費量(BEI)で示され、それがどのくらいであるかは通称<webプロ>https://house.lowenergy.jp/と呼ばれるサイトで計算される。
このサイト内では全館空調という用語は出てこないが(多分、出てこない)、おおよそ全館空調と判断できる空調方式が示されている。
それを構成する要素が①空調におけるダクトの有無、②冷暖房範囲、③運転時間だった。

国が用意したサイトでは全館空調なる用語はでてこない。
空調関連のあんちょこ本にも出てこない。
でも一般名称として人口に膾炙している。
では、いわゆる全館空調の構成要素は何?となると以下のアズビルさんのサイトが簡にして要であった。

https://www.kikubari.com/about_kikubari/index.html

なるほど。確かに一般的に全館空調というと上記webプロの三要素に加えて、一種熱交と1台ないし2台の熱源数(エアコン数)であると思う。
つまり、①空調におけるダクトの有無、②冷暖房範囲、③運転時間の三要素に加えて、④24h換気の取り扱い、⑤熱源数を加えた5要素がどうなっているかで、全館空調を定義づけたい。
で、このエリアのマジョリティである部分間歇冷暖房を相対的に逆照射して定義づけられると思う。
※部分間歇冷暖房=リビング、子供部屋、主寝室等を在室時のみ冷暖房する方式。
そのうえで、私が考える現時点の最適解としての「冷暖房方式」を導きたい。

①ダクト/ダクトレス

「いわゆる全館空調」はダクト式と断言してよいと思う。
これは熱源数とも関連している。
少ない熱源(1~2台)で各冷暖房対象室を「確実に冷やす/暖める」ためには保温ダクトを使わざるえを得ない。
いわゆる全館空調を設計・施工している主体はアズビルさんやパナソニックさんなど、空調設備メーカーさんであることが多く、元請け工務店さんではない。
と、なると、どんな間取りでも「確実に」冷える/暖める必要がある。
(コートハウスだったのでエアコンの効きが悪いです、とは言えない。)
また、工務店の営業さんがついうっかり「温度ムラないです!」と軽はずみなことを言ったとしてもクレームにならないように「確実に」冷える/暖める必要がある。
そうなると畢竟、ダクトを使う選択肢しかないと思う。
「床下エアコン、小屋裏エアコンがあるではないか」
と、思うかもしれない。
確かに、1~2台の熱源で住戸全体を冷やす/暖める心意気のシステムなので全館空調の要素に適合しているように思う。
しかし、基本的にちゃんとした設計がなされていない。
以前、noteで書いたことがあるが、ある閉じた空間をダクト式空調で冷暖房する時は
「(室温27℃に対して)15℃のエアコン吹出空気を75m3/h送風する。」といった計画をたて、それを実行するためのエアコンファン計画、ダクト計画を行う。
だが、床下エアコンの場合それが成立するのか?
是非、床下エアコンをやっている工務店の社長に
「2Fの北側の子供部屋に何℃の空気を何m3/h搬送させる計画ですか?」
と、聞いてほしい。
答えられないと思う。
そして、答えられないということは空調設計はされていない。
社長の過去のトライアル&エラーから導き出した経験と勘によるカッコ書きの「設計」による空調計画だと思う。

さて、部分間歇冷暖房は在室時に冷暖房する方式だ。と、なると、居室(LDK、子供部屋、主寝室等)の数だけ熱源(壁掛けエアコン)がある。
よって、ダクトには頼らない。

そんなこんなで、私のダクトに対する立ち位置。
まず、前提条件として、現在の住宅は高断熱だ。
と、なるとエアコンの能力は小さくてよい。
例えば、2.2kwのエアコン。
家電量販店で2.2kwを探すと「6畳用」となっている。
でも例えばUA値0.46w/m2kの住宅の場合、2.2kwのエアコンで30畳以上の空間を冷暖房できる。よって大事なポイントはいかに閉じた小さい空間をまとめて小さいエアコンで冷暖房するか、だ。
現在の一般的な住宅は大きな居室(LDK)と4.5畳~8畳程度の個室(子供部屋、主寝室等)が3~4部屋ある。
LDKは大きな一体空間なので2.2kw~2.8kw程度の小さなエアコンで冷暖房する。課題は4.5畳~8畳程度の小さな個室群だ。それを効率よく冷暖房するために小さなエアコンを使って冷暖房したい。
しかし、壁掛けエアコンを使う場合、閉じたそれぞれの空間を確実に冷やす/暖めるができない。先ほどの話、「(室温27℃に対して)15℃のエアコン吹出空気を75m3/h送風する。」の計画ができないからだ。そこで、ダクトを使うことにする。その際によく提案しているのがフリービルトイン形という一般名称のエアコンだ。
例えばダイキンの「アメニティビルトイン」がそれだ。https://www.ac.daikin.co.jp/sumai/aircon/housing/built_in

このエアコンを使えば、小さな個室群もダクトを使ってキッチリ冷暖房できる。
通常、個室群は2階建ての2階にある。その場合、小屋裏空間をある程度大きく設けてもらって、そこにダクト配管をすれば、ダクトの取り回しも難しくなくメンテナンスもしやすくなる。また、そもそも2階だけのダクト配管なのでそれぞれのダクトも短い。LDKのある1階は壁掛けエアコンなので1階の天井裏にダクト配管をしなくてもよい。

まとめる。
1階(LDK)は壁掛けエアコンで冷暖房。よって、ダクトは使わない。
2階(個室群)は小さいダクト式エアコンで小さくシンプルにダクトを使う。これが今の私のダクトについてのスタンス(最適解)だ。

と、いうことで途中経過。

全館空調要素分解と各空調方式

こんな感じで②~⑤についても埋めていく。
(やれやれ、当初の目論見より書き終えるまで時間がかかりそう。)



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