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『全館空調』はやったことありません。

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


「島さんは何屋さんなの?」と聞かれると困る。
言い淀んでいると
「ああ、全館空調屋さんか。」
と定義される事があり
「まあ、そうですね。」
と答える。確かにそうかもしれない。

でも、<いわゆる>全館空調はやったことがない。
そこで今回はいわゆる全館空調ってなんだっけ?を確認して
そこから私がこの6地域で一つの理想とする空調方式に
ついて考えたい。
なにやら壮大で書いていてむずむずしてくる。
きっと途中でめんどくさくなるが、取り敢えず
書き始めるとする。

空調について確認したい時は
丸善出版の『空気調和ハンドブック』をみる。
でも、この本のインデックスに「全館空調」はない。
また、編著が空気調和・衛生工学会の書籍を複数みてみる。
パラパラパラ。
「全館空調」は出てこない。(くまなくみたらあるかもしれない。
なにぶん、家の中からモノを探すのは得意ではない。)
「全館空調」
きっと誰かが使い始め、気付くと人口に膾炙したのであろう。

定義の糸口を建築研究所の一次エネ計算に求めた。

https://house.lowenergy.jp/
※以下、しばらく画像出典元は上記サイト内です

現在の新築住宅は、すべからく上記サイトで行った計算に基づき「どれだけエネルギーを使うか」の説明が求められている。
例えば、その住宅がZEH(ゼッチ)基準の省エネ性を満たしているかの判断は上記サイトで計算をすることによって行う。
住宅において、冷暖房のエネルギー割合は大きい。
そこで、冷暖房エネルギーの多い/少ないは「どういった冷暖房機器でどのように冷暖房しますか?」への入力がカギになる。
冷暖房機器はエアコン?床暖?(ガス式?電気式?ヒートポンプ?)等が問われる。
で、どのように冷暖房するかが、まさに全館空調の定義のヒントになる。
どのように冷暖房するか?
この入力は二択となっている。(三択だが実質二択)

※画像は暖房での入力だが冷房も一緒

この<?>をクリックすると暖房方式についての語句説明がある。

「居室のみを冷暖房する方式」は「連続運転」と「間歇運転」に分けられると書いてあるが、この6地域においては(細かい説明を省くが)間歇運転となっている。居室(LDKや寝室、子供部屋)のみ間歇運転(在室時のみ運転)する方式を部分間歇冷暖房と呼び、6地域の標準的な冷暖房方式となっている。

対して、「住戸全体を連続的に暖房する方式」はさらに以下のように説明されている。

また、この方式を選んだ場合、選択できる冷暖房機器は「ダクト式セントラル空調機」一択となっている。

つまり廊下や玄関ホール、脱衣所等も暖冷房エリアに含み、ダクト式セントラル空調機で24時間連続で冷暖房する。これは部分間歇冷暖房と二項対立で語られることが多い全館空調を全館空調という用語を使わずに定義していると言えそうだ。

なるほど。
でも、何か物足りない。
どうも語られていない要素があるように思える。
それは、熱源の数(エアコンの数)と換気の種類と関連性だ。

つまり、世間一般に流通している<いわゆる>全館空調は住居全体を1つ(ないし2つ程度)のダクト式エアコンとダクト式全熱交換気を組み合わせて24時間連続で冷暖房する方式だと思われる。
そこで、<全館空調>という用語を使って冷暖房システムを販売しているメーカーのサイトを確認した。

まずは老舗のアズビルさん。
昔から木造住宅向けの全館空調を販売しており、私も何度か、アズビルさんの全館空調の入れ替え工事を行ってきた。お世話になっております。

https://www.kikubari.com/about_kikubari/index.html

商品名は「きくばり」。
説明ページの1ページ目でほぼ全てがつまびらかになっております。
簡にして要、なのだ。

「全館空調きくばりとは」という説明において1台の空調システム(ダクト式)で冷暖房、換気(一種熱交)、空気清浄、除湿を24h連続で行うことを宣言している。
いわゆる全館空調の定義そのもの。

続いてパナソニックさん。グループのパナソニックホームズさん向けに全館空調商品を展開していたが、最近、一般物件でも商品展開をしている。
商品名は「ウィズエアー」。

https://sumai.panasonic.jp/air/kanki/zenkan/concept/

アズビルさんと比較すると、イメージ先行でポエムだが、サイト内の情報をまとめるといわゆる全館空調の定義に等しい。(熱源は壁掛けエアコンだが、専用品番で専用のハコに納めてダクトで送風するので、ダクト式エアコンとかわらない。)

ここまでをまとめる。
どうやら、全館空調の定義は権威筋の本を読んでもみつからない。
国が用意している一次エネ計算から部分間歇冷暖房と二項対立軸にあるような空調方式「住戸全体を連続的に冷暖房する」を全館空調の定義とできそうだった。その内容は以下の通り。
・ダクト式エアコン
・住戸全体(廊下、玄関ホール、脱衣所含む)
・24時間連続
(・換気不問)
(・熱源数不問)
対して、人口に膾炙した<いわゆる>全館空調を、明確に全館空調を標榜するメーカーのサイトから確認すると以下の通りだった。
・ダクト式エアコン
・住戸全体
・24時間連続
・一種熱交
・熱源1~2

なるほど。
さて、以上を踏まえ、私が理想とする(あるいは現時点の最適解)となる空調方式について書きたい。
が、案の定、疲れた。
よって、次回これについて書きたい。
インシャアッラー。

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