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社会構成主義を読んでみる。(2)D・L・クーパーライダーら『AI 「最高の瞬間」を引きだす組織開発』

立教LDCでの学びログ_2020.07.12

濃厚な構築主義の書籍を読んでいて少々食傷気味のため、社会構成主義をベースにした実践的な書籍に手を伸ばしてみました。大学院での課題の着地は「社会構成主義とAI」なので、思いっきり実務に寄った方を読んでおこうという狙いです。こちらも、京都の若いHRM研究者(同僚でもあります)からの推薦図書でして、実践的でありながらも構築主義とAIという一節があったりします。

(1)AIはプロセスへの関与ではなく方向性の探求である。

ここでのAIはArtificial Intelligence(人工知能)の略称ではなく、Appreciative Inquiryの方です。本書によれば、AIとは「人や組織、そしてそれを取り巻く社会において何が最高であるかを、組織メンバーの協働を通じて探求し、その中でお互いを高め合う活動」(31頁)を指します。

AIは組織開発の手段の一つと捉えられますが、組織の変革プロセスにアプローチするコッターの8段階プロセスとは異なります。具体的には「変革の方向性を探し求め、創造し、常に新しいことにチャレンジすること」(32頁)とされています。

(2)AIの過程は4Dサイクルで表せる。

AIには決まった方法論はありません。しかしながら、概ね四つの中核的プロセスにまとめられるとされており、それが4Dサイクルと呼ばれるものです。48頁を基にまとめてみます。

Discovery:潜在力発見
何が組織の潜在力を(最大限に)活性化させるか?【潜在力の強化】
Dream:理想像構築
組織はどういう姿になるべきか?【ビジョンの明確化】
Design:変革設計
理想の未来像とは?【協働による変革実現】
Destiny:変革実現
権限委譲、学習、適応/向上の方法は?【変革行動の継続】

(3)AIの根底には構築主義がある。

組織の源泉は人であり、人と人とが各人の強みを活用して協働しながら変革の方向性を探求します。したがって、組織のマネジメントは、「組織は「生き物」であり、人びとによって「構築」されるものであることを理解する必要がある」(115頁)というわけです。このように組織が人と人とのダイナミクスによって組織という社会において構築されるという点が構築主義という考え方の流れにあります。

構築主義の原則を基にしたAIの考え方は以下によくまとまっています。

構築主義の原則は、知識獲得における人と人との関係性を重視し、知らず知らずのうちに我々が「客観的」あるいは「変えようがない」と思い込んでいる事実のすべてに大きな疑問符を突きつけることによって、知識獲得に関する無限の可能性を切り開くことができるのである。(117頁)

(4)今週の一言

本書の冒頭でP・F・ドラッカーがインタビューで答えた言葉が載っています。AIを考える上で至言と思うので引用して終えます。

「組織においてリーダーシップが果たすべき役割とは、たとえシステム全体に弱みが存在するとしても、組織の強みを再構成することにより、これが何ら影響力を持たないような状況を作り出すことにある」(19頁)


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