あらすじで読む『サーベイ・フィードバック入門』〜第6章
第5章まででサーベイ・フィードバックの考え方、進め方、陥りやすいポイントを見てきました。第6章は企業での事例集です。メルカリ、パナソニック、デンソーといった錚々たる顔ぶれが取り扱われます。関西(の会社の)人としては、やはりパナソニックに興味・関心が向くので同社の事例を紐解きます。
特に興味深いと感じたのは以下の三点です。
(1)定量と定性の間。
(2)見える化+ガチ対話でポジティヴ・アプローチを。
(3)組織開発担当者こそ恐れを打破せよ!
(1)定量と定性の間。
サーベイで扱う内容のほとんどは定量的なデータです。定量的なデータを解釈し、それに基づいて対話を促して、あるべき将来像を構想して一歩踏み出して行くことがサーベイ・フィードバックのプロセスであることをここまで見てきました。
パナソニック社での取り組みがすごいと感じたのは、サーベイの結果を踏まえて相談が来た部署に対して、部署の担当者のみならず現場社員にもインタビューを行いデータでは掬い取れない状況をも見える化するという取り組みです。
いわば、定量による左脳的な理解と定性による右脳的な感得とでも呼べばいいのでしょうか。データを受け取り、それに基づいて対話する部門に寄り添い、部門での納得感を増す効果があると言えそうです。
(2)見える化+ガチ対話でポジティヴ・アプローチを。
企業組織における大多数の分析はギャップ・アプローチです。あるべき姿と現状とを明らかにしてそのギャップを問題として扱い、取り組むべき課題にフォーカスして解決策を導き出す、というビジネスパーソンにとってお馴染みの思考様式です。
もちろんギャップ・アプローチは大事です。とりわけ意思決定者はギャップ・アプローチを求めてくるでしょう。しかし時には、組織や個人の良いところに焦点を当てるポジティヴ・アプローチが求められる場面も本来は少なくないはずです。
普段の見方と変えることで、部門や他者の真の姿が見えてくるということはあるでしょう。こうした意図や文脈を理解した上で、ポジティヴ・アプローチの具体的な手段であるハイポイント・インタビューやAI(Appreciative Inquiry)を活用したいものです。
(3)組織開発担当者こそ恐れを打破せよ!
サーベイ・フィードバックをはじめとした組織開発の取り組みは、わかりやすい成果が表に現れるまで時間がかかります。また、中原先生と中村先生が書かれた『組織開発の探求』の中でも触れられている通り、組織開発のアプローチを誤用するベンダーによるプログラムもあるため、社員の中には構えてしまう方もいるでしょう。
こうしたネガティヴな反応が続くと、組織開発の担当者も萎縮し、取り組みに積極的になれない状況も生じがちです。しかし、パナソニックの事例で登場する担当者の方は、人事部門ではなく、研究開発部門に在籍していた際に一念発起して一人で組織開発の仕事を始めたそうです。
その後、人事部門に移った後も時に変わり者と見られたこともあるようですが、ここまでのポイントで述べてきた取り組みを推進してこられたのです。この事例から学べる最も重要なことは、担当者のマインドセットとして、自分自身が内なる恐れを打破する、ということなのかもしれません。まず隗より始めよということですね。
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