『プラグマティズム古典集成』(植木豊編訳)を読んで(12)信ずる意志(ジェイムズ)
第12章は、ジェイムズによるイェール大学とブラウン大学での講演録が基となり、後に『信ずる意志』の第一章として収録された論文です。ジェイムズのプラグマティズム論の根幹を成す人が持つ意志に対する考え方が口語体で述べられています。
まず、私たちが意志を持って行動するためには、立ち向かう対象がその前提として存在します。ではその対象をどのようにジェイムズは考えているのでしょうか。
数ある選択のうち、回避不能で、生きている、なおかつ、重大な種類の選択を、正真正銘の選択と呼んでおきます。(360頁)
意志を持って取り組む課題のポイントは三点あるとジェイムズは述べています。①回避不能であること、②現時点で生きている仮説であること、③自分にとって重大なものであること、です。こうした課題に対して、私たちは意志を持って取り組むのであるとジェイムズはしています。
様々な命題の中から一つの選択肢を決定するとき、その選択肢が、偽りのない選択肢であり、しかも、事の性質上、知的根拠に基づいて決定できないような選択肢であるとするなら、このような場合にはいつでも、我々の持つ情念という性質こそが、選択肢を正しく決定しうるのみならず、決定しなければならないのです。というのも、こうした状況下で、「決定するな、問題を未決のままにしておけ」と語ることは、それ自体が、ちょうど、イエスかノーかを決定するのと同じように、情熱的決定だからであり、真理を失うのと同じ危険を伴うからです。(370頁)
先述した①〜③を満たす課題にして、信念を持って取り組むのは、そうしなければ自身にとっての真理を失うことになるからであるとしています。したがって、こうした私たちが信念を持って取る行動は、いかなる状況であっても、「最善を尽くし、最善を望み、あとは、その帰結を受け容れるのだ」(391〜392頁)という言葉に集約されているように思います。
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