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あらすじで読む『サーベイ・フィードバック入門』〜第3章

第2章まででサーベイ・フィードバックの基本的な考え方や理論の整理を見てきました。続く第3章・第4章では具体的なプロセスに入っていきます。第3章ではプロセスの前半としてサーベイの実施による「見える化」が扱われます。

二つのポイントに分けて見ていきましょう。

(1)コンテントとプロセス
(2)見える化を行う際の五つの留意点

(1)コンテントとプロセス

組織開発の領域では、起きている事象について、見えるものをコンテント見えないものをプロセスとして呼びます。イメージしやすくするために、以下のような氷山モデルでよく表現されます。

サーベイとは、プロセス(見えないもの)を見える化することに意義があります。すなわち、サーベイ・フィードバックは「目に見えないものとの対峙」(Kindle ver NO.1626)を私たちに促すのです。

この際に、客観的かつ主体的なアプローチができるという半身の当事者性というメリットを享受することが、サーベイ・フィードバックでは可能であるということは第2章で見てきた通りです。ではどのような点に気をつけることで半身の当事者性を活かせることができるのでしょうか。本章では留意点が五つにまとめられています。

(2)見える化を行う際の五つの留意点

本章で挙げられているポイントを列挙し、それぞれ少しだけ補足しながら見ていきます。

①組織にフィットしたサーベイを選ぶ
②相手本位の立場で、データの質にこだわる
③回答を求めるときに、データの取得の目的を伝える
④タイムリーに見える化する
⑤サーベイ慣れに注意する

①組織にフィットしたサーベイを選ぶ
サーベイを、外注にするか、内製にするか、はそれぞれProsとConsがあり、割けるリソースに依る部分も大きいでしょう。どちらをどのように選択するかも重要ですが、より重要なのは「「サーベイ」とは「メッセージ」」(Kindle ver No.1648)であるという特性を意識することです。尋ねられる項目に私たちは意識が向きます。その意味合いにも関心が湧きます。ポジティヴにもネガティヴにも、です。だからこそ、こだわり抜いて自組織に合ったサーベイを選択することが重要になるわけです。

②相手本位の立場で、データの質にこだわる
詳細な点は本章を熟読いただきたいのですが、特に重要だと感じたのは、サーベイを活用するのは現場であり、彼(女)らは、人事担当者やコンサルとは異なり、サーベイに関する専門的な知見を持っていないということです。つまり、高度な統計解析を行っても、専門的な言葉遣いで重厚長大な説明資料があっても、「相手に伝わらなければ、サーベイの意味が」ない(Kindle ver No.1721)わけです。良かれと思って説明を尽くしたらそれが逆効果になる、という事態は避けたいものです。

③回答を求めるときに、データの取得の目的を伝える
人事に限らず、サポート部門の特性として、経営陣の示す方向性は社員全員が理解しているという前提を持っているように思います。しかしそれは幻想です。人事がサーベイの依頼を現場マネジャーや全社員に送っても、その目的が充分にコミュニケーションを取られていないと御触書のように伝わり(Kindle ver NO.1816)、現場の白けた反応を招いたり、時には反発を招きかねません。現場でどのようにサーベイの目的が伝わっているか、自覚的になりたいものです、自戒を込めて。

④タイムリーに見える化する
たとえ素晴らしい内容のサーベイであったとしても時機を逸すれば効果は半減、もしくは逆効果になりかねません。「この前サーベイに答えたのになにもフィードバックないなぁ」とか「この忙しい月末になんで敢えて人事は。。。」などとならないよう、適切なタイミングを踏まえてフィードバックしたいものです。

⑤サーベイ慣れに注意する
サーベイのメリットには、横断的(全部門で実施し相対比較可能)であることに加えて、縦断的(継時的に実施することで推移を把握可能)であることが挙げられます。しかしこの後者の特性は、「またやるのか」という現場からの反対を招きかねません。縦断調査のメリットは、人事は理解しているので当たり前のようにサーベイを定期的に行いがちですが、目的や意義をくどいほど伝え、現場マネジャーが社員に展開する際にそれらを説明できるようにリマインドすることが重要でしょう。


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