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組織社会化とは何か。:高橋(1993)論文レビュー

組織社会化(organizational socialization)に関する初期のレビュー論文ならこれ!と言える存在である高橋先生の以下の論文を今回はさらっと扱います。

高橋弘司(1993)「組織社会化研究をめぐる諸問題」『経営行動科学』8(1), 1-22

組織社会化は社会化の一種である

企業側として採用活動や入社後の試用期間フォローに人事として携わっていると、組織社会化を当たり前のように重要なものとして捉えがちです。当然のように施策に埋め込むことは、その概念の意味合いや本来の目的を時に失うことにつながりかねないので要注意です。

本論文で最初に指摘されていることは、組織社会化は社会化の下位概念であるという点です。社会化は、社会を主に置き個人を従に位置させる概念と理解できるため、組織社会化では組織が主で社員が従に位置するものと考えるべきでしょう。また、社会化という学際的な概念の持つ多様性を踏まえて、組織社会化という概念が持つ多様な可能性にも注視する必要がありそうです。

先行する論文での定義をレビューした上で著者は、「組織への参入者が組織の一員となるために、組織の規範・価値・行動様式を受け入れ、職務遂行に必要な技能を習得し、組織に適応していく過程」(2頁)として組織社会化を定義しています。

組織社会化と職業的社会化

組織社会化と近しい社会化の下位概念に職業的社会化(occupational / vocational socialization)があります。本論文では、両者の概念の相違についてレビューを行った上で、職業的社会化は特定の職業に対する社会化、すなわち、その職業に求められる価値規範や技能を内面化するプロセスと捉えます。

こうして職業的社会化の概念を踏まえた上で、組織社会化の範囲を著者は明確に表しています。組織社会化は、職業的社会化が射程におく技能的側面と、所属する組織における価値規範や文化を内面化するプロセスとしての文化的側面という二つの側面から形成されるもの、という範囲設定です。

本論文後の組織社会化研究の展開

多くの後続論文で本論文が引用・参照されていることから、本論文が日本における組織社会化の発展に貢献したことは明らかです。今後の展望として、キャリア発達論の視点での研究や組織行動論の視点での研究での発展が言及されています。以前まとめた竹内・竹内(2009)は、組織行動論の視点での研究の一つと位置付けられそうです。


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