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立教LDCでの学びログ_2020.05.06

大学院での授業では、変化に直面する中小企業の社員の方々を対象としたオンラインでのワークショップをチームで創っています。二十歳の時、「GWとはGolden WeekではなくGroup Workの略である」とゼミの某先輩が仰っていました。あれから二十年弱を経た今年。GWは、当時よりはマイルドながらも、ワークショップを創るために隔日ペースでのグルワ期間となりました。

扱っているテーマはリーダーシップです。ありがたいことに、ある企業にオンラインでヒアリングさせていただいてます。そのおかげで現場感も見えてきました。そうすると、起きている事象の何を対象として切り取ってどのように理論と照らし合わせるかを考えたくなります。というわけで、ケースと理論を往還するために改めてひも解いたのが金井壽宏先生の『リーダーシップ入門』です。

本書に基づいて、チームで考えているテーマへの当て嵌めをいくつか行ってみます。最終的に使うかどうかはわかりませんが、自分自身の思考訓練として。

(1)リーダーシップは誰もが担うものである。
(2)主体的なフォロワーシップも大事。
(3)リーダーシップ行動の整理にはPM理論の二軸が便利。
(4)高維持行動が良い結果をもたらさない状況もある。

(1)リーダーシップは誰もが担うものである。

現在のところ、私たちのチームでは、リーダーシップは特定の人が発揮するのではなく様々な人が多様なあり方で発揮するものである、という考え方を取っています。金井先生も、本書の中で、この考え方に近いものを謳っておられます。

問題となっている課題やテーマごとに、異なるひとがリーダーシップを発揮するような集団では、リーダーシップは特定の個人が行使する占有物ではなくなる。このような立場は、オルフェウス・プロセス[H・セイファー(Harvery Seifer)とP・エコノミー(Peter Economy)]、ユビキタス・リーダーシップ(慶応義塾大学の花田光世教授による)、また、問題ごとにリーダーシップの担い手と目されるひとが替わっていくという意味でフローティング・リーダーシップ(金井)とも呼ばれている。(65頁)
※太字は引用者

ユビキタス・リーダーシップの提唱者のもとで学部生と院生を過ごした身として、こうした考え方に馴染むのは自然なのかもしれません。オルフェウス・プロセスも、昨年度に企画・実施した弊社での選抜育成プログラムで取り上げましたし。

おそらく、「リーダーシップを発揮する人=リーダー=特定の人」という考え方はいまだに私たちの多くの意識にあります。これは、リーダーシップ研究では特性論と呼ばれていたものであり、こうした側面があることも事実でしょう。しかし、リーダーシップは誰もの問題であり遍在的にリーダーシップ現象が生じ得るという考え方は、VUCAと呼ばれて久しい変化の時代に必要なものなのではないでしょうか。

(2)主体的なフォロワーシップも大事。

定義からして、リーダーシップは、フォロワーがつくり出している面があるから、なおさらフォロワーが受動的で状況に融け込んでしまったり、陶酔してしまっていてはだめだ。上司、さらには社長に対してでも、間違っていることは間違っていると勇気をもって諫言できるフォロワーになりたいものだ(そういうひとは、リーダーになったときにも、部下に対してだけでなく、上にも影響力を行使できるようになるだろう)。(74〜75頁)
※太字は引用者

強いリーダーを求め、その存在に委ねようとすることによるネガティヴな帰結は、ファシズムやカルト的新興宗教が何を社会にもたらしたかを想起すれば自明でしょう。リーダーシップ現象には、主体的なフォロワーシップが伴うことが必要です。

リーダーシップにintegrityを求めることを否定しませんが、フォロワーシップを持つことに、主体者として意識を持ちたいものです。フォロワーシップが伴うことによって、リーダーシップを発揮する人物の志が磨かれるという側面もあるのではないでしょうか。

少々長くなったので(3)(4)は週末のブログに回します。

【今週の一冊】※必ずしも大学院での学びと直接的な関係はありません。
木下康仁『ライブ講義M-GTA 実践的質的研究法』(弘文堂、2007年)

M-GTAの提唱者である著者自身がその研究法を講義形式でつまびらかにするという垂涎ものの一冊です。考え方を説明しながらも実践的な内容で、大学院生活で重宝すること間違いなし。


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