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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第16章:中途採用者の組織再社会化〜

中途採用が増える状況の中、いかにして中途入社者が新しい組織に馴染むかは大きな課題です。本章では、多くの日本企業で課題となっている組織再社会化が扱われます。

ポイントは以下の三点です。

(1)白紙状態からの組織社会化と転職後の組織再社会化とは課題が異なる
(2)組織再社会化では上司によるモニタリングリフレクションが大事
(3)職場全体で社内ネットワークの獲得を整備することが重要

(1)白紙状態からの組織社会化と転職後の組織再社会化とは課題が異なる

日本における組織社会化の研究・調査は新卒社員が組織にいかに定着するかがテーマとされてきました。そのため、職業領域に初めて移行した新入社員の社会化をどのように促すかに関する知見の蓄積はなされています。

しかしながら、白紙状態から企業に入って社会化するプロセスと、以前の組織で社会化した状態から離脱し、改めて異なる組織に社会化するプロセスとでは異なるのではないか、というのが本章での問いです。後者の現象を組織再社会化と呼び、「以前に所属していた組織でいったん社会化された個人が新組織の一員になっていくプロセス」と定義されています。

実際、中途入社者を対象とした調査の結果によれば、同じ職種であったとしても中途入社者の組織参入時の困難は異なる職種の中途入社者のそれと変わらず、むしろ学習棄却(アンラーニング)の課題ではより困難を感じる傾向があります。

ではどのように中途入社者の組織再社会化を促すことができるのでしょうか。その鍵として二つのものが挙げられています。

(2)組織再社会化では上司によるモニタリングリフレクションが大事

中途入社者は「即戦力」として期待されることが多いでしょうし、企業側がそうした期待を持つことは納得的です。しかし、「即戦力」とは、何もしなくても前職と同じパフォーマンスを発揮できることを意味しません。ではどのような支援が有効なのでしょうか。

上司による支援の中でも、仕事説明・ストレッチと比較して、モニタリングリフレクションが有効であるというのが調査の結果です。何をアサインするか、というよりもアサインした職務の遂行状況を把握し、中途入社者が新しい環境で獲得したりアンラーニングするものを内省を通じて支援することが重要なのです。

(3)職場全体で社内ネットワークの獲得を整備することが重要

上司による支援だけでは限界があるのが、中途入社者による社内ネットワーク構築です。メンバー間が学習し合う職場学習風土を職場に整備するとも言い換えられるでしょう。

職場全体で後押しできるような環境を整備するためのキーパーソンは上司です。上司が中心になりながら職場学習風土を創り上げ、中途入社者が社内ネットワークの一員になるよう支援することが求められます。


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