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【論文レビュー】変革型人材をどのように育てるのか。:小川(2012)

著者の問題意識は、働く個人の主体性がより求められるようになった社会状況において、変革志向を持った人材をどのように育成できるか、という点にあります。この点を組織社会化によって明らかにしようとする姿勢に共感します。

小川憲彦. (2012). 組織社会化戦術と役割志向性の関係における個人学習の媒介効果と組織文化の調整効果‐変革志向の人材をいかに育成するか‐. イノベーションマネジメント研究センターワーキング・ペーパー, 125, 1-36.

本論文の仮説をまとめたものが以下の図です。ざっくりといえば、組織社会化戦術が働く個人にどのような影響を与えるのか(仮説1)を見る上で、個人の学習がどのように影響を与えるのか(仮説2ab)、また働く環境である組織文化がどのように間接的に影響を与えるのか(仮説3)を見ようとした研究であると言えるでしょう。

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考察(1)個人の学習が成果に影響を与える

新入社員研修やOJTといった職場が集合的に用意する組織社会化戦術が二次的成果に与える際に、その間に個人の学習が媒介することがわかりました。とりわけ、二次的成果のうち変革的役割志向という個人の主体的な行動に対して唯一影響を与えたのが個人の学習であることから、企業がいかに若手社員に学習を促すかが鍵となりそうです。

考察(2)保守管理的役割志向→変革的役割志向

働く個人は、まず保守管理的役割志向を獲得した後に変革的役割志向へと進展するというステップを明確にしたことも本書の考察のポイントとして挙げられています。以前取り上げた東京経済大学の小山先生の論考でも同じようなステップが提示されていて、Van Maanen & Schein (1979)が提示した二つの間にはステップがあると考えられそうです。

ここでは、変革的役割志向は内容革新と役割革新とが細かく峻別されずに本論文では指摘されています。個人的には、現代において、変化の質とスピードが上がり、また企業側からも革新行動が求められる状況においては、両者を分けて考えることも重要なのではないかと考えます。

私自身の研究ではこの辺りを探ってみたいなと思っています。(うまくできるかわかりませんが)


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