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立教LDCでの学びログ_2020.05.17

5月9日の授業にて、中原先生よりダニング・クルーガー効果について紹介がありました。「能力が低い人ほど、自分が見えていない」という端的な要約とともに、だからこそフィードバックによって自己認識をサポートすることが重要であるとのことでした。

以下のグラフは後述する論文中の実験に基づく結果です。横軸は、能力の高さに応じて25%ずつに被験者を分けられており、左から右に進むほど能力が高い群となります。縦軸はスコアを表し、上に進むほど高くなります。

最も低い群の被験者は、認識している能力および予想スコアと実際のスコアとの差に大きな開きがあります。つまり、能力が低い人は自己認識能力も低いというわけですね。

授業の中では参考文献としてクルーガーとダニングの論文が紹介されました。正直、どうしようかなぁとも思ったのですが(笑)、せっかくなので読みました。

Kruger, Justin; Dunning, David (1999). “Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One's Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments”. Journal of Personality and Social Psychology 77 (6)

Concluding Remarksにある結論は、冒頭に記した中原先生の見事な要約となりますが、それ以外にも興味深い点がいくつかありました。原典に当たるのは大事だと改めて実感した次第です。

(1)能力が高い人は客観視することで自己認識を是正できる。
(2)人が学べないのは失敗した時に他責を正当化する理由があるから。

(1)能力が高い人は客観視することで自己認識を是正できる。

この論文で焦点が当たっているのは能力が低い群によるエラーです。しかしながら、最も優秀な層も自己認識と結果には相違があることがグラフを見ればわかるでしょう。

Although our emphasis has been on the miscalibration of incompetent individuals, along the way we discovered that highly competent individuals also show some systematic bias in their self appraisals.

では、能力が高い層は自己認識を間違い続けるのでしょうか。実は、本論文の三つ目の実験結果によれば、最も能力が高い群は、他者のパフォーマンスを観察することで自己認識を是正することができると結論づけられているのです。

After seeing the performances of others, however, they were disabused of this notion, and thus the they improved the accuracy of their self-appraisals. Thus, the miscalibration of the incompetent stems from an er- ror about the self, whereas the miscalibration of the highly competent stems from an error about others.

能力の高い人が自己認識を誤るのは、他人の能力を高く評価してしまうという謙虚な気持ちに依るものなので、実際に他者の能力が分かれば修正できます。しかしながら、能力の低い人が自己認識を誤るのは自身の能力を過信しているからであり、だからこそ他者からのフィードバックが必要不可欠、というわけですね。

(2)人が学べないのは失敗した時に他責を正当化する理由があるから。

能力が低い人が自己認識を修正できず、学べないのには理由があると本論文では指摘されています。

For success to occur, many things must go right: The person must be skilled, apply effort, and perhaps be a bit lucky. For failure to occur, the lack of any one of these components is sufficient. Because of this, even if people receive feedback that points to a lack of skill, they may attribute it to some other factor

何かに成功するためには多くの要素がうまくワークする必要があります。他方で、何かに失敗する場合には、そのうちの一つでも欠ければ失敗します。

つまり、能力が低い人が失敗した場合、仮にそれが自身のスキル不足に依るものであっても、他の要素であると推察することが合理的に可能です。この状態に留まり続けられるために、能力が低い人は自己認識を修正する動機付けができないのです。

【今週の一冊】
深澤直人『デザインの輪郭』(TOTO出版、2005年)

いまワークショップをデザインしています。人財開発や組織行動論も大事ですが、そもそもデザインとは何かという点も考えたいところ。そこで、以前好んで読んでいたデザイン関連の書籍も読み直しております。中でも、深澤さんの本書は久しぶりに読んで読み応えがありました


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