あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第21章:育児経験とリーダーシップ発達〜
育児経験とリーダーシップ開発とがどのような関係にあるのか。結論を先に言えば、両者を'or'の関係で捉えるのではなく、'and'の関係で捉えてお互いにポジティヴな影響を与え合うことが述べられます。ポイントを見ていきましょう。
(1)家庭での協同の計画・実践が職場でのリーダーシップ行動に効果あり
(2)家庭外との連携も職場でのリーダーシップ行動に効果あり
(3)育児の実践がリーダーシップ行動の変化に繋がることに性別差はない
(4)家庭でも職場でも役割変更を伴う挑戦がリーダーシップ行動を向上
(1)家庭での協同の計画・実践が職場でのリーダーシップ行動に効果あり
育児を協同して行うには、自身・配偶者・子どもを取り巻く状況が刻一刻と変化する中で、計画立案、柔軟な修正、緊急事態への対応、といったことが求められます。これらは、職場において他者との関係配慮や課題への取り組みといった様々な面と共通していますよね。
家庭において協同の計画・実践を行うことは、職場におけるリーダーシップ行動の変化にポジティヴな効果をもたらすことが推察されるようです。このような効果は、先行研究で紹介されているワーク・ファミリー・エンリッチメントと呼ばれる考え方と符合しているように見えます。
ワーク・ファミリー・エンリッチメント:
「家庭(仕事)役割における経験が仕事(家庭)役割における経験の質を高める」
(2)家庭外との連携も職場でのリーダーシップ行動に効果あり
育児を行う際には、家庭内だけではなく家庭外のステイクホルダーとの連携も欠かせません。社会インフラが必ずしも充分でない現状を考えれば、自分たちから主体的に必要なステイクホルダーを巻き込み、関係性を構築していくことが求められる場面も多いでしょう。
家庭外で育児を支援してくれる存在を能動的に獲得し、関係構築を行い、連携しながら育児行動をとっていくこと。これは、家庭内に閉じない開かれたネットワークによるチームとしての協同と考えられ、こうした経験によってリーダーシップ行動にポジティヴな効果があるというのが今回の調査結果です。
(3)育児の実践がリーダーシップ行動の変化に繋がることに性別差はない
育児の主体としてかつては女性・母親を想定したのでしょうが、本章で紹介される調査では性別差も変数として入れています。その結果、リーダーシップ行動の変化に影響を与えるものとして性別は有意差を示しませんでした。したがって、男女を問わず育児の実践はリーダーシップ行動の変化に繋がると考えられます。
(4)家庭でも職場でも役割変更を伴う挑戦がリーダーシップ行動を向上
リーダーシップとはざっくり言えば他者に影響を与えることです。このように考えれば、職場であれ、家庭であれ、他の組織であれ、役割が新たに加わったり既存の役割が変更すれば、他者への影響のあり方は変わります。したがって、家庭でも職場でも役割が変更されるような挑戦的課題に取り組むことでリーダーシップ行動が向上することはイメージしやすいかもしれません。
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