あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第15章:組織市民行動とゲーム研修〜
最近ではゲームを用いた企業研修が増えてきました。「Learning should be fun.」を標榜する人財開発コンサルで最初のキャリアを歩みましたので、こうしたトレンドには関心があります。本章では、ゲーム研修を受講することでどのような効果があるのかについて、組織市民行動をテーマとして取り上げています。
ポイントを三つに分けて見ていきましょう。
(1)組織市民行動とは援助と誠実性から成る
(2)ゲーム=ゴール+ルール+フィードバック+自発的な参加
(3)ゲーム学習はイメージしづらいテーマに対して特に有効
(1)組織市民行動とは援助と誠実性から成る
組織市民行動について、本章では「他者を支援するような、職務に規定されていないし、職務としても求められていない行動」(福山、2012)という定義が取られています。ざっくりと言えば、職務主義ではなく能力主義を人事システムの根幹に据える日本企業の多くで求められる行動であり、日本で企業勤めをしていると当たり前と思われる言動かもしれません。
先行研究を基に行動を具体化すると、①援助と②誠実性の二つにまとめられるそうです。①援助が特定の個人に対して取られる行動であるのに対して、②誠実性は非人格的な組織や部門に対する貢献です。
組織市民行動をテーマとして、新入社員を対象として実施したゲーム研修がどのような効果をあげたのかについて、本章では調査しています。ではゲーム研修とはそもそもどのようなものでしょうか。
(2)ゲーム=ゴール+ルール+フィードバック+自発的な参加
ゲームの定義として、McGonigal(2011)を用いて以下の四つの要素を含むものとしています。
①ゴール:プレイヤーが達成すべき具体的な成果
②ルール:プレイヤーがゴールに達する上での制約
③フィードバック:プレイヤーがゴールにどこまで近づいているかを示すもの。得点やレベル。
④自発的な参加:プレイヤー全員が①〜③を理解した上で受け入れること
通常、ゲームと聞いて私たちの多くが想起する楽しさや遊びといったものは、構成要素ではなく結果として得られるものとなります。このように考えれば、ゲーム学習というものを幅広く考えられるとともに、ゲームの要素を用いた学習教材や研修デザインというものを考えられそうですね。
(3)ゲーム学習はイメージしづらいテーマに対して特に有効
冒頭でも述べたとおり、組織市民行動は、日本企業ではその重要性を意識しづらいものです。こうした受講者がイメージしづらいテーマについて、ゲームの要素を用いた研修を行うことで受講者の理解が促進される効果があることが本章では明らかにされました。
社員の行動変容を促したい領域は様々あるでしょう。それらについて、経験・フィードバック・学習のいずれで行うべきかを考え、その学習の手段の一つとしてゲーム研修を検討してみてはいかがでしょうか。未経験なものや曖昧なものを楽しくエキサイティングに学べるというのは魅力的ですので。
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