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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第10章:OJTとマネジャーによる育成行動〜

「OJTは時代遅れ」とか「OJTは育成の放置にすぎない」などと言われることがあります。本当でしょうか?本章では、現代における企業において求められるOJTについて取り上げられています。

ポイントを三つに絞って解説していきます。

(1)従来のOJTと現代のOJTとでは求められるものが変化した
(2)コーチングは事前のしかけと事後のフォローが大事
(3)部下の経験学習サイクルに沿って支援する

(1)従来のOJTと現代のOJTとでは求められるものが変化した

「OJTは時代遅れ」と言われる状況を深掘りしてみますと、従前のOJTが機能しなくなったということのようです。では、何が変わったのか。本章では端的に以下のようにまとめられています。

キーワードは業務の複雑化と変化する個人と職務です。同じ内容を効率的に回すことが求められる業務(クローズドタスク)が求められた時代には、「正解」を知る上司が逆算方式で指導することができました。典型的な表現としては「背中をみて学ぶ」というものです。

しかし、変化の速度が上がり続ける現代においては、業務も可変的で変化する状況(オープンタスク)です。上司は「正解」を知っているわけではなく、帰納的に試行錯誤しながらメンバーの自発性を涵養するアプローチが求められます。こうしてコーチングが注目されるようになりました。

(2)コーチングは事前のしかけと事後のフォローが大事

コーチングへの注目度が上がる中で、2000年代中盤から企業組織においても管理職がコーチング研修を受けることが流行しました。しかし、研修を受けた後に、上司がひたすら質問を繰り返すだけで、ヒントを欲しい部下のサポートにならない、という状況が頻発しました。

この問題は、コーチングという機能を、面談の場面だけで行うというように狭く捉えすぎたことにより生じたと言えるでしょう。本来、必要なコーチング行動を本章では以下のようにまとめられています。

質問を繰り返すというのは「内省支援」であり、必要なステップであることは間違いありません。しかし、その前と後のステップと合わせなければ、メンバーにとって有効な支援にはならないのです。

まず事前の段階では、上司とメンバーとの信頼関係を作り、メンバーが現在取り組んでいる業務において求められる状態と現状について把握することが必要でしょう。これが基礎形成です。目標と現状との差分を理解していなければ、どの程度ヒアリングで対応しどの程度指導することが必要かというアプローチのヒントがわかりませんから。

また、メンバーとの面談で内省支援を行なった後に、メンバーの必要性に応じて問題解決支援を行うことも必要でしょう。ヒアリングとフィードバックとをセットで行うことは、今流行りの1on1ミーティングでも同様と言えるでしょう。上司はただ話を聞けばいいのでもなく、ただ指導すればいいのではありません。目の前のメンバーの業務に対する状況に応じて、その比率を考えることが必要なのです。

最後の挑戦支援はジョブやプロジェクトのアサインメントです。メンバーが成長する局面は、上司との面談の場面というよりも、日常の業務を通じてです。したがって、メンバーにとって必要な職務やプロジェクトをしっかりと手渡すことの有効性はお分かりいただけるでしょう。

(3)部下の経験学習サイクルに沿って支援する

まずは、経験学習サイクルとそこから学ぶ能力を関連づけている図を見てみてください。

この図では個人が経験から能力を獲得するモデル図です。では、経験学習サイクルに合わせて育成担当者はどのようにメンバーの育成に関与できるのでしょうか。

育て上手な育成担当者によるメンバーへの指導方針をまとめた上図も本章で掲載されています。メンバー育成を担う役割を持っている方々にとって、チェックポイントとして参照したい内容と言えるでしょう。


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