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【オンライン読書会】『組織開発の探究』組織開発の歴史(1)1950s-1960s

中原先生および読書会リーダーのみなさんとの二回目のオンライン読書会に向けて、『組織開発の探究』の第7章・第8章を扱う自主的な読書会を、5月下旬にLearning Bar曽根崎にて行いました。その内容を振り返ります。

この二章では、組織開発がいかに誕生し、実践を経て発展してきたか、がまとめられています。今回はまず第7章「組織開発の誕生」を扱います。

社会科学における概念は、現実に生じている事実から紡ぎ出されるものがほとんど(あるいは全て)と言えるのではないでしょうか。組織開発もまた、概念は実践のあとで生み出されたものです。

組織開発という言葉が使われ始めたのは1950年代のようです。そのころに企業組織で行われていたいくつかの実践が、結果的に組織開発という言葉で括られるようになった、というのが歴史的経緯です。

上図に示しているようなアメリカ大企業での活動が挙げられています。これらの組織での活動の特徴は、コンサルタントでありながら経営学者でもある大御所たちの活動であるとうことでしょうか。

エッソではシェパードが、GEではベックハードが、そしてゼネラル・ミルズではベックハードとマクレガーが実践していました。これらの組織において、関係性向上の主体である「組織」という言葉と、Tグループの別称であるグループ・「ディベロップメント」が合わさり、次第に「組織開発」と呼ばれ始めたようです。

組織における関係性とは多様なものであり、状況によって変化するものです。こうした関係性を向上するための様々なTグループの活動を含めてきたという歴史的経緯から、組織開発という概念は包摂的概念となる運命にあったのでしょう。

1960年代に入りますと、組織開発の領域においてはベストウェイ、つまりあるべき理想像を想定した上でそこに至るためのステップを踏んでいくというアプローチが取られるようになりました。

「リッカート尺度」で有名なリッカートは、組織で発揮されるリーダーシップの型として、独善的専制型、温情的専制型、相談型から集団参画型(=システム4)へと至るシステム4理論を提唱しました。

また、ブレーク&ムートンは、縦軸に人に対する関心を置き、横軸には業績に対する関心を設定し、マネジリアル・グリッドを提唱しました。それぞれ9段階に分けてリーダーシップをプロットし、9・9型を理想型としました。

こうした実践と概念化の往還関係を踏まえて組織開発の定義も種々生まれるわけですが、組織の何に影響を与えるかという観点から文献調査をした結果、以下の四つが抽出されたそうです。

こうした定義を足がかりにしながら、1960年代の組織開発における三つの基本的な進め方がまとめられています。

(1)プランド・チェンジ

プランド・チェンジは、ロナルド・リピットが提唱したものです。クルト=レヴィンの弟子であるピットは、レヴィンの組織変革の三段階モデル(表中の○数字)を発展させ、組織における望ましい状態があることを前提として五つの段階に分けました。

ここでは、組織におけるメンバーは、望ましい状態に至ることを目指し、ニーズを醸成し、関係性を構築し、変革に向けた取り組みを行い、それを安定化させ定着させていくと考えられています。いわば、一方向・一直線上の変革としての組織開発です。

(2)プロセス・コンサルテーション

プロセス・コンサルテーションは、組織風土やキャリアの研究でも著名なエドガー=シャインが提唱したものです。クライアントとコンサルタントとの関係を三つに分けて捉えています。

①購入型は、専門家による知識・サービスをクライアントが獲得するという考え方です。つまり、クライアントは自分自身の課題を明確に把握し、そのために必要なソリューションも知っているという前提での関係性です。

②医師ー患者型は、自分自身の課題がわからないのでコンサルタントにより診断をしてもらい処方箋を出してもらえば、ソリューションの実践は自分自身で行えるという関係性です。

最後の③プロセス・コンサルテーションは、変化が激しい環境下において、クライアントが課題を把握することを支援するとともに、そのソリューション実践をも支援するという関係性です。

(3)重視されていた価値観

三つ目の基本的な進め方は、ダグラス=マクレガーによるX理論・Y理論です。従来の組織ではX理論に基づくマネジメントが一般的でした。つまり、性悪説的な人間観に基づいて、報酬や懲罰といった外的報酬によって人を動かすというパラダイムです。

それに対して当時の組織開発の考え方ではY理論が重視されました。性善説で人を捉え、その上で目標や責任を積極的に与えることで、人の自発的な動きを支援するという考え方です。

今回は1950年代の組織開発という概念の誕生から、1960年代における発展までを見てきました。次回は1970年代以降の歴史を見ていきましょう。


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