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『組織開発の探究』の哲学的基盤にユングを加えてみたらどうなるか?

5月9日の『組織開発の探究』のオンライン読書会では、第3章の哲学的基盤を担当させていただきました。デューイ、フッサール、フロイトの三名の哲学者については、以前のエントリーでそれぞれ扱ったため以下をご参照ください。

(1)デューイ

(2)フッサール

(3)フロイト

それぞれ納得的ではあり、組織開発の基盤を為す考え方として腹落ちします。しかしながら、少し不充分に感じるのはフロイトです。というわけで、ラーニングバーおよび江夏先生の大学院ゼミ合宿(@鳥取)にて仮説的に取り上げてみました。

まず、フロイトが対象としているのは個人です。個人の意識の下にある前意識や無意識を顕在化させる、というプロセスが組織開発に活きているということはあるでしょう。

しかし、「組織」開発である以上、個人から組織への転換に活きるアプローチはないものでしょうか。Learning Barの参加者の方々と話しながらこのような思いに至るとともに、そのアプローチに活きそうな一人の人物の名前が出ました。そう、ユングです。

ユングは意識の下に個人的無意識を置きました。ここまではざっくり言えばフロイトと同じですが、その下に普遍的無意識を想定したところがフロイトと全く異なります。

普遍的無意識とは、人類のみならず動物も含めて普遍的に共有される無意識であるとユングは述べます。表象可能性を有する遺産として共有される、個人の心の真の基礎と呼べるでしょう。

ここまでは、個人から集団へと視点を拡げるためのユングの活用を述べて来ました。次に、無意識を顕在化するアプローチについて、ユングをどのように活用するかを見ていきます。夢解釈です。

夢解釈じたいは、フロイトもユングも行なっています。しかし、そのアプローチが大きく異なります。フロイトは、要素に分けて分析し、分析された要素を再構成することで解読するという要素還元型のアプローチを取ります。

他方で、ユングはゲシュタルト的です。全体のイメージをそのまま受け取り、それを読み取るために童話・神話・文学作品といったアナロジーやメタファを用いて、物語として集団に共有しているようです。

ここで、『組織開発の探究』の第2章で取り上げられていた組織開発の三つのステップを思い出してください。

三つ目のステップである未来づくりとは、「メンバー同士がビジョンを決めて共有すること」(『組織開発の探究』48頁)です。このステップにおいて、夢解釈におけるユング派の鍵概念であるゲシュタルト・メタファ・物語といったものに影響を受けているのではないでしょうか。

ここまでの論旨を踏まえて、デューイ、フッサール、フロイトにユングを加えると、このようにまとめられます。

大胆な仮説だとは思いますが、ぜひみなさんからのフィードバックをいただければうれしいです。


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