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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第18章:元外国人留学生の組織社会化〜

外国籍社員を新卒採用するケースが日本企業でも増えてきています。しかしながら、定着面での課題に悩む企業も多いようです。本章では、組織社会化という観点から課題の整理と定着に向けたポイントを提示しています。

(1)外国籍社員を受け入れる職場の現状
(2)経験学習行動・異文化間ソーシャルスキルを採用時に見極めよ
(3)業務能力が身に付いても上司の支援が不足すると職務満足度が低下
(4)留学生社員は信頼を蓄積した上で「外国人性」を発揮せよ

(1)外国籍社員を受け入れる職場の現状

日本企業の職場は、文化背景の異なる人々とのコミュニケーションに不慣れな社員が多い状況です。言語面での問題だけではなく、異なる習慣への理解や配慮も大きな障害になっています。

さらには、職場の多くは人財育成に充分な余力を持たず、育成のための丁寧なコミュニケーションを取る時間も不足しがちです。留学生はいち早く職場の戦力となり外国人性を発揮したいと努力しますし、職場も支援したい気持ちを持っているでしょう。しかし、お互いにすれ違ってしまうということが職場の現状と言えるのではないでしょうか。

ではそのような職場で力を発揮できる留学生はどのような人財なのでしょうか。

(2)経験学習行動・異文化間ソーシャルスキルを採用時に見極めよ

個人要因として求められるものは、経験学習行動異文化間ソーシャルスキルの二つと言われます。注目したいのは、調査の結果、両者ともに就業年数との相関関係は見られないということです。つまり、入社後に開発可能と考えるのではなく、採用時に見極めることが求められますので、採用部門が要件として着目するべきでしょう。

次に、採用した留学生を育成する際の留意点について見ていきましょう。

(3)業務能力が身に付いても上司の支援が不足すると職務満足度が低下

業務遂行能力を高めるためには、コミュニケーションにおける文化差を考慮する必要があります。日本人はハイ・コンテクストなコミュニケーションを取る傾向があると言われます。仮に、日本人同士では阿吽の呼吸でコミュニケーションが成り立つとしても、ロー・コンテクストなコミュニケーションを取る傾向がある方々には阿吽の呼吸は通じません。上司をはじめとした同僚は、説明型コミュニケーションを意識的に行うことが求められます。

また、本章の調査での興味深い指摘として、業務遂行能力が身につけられたとしても、上司による支援が十分でないと留学生社員が認識していると組織に愛着を持てず、その組織における長期的展望を抱けず、職務満足度が低い状態になるという指摘です。

(4)留学生社員は信頼を蓄積した上で「外国人性」を発揮せよ

本章で紹介されている質問紙調査の結果によれば、留学生社員の多くは「外国人性」を発揮したいと考えています。これは、留学生社員の想いに沿うだけではなく、ダイバーシティ開発に取り組む企業にとってもポジティヴなことです。

ただ、(1)で述べた職場の現実を考えれば、まずは職場において信頼感を獲得するということが先決です。その上で「外国人性」を発揮するというプロセスを押さえることが大事ですし、この点は、入社前から人事部門が丁寧にコミュニケーションを取ることが有効でしょう。


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