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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第12章:OJT指導員の支援行動〜

第10章・第11章から続いて、本章もOJTを扱っています。粗っぽく整理しますと、第10章ではOJTのパラダイム変化に対応した経験学習サイクルに基づく育成行動を扱い、第11章では職場という面での社会化支援の重要性を見てきました。

本章では指導員に求められる個人的要因がテーマとなっています。

ポイントをまず見ていきましょう。指導員に求められる個人的要因をざっと意訳的にまとめると以下の三つです。

(1)高い組織コミットメントを持つ人財であること。
(2)権限委譲に伴う痛みを共有する覚悟を持っていること。
(3)多様な人脈を持っていること。

それぞれ概説していきます。

(1)高い組織コミットメントを持つ人財であること。

本章での調査の結果によれば、後述する(2)(3)という支援行動を行っていたとしても高い組織コミットメントを有する指導員でなければ、新入社員の業務遂行能力の向上には影響を与えないことが明らかとなりました。

個人プレイヤーとして組織の中で高い業務能力を持つ指導員であっても、組織コミットメントが高くない人財であれば、新入社員の業務能力を必ずしも向上できないわけです。

たとえば、新入社員の業務の目的を説明でき、関連する人脈を紹介できる指導員がいたとしましょう。業務能力の高い指導員であっても、なぜその企業で働くのか、どのような意義を感じて業務遂行するのか、といった企業への愛情に関する新入社員からの問いに充分に回答できなければ、指導員による指示やフィードバックは新入社員にささりづらいということなのかもしれません。

(2)権限委譲に伴う痛みを共有する覚悟を持っていること。

指導員としてアサインされる人財は、非管理職でかつ相対的に若いケースが多いでしょう。となると、個人プレイヤーとして優秀であっても、他者にジョブアサインすることによって失敗のリスクをケアすることに慣れていない方も多いはずです。

現代のビジネスであれば、プロジェクトにアサインされることで業務を割り振るという経験を持っていたり、それに近しい経験を有することはあるでしょう。そうした際に、権限委譲に伴う痛みを経験し、痛みを持つ覚悟を持っているかどうかを見極めておくことが、指導員の選抜に活きるようです。

(3)多様な人脈を持っていること。

新入社員の人脈拡大に貢献するためには、指導員自体が多様な人脈を持っていることが必要条件になります。直観的にイメージしやすいですが、少し補足も必要なのではないでしょうか。

というのも、第11章の内容を思い出してください。面としての職場全体での育成という観点で考えれば、必ずしも指導員本人だけで多様な人脈をカバーする必要はありません。指導員が、自身とは異なる多様な人脈を有する他のメンバーをサポート役としてアサインすることで、新入社員にとって有効な人脈拡大に貢献できるのではないでしょうか。


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